史実のブッダとは 上
正直、そこそこの衝撃を受けている。人口に膾炙した男女平等を標榜し、身分差別を否定したブッダは神話の部分が強いとしている。
本書は現代の価値観からブッダをある意味都合よく解釈してきた部分があると説く。それを史実のブッダと対比して「神話のブッダ」としている。
私には仏教学の碩学、中村元の訳した『スッタニパータ』に救われた経験がある。作者によると中村が大成した仏教学は「神話のブッダ」を完全にはなれたものではないらしい。中村の到達地点よりもっと先に進む必要性を作者は訴えている。
本書の作者一人が担うわけではなかろうが、史実のブッダを求める旅はまだ始まったばかりである。神話のブッダとどこか知りつつも馴染んだブッダ像がある。いささか胸に去来するものがあるが、史実のブッダに近づきたい思いに嘘はつけない。
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