見出し画像

blenderで作る作画風アニメーション勉強

こんにちはフタバです。
最近いわゆるセルルック調のCGアニメーションにかなり傾倒していて、今できる範囲で作画のアニメーションに近づけるよう挑戦してみました。

正直めちゃくちゃ頑張ったのでただ作って終わりというのも忍びなく思い、どういう風に作ったのかとか工夫した部分とか参考資料とか細かく書き残そうと思います。
誰かに刺さって少しでも何かの役に立てば嬉しいです。

→実際の映像

画像が多いのでPCなどで見てもらった方がいいかもしれません。
そこそこ長くなりますので目次を参照しながら見ていただけると見やすいかと思います。


※本記事は素人なりの知識で出来ています、あくまで参考程度に見てくださりますと幸いです

使用ソフト:
blender
aviutl
firealpaca

制作期間:
約2週間(モデル制作期間は除く)

カット1

まずは中距離で全身が映る掴みのカット。
一番最初に作り始めて一番力が入ってるシーンです。
とにかく色んな資料をフレーム単位で観察してどんなタイミングで動かしてるのかを学びました。
他方ポーズ的な観点での動きについてはそこまで詰められておらず。
自分の身体の動きを確かめたりしながら、とりあえず捻りを入れること、全身が同時に動いてしまわないようにということを意識して作りました。

カメラは縦パン(上から下に流れる感じ)で動かして浮遊感というか下から力が湧き出ている雰囲気を出してみました。

モデルの輪郭線は背面法で出しています。頂点ウェイトで線の強弱をつけて入り抜きを表現し、アップのシーンでも魅力的に見えるよう調整しました。
輪郭を綺麗に出す為にレンダリング時には頂点数を増やしています。

アニメーション

いわゆる作画アニメに倣って24fps、キーフレームは3コマで打っています。
基本的に補間は使わず手打ちでポーズの流れを作り、実際に再生しながらフレームを調整しました。
映像のフレーム感覚がまだまだ掴めておらず何回も繰り返しながら、早すぎるな、カクカクだな、動きが不自然だなと確認しつつ、適宜中割を追加し完成させました。

まばたきについては開き→中目→閉じ目→中目→開き目を3Fずつ全体15Fでアニメーションさせると自然に見えそうです。
シェイプキーは開き→閉じ目のものしか用意してなかったので今回のアニメーション専用で中目のシェイプキーを追加しています。
作風によって変わりますが、中目は大体まぶたが7割ぐらいおりてる状態にするのが良いかなと思います。
また中目に合わせて瞳自体も少し下げるのもポイントです。

テクスチャマスク

ライティングだけでは自分の思ったような影が出せないのでかなり描き込んでいます。
この時テクスチャに直接描き込むと影の階層が増えてしまうので、白黒のマスクテクスチャを用意し白で塗った部分に影色が出るように調整しました。
カット毎にマスクテクスチャは別で用意しています。
激しい動きのアニメーションを作るときは数枚の描き込みではすまなそうなのでライティングとの併用は必要かと思います。

(上)マスクあり(下)マスクなし
衣装のディティールを増やしています、特にお腹まわりは立体感が増したかなと思います。
上記のようなノードでマスクを有効にしています

ダメージ表現

またちょっとした部分ですが、アニメでよくあるキズ的な表現を散らばして情報量を増やしています。
これはキズ用のテクスチャを板ポリに貼り付けてそれぞれウェイトを身体に追従するようにしています。
カメラとの距離に合わせてカット毎に調整していきたいですね。

撮影処理

というわけで各種調製を施してレンダリングすることでタイミング撮(塗りまで完成した段階)の完成です。
ここからは動画編集ソフトに移って撮影処理を行っていきます。
撮影処理ではキャラクターと作成したエフェクトなどの合成(コンポジットの都合上それぞれ別々にレンダリングしています)や各種効果を追加していきます。

①レンダリング素材(ベース)

blenderで出力された映像そのまま。
もちろん撮影処理を行うことでアニメ感は増しますが、作画アニメらしい動きはこのレンダリング段階で決まるのでしっかり詰めておきたいですね。

②ディフュージョン

まずはディフュージョン的効果。
最近のアニメでは頻繁に使われてるイメージ?
被写体が光を受けてぼやっと拡散しておる感じ、リッチな画に仕上げることができます。
技法としては、ぼかしをかけたスクリーンレイヤーと乗算レイヤーをベースレイヤーに重ねて透明度を調製します。

③ぼかし+色収差

スピード感を出すためのぼかし(ブラー)、なんかいい感じになる色収差(色ズレ)のフィルターをかけました。
ただ全体に当ててしまうとくどい画面になってしまうので、後述のマスク画像を割り当ててキャラクターの周辺にのみ効果が表れるようにしています。

④グラデーション+パーティクルエフェクト

別でレンダリングしておいたパーティクルエフェクトを別レイヤーに合成。
拡散光などを追加して全体の画面を調整しています。
また全体を馴染ませたり発光感を表現するため、黄色のグラデーションフィルターを重ねて徐々に明るくなるようアニメーションさせました。

マスク画像

Aviutlで使用するためのマスク画像。
黒に近いほど付与した効果が薄れ、白に近い部分ほど強く効果がかかります。
詳細は以下を参照してください。

カット2

カットイン。
元々の描き込みからして全体の中でもトップクラスに力を入れてる瞳ですが、顔へのアップになる関係上このカットは間違いなく目が主人公と言っていいでしょう。
カットとしては瞳の揺らぎを表現するために目の動きに合わせてハイライトの大きさを変えたり動かしたり、また2F毎に微妙に位置をずらして違和感にならない程度に震えさせています(みずみずしさ、透明感の表現)。
また瞳のお芝居が単純な表現にならないように、発光一つとっても微妙な調製や変化を施し、目の動きに合わせて微妙な変形なども加えました。

ぶっちゃけ一番時間がかかったカットですね(ソフトが重すぎて中々捗らなかったのもありますが)

カットインの入りを自然に見せるため細い閃光を一瞬走らせて拡がるような演出を挟みました。
これはスロー再生にしないと気付かないと思いますがあるのと無いのとでは違和感に大きな差が出たので良い試みだったと思います。
また効果線も加えました、CGアニメーションでこういう露骨なアニメ表現をするとちゃちにならないかなと心配でしたが意外と悪くない仕上がりなったかと思います。

目のお芝居のために専用のハイライトを板ポリで作り、それぞれ独立して動かせるようにしている。
またこのカット専用で細い毛束も動かせるようにボーンを追加した。
毛束は初め5枚程度のアニメーションを3コマ打ちでループさせていましたが再生してみると意外とカクつきが目立ちました。
最終的に2コマ打ちに変更、中割りを何枚か追加して完成としました。
余談ですが作画のアニメーションでも2コマ打ちや毎フレーム描いてるシーンがあったりするので、コマを落とす=CGらしさを無くせるというわけでは無いようです。
あくまでベースの動きやタメツメのメリハリがあってらしさが出ると考えられるので、3コマ打ちに囚われ過ぎる必要は無いのかなと思います。

細かい毛束がコマごとに見えたり見えなかったり遅れて流れることでより髪の毛のなびき感が上がったかと思います、正直CGでやるコストは結構高いですしここまでやる意味はあるのかと問われると疑問符。
しかしだからこそ今後可能性を感じる部分だなぁとかなんとか。
もっと上手くなってやべえ髪の作画をしたい。

撮影の関係でハイライトは別レンダリングしているのですが、実は髪の毛が被るコマのハイライトは一枚一枚全部手書きで修正しています(血涙)
たぶん上手い方法があるのでしょうが検証する時間はなかった…。

グッと睨みつけてカッと見開き力を開放するイメージ。
元々は赤目に変わる演出は考えていませんでした(赤目自体は用意していた)。
このあとのカットで大剣を生成すること、作ってる内にかなり派手なカットインになったのでこの勢いで覚醒状態に移行したらかっこよさそうだな?と試してみたらビタッとハマりました。
力の象徴といえば稲妻も欲しいよねということでblenderでノードを組んで電気のエフェクトも作成、撮影でいい感じに合成しました。
上の画像の②を見てもらうと分かるとおり一瞬真っ白なフレームを挟んでいます、これは赤目への移行の違和感をなくしたり発光的な表現の意味があります。
プリキュアの必殺技カットなどで使われていたので試してみたらいい感じでした。

金田光り

アニメ的なフレア表現、いわゆる金田光りで画面転換するシーン。

実はフレアエフェクトの光の色をそれぞれ微妙に変えていて、左から赤→青→緑を混ぜています。
これは瞳の色に合わせていて一時的な覚醒状態の赤、その後左目の青、右目の緑という具合で一連の流れを作っております。ここのカットもオタクポイント高いですね。

金田光りとは金田伊功さんという方が作られたもので、円と十字でフレアを表現する技法です。
お恥ずかしながら今回制作するまでこのエフェクトの名前を知らず、グレンラガンとかで見たことあるやつという記憶を頼りに頑張って検索しました。
制作方法などは特に見当たらなかったので、アニメの画面をフレーム単位で観察。
blenderで十字と円のメッシュを制作しボーンで動かしながらアニメーションさせました。

ここの演出は全体的にアニメ「天元突破グレンラガン」や「咲-saki-」、ゲーム「ドラゴンボールファイターズ」の超サイヤ人4ゴジータの登場シーンや「ペルソナ」シリーズなどに強い影響を受けていますね。

クロスエフェクト

そして閃光エフェクトが十字を切って次カットに移行します。
イメージとしては覚醒状態で発したエネルギーが閃光となりそこから武器が生成されるという感じで作りました。
西洋、シスター、教会、キリスト教、聖職者、そんなフレーバーを表現するために随所に十字の要素を散りばめています(投稿日がクリスマスなのもそんなフレーバーが込められているとかいないとか…)。
瞳の色に合わせて、一閃目はフルパワーの赤色、返しのニ閃目は青と緑の中間色(設定に説得力を持たせるため調べて、十字の切り方も上下左右の順で合わせました)

カット3

腋と腰と太ももを見せる為だけに作られたカット。
はじめは腕を伸ばして飛び込みながら思いっきりカメラが回り込むようなカットで考えていましたが、時間も実力も足りず断念。
できる範囲で見せたい部分をさりげなく効果的に見せるという考えのもと最終的にこんな感じに行き着きました。
正直動きをつけたかったですがやむなし。

渦エフェクト

渦のようなエフェクトはblenderで作成したメッシュをエンプティで操作してアニメーションさせたものをレンダリングして合成しています。
マスクモディファイアを標準搭載のクラウドテクスチャなどで調整することで、blender内限定ですが割と手軽にそれっぽいトルネードが作れます。
詳しくは参考資料を見てみてください。

ジオメトリノードを使った消失・生成エフェクト

 

大剣の生成についてはジオメトリノードを使っています。
ジオメトリ近接を使い、スフィアを近づけると剣のメッシュが四散、スフィアを離すと粒子が集まって剣を形成するような表現を行っています。

エフェクトを作るときは如何に素材を重ねて魅力的に仕上げるかが重要と感じたので、大きさ、動きの異なるパーティクルや重ねたトルネードを組み合わせて情報量を増やすよう意識しました。

ノードはこんな感じ。
まだまだ理解が浅いのでこちらも詳しくは参考資料参照。

カメラワーク

カメラワークの作成はまだ手法を学習中で難儀しています。
とりあえず被写体にエンプティを重ね、そのエンプティを親としてカメラをペアレントしています。
またカメラにはトラックコンストレイントを追加しエンプティの方向を向くようにしました。
基本的にエンプティは上下左右、Z軸回転の動きを担当、カメラは回り込んだりズームの動きにキーフレームを打っています。
ここはもう少し色々なカメラワークを試しながら適切な手法を確立していきたいですね。
ゲームエンジンに移植できるかも含めて今後研究していこうと思います。

カット4

ターンテーブルのカットですね。
リスペクトを込めて、いただいたデザイン画の立ち絵を再現したポーズを待機画面風に仕上げました。
これまでのカットと違い3Dらしさを無くそうとはせず、逆に実際のゲーム画面だったらこんな感じになるだろうかというイメージで進めました。
従ってコマは落とさず時間もなかったのでほとんど補間に頼っています。
待機中の揺らぎを表現する為に呼吸のようなモーションを作りました。
全体Fの真ん中くらいで腰を落としきって戻すような動き、そしてそれに合わせてフォロースルー的に首から頭が後から少し動くような感じで仕上げました。

コンテ

人様に見せられたもんじゃないですがまあ誰も見ないだろの精神でコンテを上げます笑
思いついた演出とできることと時間の関係でどんどん修正されていってますね。
修正は良いのですがもう少し管理面を見直してもよかったなとふと。
最終的に欲しい要素は全部詰め込めたかなと思います。

一番最初に描いたコンテ

onenoteでコンテを管理するようにした話→


まとめ(自分語り)

以上、今回制作した作品について解説および語らせていただきました。

もしやってみるならまずは比較的簡単な目パチや口パクで動いてる!楽しい、となってもらったり、簡単なディフュージョン効果をかけてみてアニメみたいになった楽しい!みたいな入口が良さそう。
コンポジットはblenderだけでもできますし。
ターンテーブルに一手間加えてアニメみたいにリッチな画面にしたりまばたきさせたら何だか楽しそうじゃないですか?

できる限り表現を突き詰めたい、極めたその先を見てみたくないですか?
私はそれが見たくて、楽しくてたまらないので創作を続けてるんだと思います(創作する過程が好きなのかなぁと思っていましたがまた少し違ったみたいです)。

割とニッチな内容かもしれませんが新たな楽しみ方や知見を提示できれば御の字…

それではご清聴ありがとうございました。

参考資料

映像資料

他多数。

コンポジット参考

アニメーション制作参考


blender参考

ジオメトリーノードを使ったディゾルブエフェクトの解説。

マスクモディファイアを使った渦エフェクト。

パーティクルを使った効果線、集中線。

その他参考

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?