それなら宇宙のほうこそ縮んで(日記)

 日記を書く。限りなく弱音に近いと思う。

 宇宙規模で考えたらちっぽけな悩みだよって、そんなのが、なぐさめになったことがあるものですか。

 広い空を見上げて、星の遠きに想いを馳せて、銀河の果てしのなさを考えるとき、わたしの悩みがとてもちっぽけに見えるっていうのなら、そんなの、宇宙のほうが縮んだらいい、と思います。
 なにが消えても消えなくても、予定が取りやめになっても、先に延びても、わたしにとって他人の武勇よりはるかに大事な一冊の本がだれかに読まれる前に燃えたとしても、それでも、目の前でやらねばならぬことは変わらないというんです。生きていくのに必要なことは同じ。明日の仕事、明後日のパン、今日の洗濯、昨日の残り物。
 どんなにショックなことが起きたって、目の前でやるべきことは変わらないっていうんです。

 そんなの、なんの慰めになりますか。

 理屈で説明されれば納得できることのほうが多い世の中です。それでも、理屈に追いつけない心のうちを、なだめすかして一夜を明かすことに、なんの罪があるっていうんです。
 わたしにとって地球の未来より宇宙の果てよりはるかに大切な三日後の予定が、台無しになってしまって、それでも今夜の天気は変わらないっていうんです。あんまりじゃありませんか。わたしの世界がほろびたのだったら、嵐のひとつも起きないほうがおかしいと思ってしまいます。宇宙のほうがよっぽど縮んでしまったらいいと思います。

 そんな夜もあるということです。

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眠れない夜に

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