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狭い日本 そんなに急いで 何処へ行く【11月】


「生産性」という悪魔に魂を吸い取られている。



【「立ち止まる」ことを 
自分に許せるという やさしさ】



これは、目の前の課題を黙々とこなすだけの日々、突然ふと頭の中に降りてきた言葉です。


改めて考えてみたら、私はここ最近、まともに文章をしたためるということをしておりませんでした。


高校時代、インプットとアウトプットを繰り返し、本と本の繋がり、新しい出会いをまとめた講座を作り、毎月の読書記録をつけ、それを楽しみにしてくださる方々が居た。あんなに幸せだったことはありません。本が本を連れてくる終わりのない学問の世界の大冒険を「無知の知ラビリンス」と呼んで、心の底から楽しんでいました。



でも今は?



3月末に突然大学の飛び級が決まって、本来9年間かかる課程(大学4年、専門3年、院2年)を5年で終わらせる事になりました。

とにかく時間短縮、全てにおいて効率良く。勉強仕事勉強仕事勉強仕事。生産性生産性生産性。

10月は特にがむしゃらに働いた結果、インセンティブが月平均の3倍になりました。

いつしか口癖は「あー忙しい」「疲れた」に。
「これ、私が一番なりたくなかった大人の姿じゃない?」
と気づいた頃にはもう顔中にニキビが出来てました。

完全に睡眠不足、キャパオーバー。慢性的にずっと疲れが抜けない。

読書量は前の三分の一以下になりました。培った良書センサーでかろうじて質だけは良いものを保てているつもりだけど、アウトプットは正直全然できていません。




私へ。



“ あなたは今、そんなに急いで、一体何処へ向かっているのでしょう? ”




ということで今回は、

【「立ち止まる」ことを許せるようになる】

ということをテーマにして読んだ、先月の抜書ノートの中身を少し共有させていただきます。


テーマが非常にわかりやすい。
煩雑として、たのしいね

1枚目はうつ病と双極性障害について。これは自分の研究に使うものなのでまぁ一旦置いておきます。関連して、論文はざっと50本ほど読みました。おかげでめちゃくちゃ進められました✌️

では、クローズアップしてみましょう。


①【本が語ること、語らせること】青木海青子


田舎で小さな私設図書館をやっている方のエッセイ。 

『本をおすすめするのは、「本の探し方を知っているから」とか「ここが図書館だから」とかいうこと以上に、私が「そういえばあの本に、今のこの方にぴったりな言葉が書いてある」と思い出すから』

そういう選書を人に出来る人になりたい。

『お客さんの問題意識に触れると、私の脳内の書架にいつもと違った方向から光が当たり、忘れかけていた記憶をすくい上げることができるようになる』

いつもと違う光が当たった書架を、フラフラ散歩してみると、まるで違う新しい発見がそこに。

『言葉の海で見つけたお宝を誰かと分けることや、泳ぐこと自体を楽しみに、今日も私は言葉の海に出かけます』

わたしも、海で見つけたお宝を誰かに分けるためにこのnoteを書いています。

②【坂を見上げて】 堀江敏幸

『だれかと真正面から向き合うのは、とても難しい。ましてやその状態で話をするのは、なおのこと苦痛である。相手から目を逸らさず、瞳と瞳を結びながらも自然体を保ち、言葉を素通りさせないこと。』

言葉を素通りさせないこと。目を逸らさず、その人のSOSを見逃さないこと。

『視覚と聴覚を同時に高いレベルで稼働させるには、長い期間にわたる意識的な訓練が必要で、恥ずかしいとか面倒だとか言ってどちらか一方に偏りがちなものは、思念をあらぬ方向へ飛ばして、ほんの数秒前、数秒後の話の脈絡がつかめなくなってしまう。』

これがカウンセラーの傾聴の本質かなぁと。


③【ソウル・ハンターズ】 レーン・ウィラースレフ

文化人類学。
「境界領域的な性質を有しているものは、やがて境界を超えてしまわないのか?
偽物はいつか本物になってしまわないのか?」

これは最近私も考えていたことでした。

『スピリドンはエルクではなかったがエルクではないと言うわけでもなかった。彼は人間と非人間のアイデンティティーの間にある奇妙な場を占めていた。
1匹の雌エルクが仔を連れてヤナギの茂みから現れた。当初、その2人は立ち止まっていた。母親は当惑した様子で巨大な頭をあげたり下げたりして、目の前の難問を解けずにいた。
しかしスピリドンが近づくと彼女は彼の模倣的パフォーマンスに囚われ、疑心を一旦柵上げして、彼に向かってまっすぐ歩き出した。その後から仔が早足で続いた。
その時スピリドンは銃を持ち上げ、二人を撃ち殺した。
スピリドンは言った。
「私は二人の人間が踊りながら近づいてくるのを見た。母親は美しく若い女で、歌いながらこう言ったんだ。
「誉れある友よ、いらっしゃい。あなたの手を取り、私たちの住まいにご案内しましょう。」
その時私は二人を殺したんだ。もし彼女と一緒に行ってしまっていたら、私の方が死んでいただろう。」』



④【自殺の思想史】ジェニファー・マイケル・ヘクト

『だから私は言いたい。奇妙な言い方だったら申し訳ないけれど、自分を殺さないで。多くの人にとって、そしてほとんどいつも、生きる事は耐え難いほど辛い。本当に苦しいよね。けれど辛くて耐えられないものではない。耐えられないと思うほど辛いだけ。
自殺は共同体を大きく傷つける。自殺の最もわかりやすい予兆の1つは自殺を知ること。つまり、自殺をすれば、やがて人を殺すことになる。だからあなたは、生き続けなければならない。』

「どうして自殺をしてはいけないんですか?」

この問いに対する答えはまだわからないけれど、これはとてもわかりやすい答えのひとつだなぁと。


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さて。一覧を見ればわかるように、今月は人の日記をたくさん読んだ月でした。文喫に日記コーナーが出来ていたものですから。

そして、ウィトゲンシュタインと服部みれい、アイオワ日記にアルジャーノンを読んでいたら見事に触発されて、なんだかわたしも日記を書いてみようかという気になってきました。

日記については、人生で何回挑戦したかわかりません。(要するに三日坊主ばかりしています。)

でも今回ばかりは現段階で1ヶ月くらいは続いています。すごいじゃんわたし。

日記を書くことは、毎日、1日の終わりに小さく「立ち止まる」ことが生じます。 

『今日はどんなことがあったかな』と思い出す過程が必要です。

【「立ち止まる」ことを
自分に許せるという やさしさ】

の第一歩として、まずは小さい立ち止まりから、コツコツと。

日記を書き始めて最初に感じたのは、自分の日常にあまりにも中身のないこと!!
規則正しすぎて、なにも変わり映えがないんですよね。

何か書かなきゃと思って、取り敢えずは、

「1.何時に起きたか」
「2.その日のスクランブルエッグの固さについて」
「3.学校で友達とはなしたこと」、
「4.お仕事で出会った、へんな人」
「5.気になった、ニュース」

については書くようにしてみました。

そしたら、案外すらすら書ける。

1.
起きるのは大体6:10。何時に寝ても、6:10に目が覚める。なんででしょうね。

2.
友達とガストで毎日同じ朝ごはん(スクランブルエッグ&トースト)を食べてるんだけど、それの卵の火の通り具合が日によって違うんですよね。
多分毎日同じ人がつくってるんだけど、気分で変えてるのかな?

3.
学校で友達とはなしたことは、本当になにげないことばかりです。

入学してからずっと仲良いのに、お互い同じアーティストが好きなことを全く知らなかったりして、何気ない鼻歌からめちゃくちゃ盛り上がるなど。

抜粋:私の日記(笑)

人間と人間、長い期間一緒にいても、お互いのことはついに何も知り得ないのかもしれないと時々思います。『だれかと真正面から向き合うのは、とても難しい』から。

だけど、共に過ごす時間と比例して、相手について知っていることは徐々に増えていく。それが人間関係の楽しいところかなと思います。

5.
仕事の都合上で、最近から日経電子版を読んでいます。
気になったニュースについてつらつら書くのは、とても良いアウトプットになっています。
とはいえ、日経なので経済ニュースばかり。毎日目まぐるしく動く株価を眺めるのは、決して休まっている感じはありませんが…


こんな感じで、なんだかんだでペンを滑らせると2ページくらいにはなります。
その日読んだ本について考えたことも書けば、あっという間にボリューミーな日記に。

何日か経って読み返すのもまた楽しいので、何年後かに読み返すのはもっと楽しそう。


1日の終わりに、「立ち止まる」時間をつくってみたら、

立ち止まらないと見えない小さい幸せがあることに、はじめて気づくことができました。

全ての学びは、己を知ることだなぁと常々思います。


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