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好きなシンガーのレッスンを受けてみたら、開かずの間の扉が開いた話。

こんにちは。いかがお過ごしでしょうか?
私は程々元気にやっております。

33歳の夏。
例年通り 京都は祇園祭、豪雨の夏。
急な結膜炎でアラレちゃんメガネの夏。

ずり落ちてくるし、距離感掴めないし。
でもまぁ目が休まるからええか。

いつもと変わらず軽い不調に見舞われる夏ながら…今年は大きなチャンスが到来して、私にとってはとってもスリリング且つ、チャレンジングな夏となっている。(ルー大柴味が激しいのは、のちに理由が明かされるだろう…)

というのもここ10年程、私はボーカルレッスンをする側の人間だったが、実に大学生ぶりに今週からはボーカルレッスンを受ける側になっている。

夏休み期間のサマージャズコースと題して開講されるEmilia Martensson氏のレッスン。

私が初めて彼女の声に触れたのは3年、いやもっと前か。もう何度Bandcampで購入した彼女の作品を聴いたことか。聴けば聴くほど好きになってしまうボーカリストである。

本当に素晴らしい声そしてセンスの良いリズム、ピッチ、アプローチ。日本での公演歴はなく知る人ぞ知るくらいで、何故もっと知られていないのか不思議…という程に素晴らしい声の持ち主。

YouTubeや音源の数々。さらに調べると、どうやら彼女が主催するボーカルコミュニティがあり、そこでレッスンを実施しているようだ…!!

まじかー!

しかし時差の影響で開講時間はだいたい日本時間の早朝4時からスタートの枠。

…ヴーン難しい。

一度問い合わせてみたものの、開始時間の変動はないらしい。夏の期間などでタイミングが合えばと、その頃は返事をしていたきりだった。

それから半年が過ぎた頃、案内メールが届く。

「NEW: Jazz Vocal Summer Course ONLINE」

夏休みの期間を使ってジャズボーカルを歌うコミュニティで学び合いましょう!というお知らせ。

つまり私にとっては歌う人として/教える側の目線の両方を、自分のいわゆる「推し」から聞けるチャンス。

これは逃すわけにはいかないと、早速プログラムを確認…面白そうな内容。

円安・ユーロ高に恐れながらも、直感で申し込む気持ちは固まっていた。コースの開始時間は通常レッスンより早く、サマータイムだから時差が1時間早くから開始できる。深夜0時からスタート!
(世間的には知らんが、私のゴールデンタイム…いける!)

懸念を言えば、歌を教えて貰うのもオール英語で学ぶのも大学時代以来ということ、何年振りだ…(数えたくねーわ)という二重の緊張感があった。

しかも大体の受講者が第一言語。果たして聞き取れるのか、そして話せるのか。

とはいえ、私の持つ生徒様の中には英語の方がコミュニケーションが取りやすい方も僅かにいる。さらに自分のオリジナル曲はほぼ英語…ならば英語で受けられることすらも逆に超絶ラッキーなのでは?と、びっくりポジティブ思考になっていた。

何より全てのレッスンが録音されているとのことで聞き返しができる。やるしかない。

色々事項を確認して申し込みを終える。(スキップで助走付けて→スイング歌いつつ→清水の舞台から飛び降りる気持ち。高額の海外送金怖かった〜)

というわけで、突如始まりました〜夏期講習。(高校以来ですね)

このコースは1:1のオンラインマンツーマンレッスンが2回(コース開始前と終わってから1ヶ月後)、グループオンラインレッスンが1週間毎日2〜3時間。

内容はボーカルメンテナンスや発声トレーニングと、ジャズセオリー少々、課題曲が2曲からリズムやメロディックアプローチを学ぶという流れ。

このコースの説明と導入体験レッスンを先週末に受けて(超緊張した)

初めてのマンツーマンレッスンが今日だった。(程々に緊張した)

開始前から何をやるのかなというそわそわ、ワクワク。

なんだか凄く新鮮な気分。授業を受けることに対してこんなにも希望とか期待に溢れていたことが今までにあったかな?と思った。好きなこと/仕事に生かせることに、自分のお金と時間をしっかりかけて取り組める喜びがこんなにも大きなものだとは。

早朝4時からのレッスンでももっと早くとっておけばよかったかと思うくらい(笑)

内容は、自分の声に対してどんな声を出したいかに沿った発声のウォームアップトレーニング。
(いわゆる根本治療的な練習)

そして、課題曲に対してどのように歌いたいかという所から3パターンのアプローチを練習実践し→それを応用して歌ってみましょうという流れ。

これがなかなか楽しくて、とても建設的なレッスン。何気なく歌えて好きな曲のレパートリーから選んだつもりが、

「何故この曲を選んだの?」

「この昔から歌い継がれてきたクラシカルな曲だけど、あなたが歌うならどんなインスピレーションを受ける?今の歌の状態も素敵だけど、どんな風に歌いたい?」

と聞かれ、改めて考え、曲としっかり向かいあった。

「キーGでよく歌っていて、柔らかさはあるけど、いつも何となく明るい雰囲気になっている。本当は昔、将来歌手になろうねと話した旧友へ、またいつかどこかで出会えたらという気持ちで歌いたい」と伝えた。

Emiliaは「とっても素敵ね、いいわ。ノスタルジックな感じなら、じゃあこうしてみましょう」

テンポとキーを低く変え、そして3パターンのデモンストレーションを行う。

(ネタバラシはここまで、内容は秘密)

それを聴けるだけでもう私にとってはもう耳福過ぎた。そう、これこれ。なぜこの人の歌い方には柔らかさがあるのに、リズミックに聞こえるんだろう?っていう…根本的な部分ここだったのかー!というところが結構明確になった!

いざ自分が実践してみるとまぁ難しいながらにも、楽しく歌えている。

今までは既存曲や、歌い慣れた曲をいつも「ベストウェイはこれだ!」と言わんばかりに同じルートを辿ることで安心していたけど、こうしてみたいなぁとか、これもありかもというアイデアが、その3パターンを試すと不思議と色々湧いてきた。

「いいねー!とっても素敵、よくなったよね。どう?ところで、どこかの音大に言ってたの?」

そんな風に、推しボーカリストから言われることが気恥ずかしくも嬉しかった。音大、行きたかったけど行ってない。でももし行っていたら、この瞬間に巡り合わせていないかもしれない。


改めてスタンダードを歌うことの楽しさを思い知る。今までは「こう歌うのがジャズスタンダードだよ」という既出のレコーディングや、定められた概念みたいなものに基づいて歌うのが、良いジャズなんだと思っていた自分に気づいた。

「もちろん古き良きをメロディやセオリー通りに歌うということは大切。そこはあなたはとっても素晴らしい、誰をよく聴いていたの?ピッチもリズムも素晴らしいけど…?」

と言ってくれた(照)

そんな褒めないでくれー!と心で叫びつつ、色々聴くことが超好きなのが言わずもがな伝わっていたようで嬉しい瞬間だった。

「でもボーカリストは表現者でありStory-tellingが大切。その上であなたがこの曲を歌うことで誰を思い浮かべて、どんな雰囲気で、キーで、どんなテンポで、やるかという視点があれば色んな表現ができる。歌い心地が変わるからね」と締めてくれた。

楽曲の当時の背景を知り「何故この曲が歌い継がれてきたんだろう?もし今の私が歌うとしたら、どんな表現がしたいんだろう?」というように、
歌い手としての根本から、一曲、ワンフレーズ、ワンセンテンス、一音一句…細かくマイルストーンを設定して、真正面から向き合ってみたい。

そんな風にスタンダードの楽曲を選び、等身大の今の感覚で、練習・演奏をすることが次のライブへの楽しみになった。

初回の団体レッスンでは、さまざまなボーカリストたちと共に、各々のゴールセッティングをした。アメリカ、スロベニア、イギリス、そして私は日本から。

その目標に向かって日々振り返るのはもちろん、この期間の経験や考え方が何よりきっと、私に大きな自信を与えてくれるに違いないだろう。


今まで私が聴いたり歌ったりしてきた、膨大なサウンドライブラリーがカタカタと疼く。

心の中で固く閉めていた扉の鎖が外れた音がした。


人生の中で今が一番、歌うことに真剣で、心から楽しめている。


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