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『もう一度旅に出る前に』29 そして進もう 文・写真 仁科勝介(かつお)

1年間のことを、いざペンを持って文字にしようとすると、反省することばかりで、自己嫌悪になっちまうばかりです、と書きたくもなるし、ありがたいご縁がたくさんありました、感謝です、と書きたくもなる。そのどちらもが、間違ってもおらず、現実として目の前にあった。だから、振り返ることは、混ざり合わない成分同士をまとめて、主成分はこうです、と答えをひとつにしてしまう副作用も、あるのかもしれない。

でも、まとめることはできなくても、そのひとつひとつの出来事についてなら、見えてきたこともある。自分がやりたいと思うことがあるとき、そのおおよそは、どうしたらいいか最初から答えが出ていた。「今のベストを尽くす上で、やれることはやったの?」と自分の胸に手を当ててみたとき、嘘をついているかどうかは、自分がいちばんわかってしまうから。おおよそは、自分の弱さとたたかうことだから。ぼくもずいぶん心が弱いものだなあと痛感した。

その狭間に、人間の面白さがあることもわかる。欲も本能も、まったく悪いことじゃない。ただ、ぼくはもう自分の生きるベクトルとして、逃げたくないなあということを、反芻して、自分で自分に説得させられ、そこにぐうの音も出ないこともわかっていて、納得して、1年かかって、発酵した感じだ。ずいぶん見かけの良い書き方をしているけれど、まさにこういう、表面上の自分とはおさらばなのだ。

本当の自分次第。今までの体験も、ご縁も、自分だけでは得られなかったことなのだから。その上で今の自分が構成されていることを思うとき、ここからは、ぜんぶ自己責任になるのだ。もちろん生真面目すぎずに、穏やかに朗らかに、でもつよく、そして進むのだ。


仁科勝介(かつお)
1996年生まれ、岡山県倉敷市出身。広島大学経済学部卒。
2018年3月に市町村一周の旅を始め、
2020年1月に全1741の市町村巡りを達成。

HP|https://katsusukenishina.com
Twitter/Instagram @katsuo247

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