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容堂の軍配

大相撲初場所、千秋楽手前の1月27日、霧島対琴ノ若。裁く行司は木村容堂。手にした軍配を返すとそこに「歳月不待人」と金文字で記されている。軍配は琴ノ若に上がった。

この二日間、近所づきあいをしている家の法事に出席した。故人は幼いころより知っている。私は受付を務めた。初めての経験である。次々来る会葬者の応対をするポジションである。来る人の顔が目に入る。

なかには旧知の顔もある。しばらく見ないうちに、ずいぶんと老けたという印象を多く抱いた。久々に近くで見たからかもしれないが、時は毎日刻まれているという思いを強くした。故人は90代まで生きたが、まだ若かったころの姿を知っているだけに、あっという間に過ぎた思いが突き刺さる。

私は昨年秋に仕事を変えた。自分の裁量が大幅に増したが、数々の保障はもうない。必然で現在の道を選んだが不安もある。しかし自分への大きな期待もある。

後詰が高坂弾正の軍を防いでいる内に、武田信玄本陣へ突撃をしかけた上杉謙信のように、私も人生の川中島を迎えている。謙信と違うところは、私がもう盛りをすぎていることだろう。それでも敬意を込めて、容堂の軍配を打ち砕きたい。

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