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その生物は未確認

 私は未確認生物ハンター。子どもの頃にテレビで見たネッシーの特集に興奮し、大学生になってもツチノコやビッグフットなど、様々な謎の生物への興味は絶えなかった。卒業後に製造関連の堅い会社に就職してから今までの三十年間も、その情熱は変わらない。週末は未確認生物目撃情報がある日本各地に調査に向かい、連休を使って海外まで足を運ぶ生活を続けている。

 私の人生の中心は未確認生物なので、どんなに周りが忙しくても極力残業はせず、飲み会も一次会で早々に切り上げ、休日出勤は絶対にしない主義で仕事を続てきた。出世コースからは完全に外れたようだ。
 同期は次々と役職につき、立派な姿になっているように見える。そんな彼らに社内で顔を合わせると、たいてい私の活動をは否定される。
「まだ、あれやってるのか。カッパだか天狗だかのやつ。それより早く奥さん見つけなきゃな」
「おい、いい年していつまでやってるんだ。趣味はゴルフにでも変えないと、人生そのまま終わるぞ」
「未確認生物を追っかけるのもいいけどさ、今度どうよキャバクラでも。女の尻追いかけてるくらいのほうが楽しいぜ」

 私は、もう人生で発見できる可能性は無いだろうと思い、未確認生物リストに「オトナ」と書き加えた。

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