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書評;工藤吉生 第一歌集 「世界で一番すばらしい俺」

こんにちは、匤成です。今日は工藤吉生 第一歌集をご紹介します。工藤さんも「うたの日」に参加しておられました。タイトルはその時の歌から。

帯文の一番上にはこう要約されています。

校舎から飛び降り
車にはねられながらも
ぬらっと生きながらえる

印象的だと思いました。「ぬらっ」の意味は教えて下さらないようなので、ここでも訊きません。

短歌は自然界を詠う和歌のようなスタイルと、もう1つスタイルがあって、境涯詠(きょうがいえい)といいます。仕事のことや母・孫のこと等、作者の現実に起きていること、感じていることを詠うのです。

青春期

工藤さんの場合はその境涯詠です。

同級生部員のあなたがあまやかに息をはじめるこの胸の奥  「校舎・飛び降り」

学校の音楽部に所属していて、部の同級生が気になり出した瞬間の歌です。でもこの体験が工藤さんの人生を一変させます。数首、挟んでこうあります。

目が合ったあなたは去った軽蔑に致死量があることがわかった 「校舎,飛び降り」

私はいつだったか、ツイッターを初めて使った時に工藤さんを知り、それからよく歌を読ませて頂いています。

皮肉屋な所が私に似ているなぁと親近感が湧いたけど、この卑屈さはどこから来るんだろうと思っていました。今回この歌集を読んで初めてこんな事があったんだと知った次第です。

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