009話:靴のオーダーメイドの経験から


靴制作するまえに、ひとりの履き手として木型から作って頂いた靴がこちら。

↑はEMORI Custom Shoemakerさんの写真であり、自分で言うのもなんですが、とっても格好良いブーツであったと今も思っています。

フィッティングの基本設計も木型を突き詰めて研究しているいまでも、私とはフィッティングコンセプトは異なりますが、押さえるべき線を押さえて、ふわっとした大らかな履き心地でした。


でも、ほとんど履かなくなってしまったのでした。最初に説明しておきますが、EMORIさんの責任ではなく、これまた自分のしくじりです。


靴だけを見ていた、しくじり

端的に言えば、「ぼくがかんがえた、さいきょうのくつ」を作ってしまいました。

スペックだけ言えば
・イタリアのバケッタ製法でしあげたカルロバダラッシ社のリスシオ革で、こちらは革のタンニング工程で牛の脛から抽出したオイルを含ませており、使い込むほどに独自の文様が浮かんできます
・U字にいれたシャドウステッチ。革の裏から表面を貫通せずに通し縫いのアタリだけで描く
・チェーンステッチのノルベジェーゼ
EMORIさんの技術を沢山あつめて作った一足だったと思います。

でも履かなくなってしまいました。その理由は私に合わなかったから。さらに言えば、靴だけを見ていて自分がどのようなシーンで履いて、体のスタイルや服装を見ていなかったからです。

どうも靴だけが目立ってしまいました。靴はあくまで、自分と何かを結びつけ幸せな関係を作るための道具。



どうすれば良かったか

EMORIさんと自分の日常、足、靴に向き合えば良かったと思います。作る人と買う人という関係が間違っており、大変もったいないことをしたと思います。

当然、安くはない金額を出すのだから、いろいろ伝えたい。自分のこだわりを、つめこんだ靴を作りたい思いは、当時の私にはありました。

でも、そこをぐっと堪えて、伝えることは絞って、作り手との会話を通して一緒に自分と足と靴に向き合っていたら幸せな靴担ったと思います。

このような冒険的な靴は、初足ではなく、4−5足目に考えてみるべきでした。友人と信頼関係を構築できてから、一緒に遠くの国に行ってみるように。

オーダーメイドで自分を見つめずに作ってしまうのは大変もったいないこと。みなさまが、この記事を読んで私と同じような失敗をしないで済むように願っています。

ZinRyuのツイッターはこちら。

気軽にカジュアルに履く方も作る方も革靴を楽しんでいただきたいので、有益な靴や革の情報を基本的には無償で公開していきたいと思います。 皆様のスキやサポートのおかげもあり、何とか続けてこれました。今後とも応援していただければ嬉しいです!何卒よろしくお願い致します!