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『もう一度旅に出る前に』19 京都への旅  文・写真 仁科勝介(かつお)

一週間、京都市の西陣という地域に滞在した。名前の通り西陣織で知られる歴史的なまちだ。個人的な感想を並べても仕方ないのかもしれないが、人との距離が近くてものすごく自然に会話できたし、ゆったりしているし、「おおきに」という感じで心の波長が合うたのしさがあった。

そして、「もう一度旅に出る前に」というタイトルの通り、今回の滞在はまだ旅を始める前にあたる。大学生の頃に市町村一周の旅の準備をしていたときは、旅を始めるまでほとんど遠出をしなかった。リゾートバイトで長野県まで住み込みバイトに行ったぐらい。まもなく長い旅に出る予定なのだから、プライベートで旅に出る余裕はない、って。

そのスタンスは今も基本的に変わらない。だから、来年の春に旅をはじめるまでは、旅に出たいともあまり思っていない。でも、大学生の頃と最近で明らかに違うのは、旅に出ようとしなくても、仕事やご縁で、外に引っ張り出してくれる機会が増えたことだ。これ以上なく冥利に尽きることで、ありがたいなあと思う。

京都の西陣では、滞在させてもらったKéFU(ケフ)さんのカフェで1日店長や、京都在住のフォトグラファーの岡安さんとご一緒して、フォトウォークとトークイベントをさせてもらった。と言っても京都と何の関係もない人間が、ポッといきなりやって来て、「イベントします!」と叫ぶわけだ。外様が来て大丈夫なものかと不安ばかりだったけれど、KéFU(ケフ)の方たちはもちろん、お会いした方々のあったかさにたくさん助けてもらった。イベントは西から東から、知っている方も久しぶりの方も初めましての方もはるばる来てくださって、どれだけありがたいことかと眉間にシワがたくさん寄った。そしてもちろん、心から楽しかった。

多分、こうしたイベントはもうしばらくできない。唯一フォトウォーク的なことは、広島で企画させていただけるかもしれないけれど、あとは旅のことで精一杯だろう。そして思うのだ。「旅を始める前に、イベントができてよかったなあ」と。

ここ数年は基本的にイベントの享受側だった。参加することが多くて、主催側でも誰かのイベントにゲストっぽく、上手い具合に混ぜていただくことが多かった。

でも、今回本当に久しぶりに主催っぽくイベントをさせてもらって、成功の加減とかはもちろんあるだろうけれど、自分が場をつくるきっかけにいられることの嬉しさというか、やりがいみたいなものをすごく感じた。自分がこれから旅で探したいことはこれだよなあとも思った。好きな人と人がつながりあって、広がり合っていく関係性。たとえ住んでいる場所は違っても、人と人が関わり合える生き方。

タイミングも今、っていう感じだった。フリーランスで仕事を始めてすぐにイベントを主催させてもらっていたら、もっとスカして格好つけていたと思う。表面的だったんじゃないかなあ。それに、東京23区をたくさん歩いたあとに訪れた京都、というのもものすごく効いた。お互いにどう違うとか、どう似ているかを感じさせてもらえたから。

旅に出る前の準備だったような気がする。一週間の滞在なのに1ヶ月ぐらいの感覚ですごく不思議だった。ものすごくありがたいし、もっともっと頑張ろう。




仁科勝介(かつお)
1996年生まれ、岡山県倉敷市出身。広島大学経済学部卒。
2018年3月に市町村一周の旅を始め、
2020年1月に全1741の市町村巡りを達成。

HP|https://katsusukenishina.com
Twitter/Instagram @katsuo247

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