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憲法2.0

トランプ大統領の誕生やブレグジットなどを契機に、民主政治の行き詰まりを指摘する声をよく聞くようになって久しい。

実は人類の歴史において民主主義というのは新しいものではなく、古代ギリシャの一部で民主主義による政治が行われていた。そしてすでに当時から民主政治に対する批判は行われており、かの有名な哲学者プラトン(ソクラテスの弟子)は民主政治のダメさを指摘して(そのダメさの理由も当時も今も不変である。)、少数エリートによる支配を提唱した。

現代においてもまったく同じ論が広範囲に見受けられるようになった。
古代ギリシャの時代から科学技術の発展を経て、現代における脱民主主義的な主張はテクノロジーの活用を取り込み、新反動主義などの形で現れている。
日本では成田悠輔氏がすべての政治的意思決定はAIによって行われるようになるだろうと述べたりもしている。

しかし、具体的な意思決定をAIに任せられるようになるかどうかは甚だ疑問である。おそらく少数エリートによる意思決定をAIがサポートするということになるだろう。
ただし、少数エリートによる支配だったり独裁だったりは結局は機能しない。なぜなら人間は誰しも自分の利益を優先し、全体の利益のために行動することが原理的にないからだ。権力は腐敗するしそれを交代させる選挙なり民主主義的仕組みは不可欠なのである。
そして、その権力の交代の仕組みをAIによって自動化することはできるかもしれないというのが憲法2.0の発想の核になる。

現在の民主政治における権力交代の仕組みは選挙である。数年おきに有権者が投票することによって政治家を選択する仕組みである。
自動化された権力交代の仕組みにおいては、AIが自動的に政治家を交代させる。
どのポジションの政治家を、どのタイミングで、どのような基準で選ぶのか。そういったAIの仕様はどこかの時代の国民があらかじめ決める必要がある。
その仕様が新しい憲法となり、将来の為政者を縛り続ける。その時々の国民の意思が反映されることはない。
つまり、主権は都度の国民にあるのではなく過去(憲法制定時)の国民の意思決定にのみ存するという新しい民主主義である。時代ごとの民主主義ではなく、過去現在未来にわたる時間軸を広げたスケールで見た民主主義とも言える。

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