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短い夜を奪われないように
・眠れる人も眠れない人も、皆違わず夜を過ごしている。そして、それぞれがそれぞれの朝を迎える。ある人は午前4:00の青さを、ある人は午前7:00のアラームを、またある人は午前10:00の近隣の園児たちの声を、それぞれ「朝」という区切りにしていたり。そんなこともあるかもしれない。
・夏の夜は儚い。日照時間の長さのせいで、余計に短縮した夜は、どうしたって密度が濃くなる。10代の少年少女は、夏祭りや花火といったイベントを通して、なんとなく素敵な夜を意識し始めたりもするだろう。同時に、その刹那が永遠ではないことも知ったりして。
・夜通し、誰かと対話しているのが好きだった。深い話からなんてことない話まで。そして同じくらい、ひとりで歩きながら物思いに耽るのも、好きだった。何だか、夜というのはとても特別な時間に思えていた。誰にも触れられない聖域と言ったら言い過ぎかもしれないが、閉鎖的であり、同時に全て受け入れてくれるような。何処かバグったままの頭で突っ込んでいっても、自分らしくいて良いと思えるような。そんな曖昧が許されるような。
・「真夜中に書いた文章を翌朝読み返すと、恥ずかしくなる」という現象。まさにこの日記も、人によってはそうなのかもしれない。僕にはもう、とっくにその感覚がない。恥ずかしい奴なのかもしれない。それでも、ひとり微睡の手前で、ガムランを聴きながら、特別な空気が流れているような気分になり、文章をしたためているこの時間は、結構心地が良い。恥ずかしさの忘却で得られた境地なら、安いものだ。
・知らない場所のことを想う。瞼を閉じて、真っ先に目に入る暗闇と、少し経つとあらわれる白い砂嵐。気付くと意識は遠のいて、合図が出るまで僕たちは眠りの国の捕虜となる。そこは季節の外、この夜であってこの世ではない場所。すべての人に適合する酸素が、そこには必ずあるらしい。
・白い夜と黒い朝が混ざり合った世の果て、もしも周波数が合ったなら、そこで会って、話をしましょう。折角なので。なんたって短く儚い時間ですから。この夜というのは。「今度」なんてものも、訪れないかもしれませんしね。その方が美しいとさえ思ったりもしますし。
・おやすみ、さよなら、おはよう、おかえり。僕たちはこの繰り返し。6月が終わっていく。白夜、賽の河原、オーロラの空、終幕をみたんだ。
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