007話:靴選びで、どんな接客をされたかったか

私に合った靴を選んで欲しかった。

「何を当たり前な?」と感じるかもしれませんが、店員さんの存在価値は靴を売る事ではないのだと思っています。

売るだけなら、Amazonなど人の手を介さないでもできるので。。。

求めたかったこと、少し具体的に書いていきますと。

1.顧客のことを知ろうとすること

足を測らずにサイズを聞いてくるのは論外だと思います。

一般企業の営業業務に例えれば、例えばIT企業の担当者がクライアントの現状や課題に何も触れないまま、自社のシステムを買ってくださいとクロージングするに等しいかと。

そこに人を介する意味はありません。

足のサイズも、25.5cmでD幅といったことだけでなく、
・足が靴の中で縮みやすいのか、それとも安定的に形状を保っているのか
・D幅でも足幅が細くて厚いのか、広くて薄いのか
・踵が細いのかガッシリしているのか
・二の甲(足指の付け根)から一の甲(土踏まずあたりの甲)にかけてなだらかなのか、急に立ち上がっているのか

といったところまで把握していただけたら最高なのですが厳しいですね。。

足のサイズだけではなく、ファッションの要素、好み、どんなシーンで履くかなど、様々な要素はあります。
また、店員さんの能力や知識も靴ラストの設計者ではないので、限界はあるかもしれません。それでも、物理的に合わない、履きづらい靴を進めてしまうリスクはできる限り潰しておく姿勢が欲しかったです。

2.お店で揃えている靴を知ること

靴の特徴を知っていること。よくセールストークされる、革のブランドとか、製法とかそういうことではありません。(そもそも、そういったことは簡単にネット検索でわかるので)

・靴の足が入る空間はどういう形をしているのか、どんな足によく合うのか
・履き込んだ時に伸びやすい作りをしているのか、そうでないのか
(平面的な革を、靴の立体に整型するとき、強い力で釣りこんだ靴は伸びにくいです)
・履きこむとどのように革の表情が変化していくのか

そんな実物に触れ合っていなければわからない、リアルな情報を必要としているのだと思います。

3.そのうえで、

「靴という対象、私という対象、両者の幸せな関係を築いてほしかった」

実はつい最近に、twitterで出会った方の靴を選びました。

私と同じように薄く、まず既成で合う高級靴は5%にも満たない足でしたので、過去の私に向き合うように靴を選びました。

その時の様子をくすみさんのブログに、まとめて頂けましたので、ぜひご一読下さい。(記事は私の方で永久保存させて頂きました)


靴をデザインしていて、ふと、よく思い返すことがあります。

「自分は何のために靴を作るのか」

料理人が、食素材という対象、食べる人という対象の、最も幸せな関係を追求するのが、一つの仕事のように、
作る(創る)ことは、それ自体が目的ではなく、2つ以上の対象の幸せのために行うのが本義だと思っています。

私の場合、足という対象、地面という対象、2つの対象の幸せな関係を築くために靴木型を設計しています。

この目的に有益と思うならば、化学繊維を用いる事、自分以外のブランドを採用することすら躊躇しないでしょう。(もちろん、革素材は大好きでマニアなのですが、、)

これからも、私が見つめ続けている対象に一層向き合っていきたいと思いますので、応援頂ければ大変嬉しいです。

今後とも宜しくお願いいたします。

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