『もう一度旅に出る前に』23 展示がはじまる 文・写真 仁科勝介(かつお)
来週から展示がはじまる。いちばん最初に展示をしたのは、高校の光画部にいた頃だ。母校は写真部のことを光画部と呼んでいた。文化祭で展示をして、強面の数学の先生に、「これ、おめぇが撮ったんか?」と聞かれて、「そうっす!」と自信満々に答えていた。
大学で入った写真部でも大学祭の展示があった。参加したい部員は誰でも展示できた。それに大学祭の展示は来場者にアンケートをとって、好きな写真の番号を書いてもらう。だから人気の写真がどれかわかるのだ。翌週の部会で発表もされるから、みんな張り切っていた。ぼくも静かに闘志を燃やして、毎回一番を狙っていたけど、一番になったことはないんじゃないかな。自信があった年も、先輩の「通学路」とタイトルを付けた満天の星空の写真に、サラッと負けてしまった。勝ち負けじゃないんだけどね。
大学を出てからも、2回展示をさせてもらった。ひとつはほぼ日さんの、市町村一周の展示だ。「あれこれ準備をしてください」という手取り足取りを、ほんとうに担当の方がすべて教えてくださった。ぼくは「分かりました」と対応するばかりで、とてもありがたかったし、でも、一流の人たちにつくっていただく展示がどれだけすごいものであるかを(写真展に限らずだけれど)、まだまだわかっていなかったように思う。
今年の冬には1ヶ月間、札幌市のカフェで展示をさせてもらった。壁が広いからとにかく大きくプリントしたくて、でも大きいとものすごい値段が張るから、とりあえず出来るだけ自分でやってみて、良かった部分もあれば、もっとああしたかったなー、と反省したこともあった。記録的な豪雪だった冬の札幌は厳しくも、ソールライターが日本を撮るなら札幌だな、と思いながら過ごした。
ごく自然に、またはラッキーに、少しずつ展示をさせてもらってきた。そして来週から、表参道の「山陽堂書店」さんで展示をさせていただく。山陽道書店さんは、創業から130年続く歴史あるお店だ。山陽堂という名前なのだから、ぼくが生まれ育った岡山にもご縁がある。ギャラリーのスペースではいろんな展示が日々行われていて、今年の夏にはとても有名な写真家さんの展示もあった(心にヒィ、と金切り声が響いた)。同じ場所でさせていただく世間知らず的な申し訳なさと、展示を許してくださった山陽堂書店さんの寛大な心に、両手を合わせて天へ祈りたい気持ちだ。
それに、11月は2年前に上京した月である。先日11月になって、「3年目か‥‥」とひとり静かに思った。地元の職場にいても同じくまだ3年目だったわけで、まったく違う3年目になった気がして、とても不思議に思えて。
だから、2020年から2022年までのひとつのケジメ、責任、区切りを感じている。それはゴールではなくて、走り続けるためのプロセスだ。箱根駅伝なら中継ポイントを迎える気持ちで、タスキを次のあたらしい自分に渡せるよう、ラストスパートを走るのだ。東洋大学「その1秒をけずりだせ」のスローガンのごとく、顔をぐちゃぐちゃにしていいから、今生きていることを骨に刻むのだ。
表参道が似合わない男だけれど、ほとんど在廊しておりますので、どうか気軽に、お待ちしております。写真集も展示販売もあります。東京23区の写真といえど、ここにあるのは普通の日々たちです。ゆったり過ごしていただけると、とても嬉しいです。
写真展『どこで暮らしても』
http://sanyodo-shoten.co.jp/info/#gallery
日程|11月8日(火)〜11月19日(土)(日曜休み)
時間|月-金11時-19時、土11時-17時
場所|ギャラリー山陽堂(表参道駅A3出口徒歩1分)
東京都港区北青山3-5-22山陽道書店2階
写真集『どこで暮らしても』
https://katsuo247.base.shop/items/67894718
B5サイズ、144ページ、ソフトカバー。
編集・校正 / Ryan D. Smith
翻訳 / 伊藤千晴
協力 / 高山亮真、三澤円香
印刷 / 株式会社八紘美術
仁科勝介(かつお)
1996年生まれ、岡山県倉敷市出身。広島大学経済学部卒。
2018年3月に市町村一周の旅を始め、
2020年1月に全1741の市町村巡りを達成。
HP|https://katsusukenishina.com
Twitter/Instagram @katsuo247
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