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【読書】きらきらひかる

たまには恋愛小説を

ひょんなことから勧められた小説の感想文になります。

この本は主人公の笑子と睦月の生活に、初めから自分も居たような感覚になってしまう、情景の描写が丁寧な小説「きらきらひかる」。(著者:江國香織さん)

そんな空間では、2人の距離、夫婦という枠、罪悪感、劣等感、独りよがり、思いやり、などなどが行ったり来たりするのだけど、この小説には推理もレーザー銃もビジネスに役立つハウツーも登場しない、ただただ人の心の動きが見られる本。そんな本の、ほんのちょっとした読書感想文、春休みの宿題。
("恋愛"小説という前評判をいい意味でうらぎってくれたよ笑)

登場人物のはなし

まずは主人公たちのことを書きたい。
睦月は、もう完璧な夫だ。医者で家事できて朝ごはん作ってくれて妻に優しいとか最高だ。見習いたいわ。もちろん、ホモであることを除いて…。
笑子は健気な妻ではあるが、家事はほぼせず、酒浸りである。精神疾患らしいので仕方ない。でもずっと美味しそうに酒飲んでる。こっちまで飲みたくなってくる。そして仕事してるのはえらい。

ただ、笑子はほんとに健気。純粋で子どもみたいなところが可愛らしいとも思う(酔ってるだけかもしれないけど笑)。絵のおじさんと歌ったり、観葉植物に(良かれと思って)色んな飲み物を与えたりね。ただちょっとモノぶん投げたりするのは大変だなと思う。

睦月は冷静がゆえに、客観的すぎてそして悲観的でもある。自分の感情とは反していても"こうあるべき"を実行できちゃうタイプだ。本人が苦しむ描写こそ少ないが、感情と反する行動をとるのは割とエネルギーを使う行為で、苦しいというか、疲れるんだよね。ただ、それを見せないのが夫であり男だといえば、まぁそうなのかもしれないね。男はつらいよ。

笑子は逆で感情がオープンな故、割と思いのまま行動するんだけど、後になって自分が嫌んなっちゃって、1人の時なんかもう寂しくなってしまう場面には、読んでる方も感情が引っ張られてしまう。。

そんな2人のギャップが、笑子を余計に不安にさせたり、睦月を独りよがりにさせたりして、2人は苦しんだり、仲良くしたりしながらお話は進む。
素直になればいいのにね。そうはいかないだろうけど。

補足:笑子はかわいい5選

  • 絵のおじさん(セザンヌ)と一緒に歌うところ

  • 寂しくなって睦月の職場に押しかけてくるところ

  • 観葉植物に紅茶とかあげちゃうところ

  • シーツのアイロンがけをちゃんとやるところ

  • 睦月の服をならべ、それが自分の夫で実在すると納得して安心するところ

それで?

それで、そんな「イッパンテキな夫婦」からかけ離れた2人だからこそ浮き彫りになる、感情の行ったり来たりがこの小説の読みどころかなと思う。笑子はたびたび感情が高ぶって、取り乱してしまう(その場面はちょっとだけ辛い)。けど睦月はその様子から笑子の気持ちをいち早く察し、寄り添ってあげている。普段からちゃんと相手のことを理解しようとしてるんだろうな、と思うとちょっと辛い場面にも愛情らしいものが見つけられてうれしくなる。
物語の中盤、睦月の計画で、笑子を昔の恋人とデートさせる場面がある。もちろん笑子としては望んでないことだし、睦月が裏で手を回したことを後から知って傷ついてしまうのだ(救急搬送されるくらいに)。そりゃ傷つくわ。一生懸命睦月に向き合ってるのに、なんか裏切られた気分だろうさ。睦月は悪い奴だ、と言いたいところだが、睦月は睦月で、自分の足りない部分を他の人で補って貰おうとしたようだ。睦月は自分だけでは笑子を幸せにさせられないと思っちゃったんだろうね。でも、好きな人を自ら別の人にくっつかせるなんて、普通は辛いと思うよ。そんな描写はないが。けど、笑子のことを愛しているからこそ、[自分の寂しさ]< [相手の幸せ]が成り立つなら、自分が辛かろうが睦月は実行してしまうのだろう。でもそうしたら笑子の気持ちはほったらかしでは?その葛藤にすら共感してしまうよ、睦月。

まあ2人や友人たちとドタバタやってるうちはまだ良い。物語の後半は2人の子供や睦月の性についての話で、親族を巻き込んでいく(というより親族が勝手に割り込んでくるように見えてしまう)。

このままでいい

物語の序盤から2人の両親が干渉してくる場面があり「普通の家族」というテーマを横たわらせている。(苦しみながらも2人で何とかしようとしてんだから、干渉すんなよって思ってしまう。)終盤には両両親が感情的になって散々な事を言い合うのだけど、結局は結論は出ず、2人が離れたくない気持ちとか、愛情的なものをはっきりくっきりさせただけだったよね。睦月が両両親に言った「このままでいい」には、なんか安心させられたよ。この小説で2人がいちばん素直になった場面なんじゃないかな。

補足:登場する気になる食べもの

  • ピーチフィズ🍑

  • コアントロー味のシュークリーム🥃

  • ミントジュレップ🌿

  • プレーンレーズンのドーナツ🍩

  • きつねきしめんサラダ🥗

きらきらひかる

全く内容に関係ないけど、本のカバーはタイトル通りに本当にきらきら虹色にひかっててめっちゃきれい。私が子供の時好きだったキラキラしたシールとか、セロファンみたいな輝きを放っていて、本を手に取る時、ちょっと無邪気な気持ちにさせてくれる。このキラキラカバーだけとっておきたいくらいだ。

ということで、感想文を締めくくりたいのだけど、私みたいに普段理屈っぽい本ばっかし読んでる人には、ちょうどいい箸休めになると思う。ちょっとヘビーな場面もあるけど、全体的には読みやすい小説だからね。あと、イッパンテキな恋愛関係じゃない人たちには、共感できる部分も多いんじゃないかな。こんな形もあるかもって。いろいろ混ざってても良いんじゃないかな。
私もたまにはこのキラキラを手にとって、また2人の部屋に行ってみたいなと思った🔭

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