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男性脳、女性脳って本当にあるの?

今日は「男性脳」「女性脳」について、取り上げていきます。


「男性脳」「女性脳」ってなぁに?

簡単に説明すると、男性/女性による脳の違いです。
例えば、こんなことを聞いたことはありませんか?

・男性は地図を読むのが得意(空間認知能力がある)
・女性は共感力が高い
・数学は男性が得意
・女性はおしゃべりが好きな人が多い
・男性は競争を好む

上記の内容は、性別による脳の違いとしてエビデンス(根拠)が乏しいと言われています。


それなのに、なぜ、性別による脳の違いについてこんな風に言われているのか?


その根拠となっているのが、脳梁の差の研究結果です。

一般的に広まっている男性脳、女性脳の図


ですが、この脳梁の研究結果は約40年前に、14人(男性9人、女性5人)のデータにすぎず、現在ではこの研究結果を否定する研究も多くなっているそうです。



男女の脳の違いよりも、もっと重要なこと


厳密にいうと、男女の能力や思考に差はあるものの、それ以上に大きな影響を与える要因があります。


それは【個人差】です。


人間の脳をハッキリと「男性脳」「女性脳」と区別することはできず、男女どちらの特徴も入り混じっていると言われています。


確かに、その方が納得しませんか?地図を読むのが得意な女性だっているし、話すのが好きな男性だっている。数学が得意な女性もいれば、共感力の高い男性だっていますよね。


東京大学の四本裕子准教授はこのように警鐘を鳴らしています。

男性の脳と女性の脳には構造的な違いがあり、考え方や得意なことも異なる――。こうした「男性脳」「女性脳」に基づく主張に対して、科学的根拠に乏しく、性別役割分担を助長する恐れがある。

日経Xwoman ニューロセクシズムとは何か?「脳の男女差」に潜むわな



世界的に注意喚起される「神経神話」の一つである


2007年にOECDが脳科学的に根拠が曖昧なものを「神経神話」として注意喚起を行なっていて、その中に「男性脳、女性脳」が明記されています。


「右脳人間、左脳人間」「男性脳、女性脳」「睡眠学習」等の多くは科学的根拠に乏しく、最近では「神経神話(Neuromyth)」と呼ばれ注意喚起がなされている


脳のある部位は特定の精神的能力や行動傾向に対応するという単純な素人理解は、研究者たちの意図に反して生物学的決定論へと傾いていき、結果として犯罪者や精神障害者の差別・排斥等の重大な人権侵害が生じる可能性がある。

 こうした神経神話や似非脳科学が、意図的かつ大規模に、ゲーム、教育、製造物の販売などに利用されることのないよう、研究者側が正確かつ分かりやすい情報発信を行う必要がある。

文部科学省 科学技術・学術審議会(第28回)


「男性脳・女性脳」の考えが広まることの悪影響は、ジェンダーステレオタイプ(性別による思い込みや固定概念)を強め、社会や教育の場において差別や能力の差を生んでしまうことです。


性差で起きる脳の違い以上の差が、実際に男女の能力に大きく出てしまっているとしたら・・・?


例えば、日本の理系進学率の男女差。小中高の理数系科目の学力調査では、男子・女子のどちらも大差ないという結果が出ている。それなのに、学力に問題があるわけでもないのに、理系に進む女子が圧倒的に少ないのはなぜでしょうか?なぜ、日本の女子学生の理系進学率は、OECD諸国の中で最下位なのでしょうか?


「女の子なら、文系の方が向いてるんじゃない?」「女は理系、苦手でしょ」そんな男性脳・女性脳の影響が、能力の差を生んでしまっているとしたら?それって、すごく不当なことだと、私は思います。しかも、神経神話だと言われているような曖昧なモノに、未来の可能性を狭められてしまうなんて。


男女である前に、ひとりの「人」として


脳科学でみても、男女の性差よりも個人差の方が大きな差を生むと分かっています。

「男だから、〜だよね」「女だから、〜でしょ」と決めつけたり判断するのではなく、目の前にいる人をひとりの「人」として捉え、尊重することが大事ではないでしょうか。


私はたくさんのママたちの相談を聞かせて頂いていますが、そこでも男性脳・女性脳にとらわれている(苦しんでいる)方がいます。


・自分の共感力がないから、母親として失格だ
・決断力のない夫に、イライラする
・男の子なのに、算数も体育もできず心配だ
・女の子なのに、落ち着きがなく不安だ 


などなど…。共感するのが苦手なママが失格な訳はないし、決断するのが苦手な夫だっているし、男の子だから・女の子だから〜できないとおかしい、ということも、ないはずです。苦手なことも得意なことも、どちらもあっていいのに、男女というフィルターがかかると、ひとりの「人」として見るよりも、視野が狭くなり自分や相手の良さを見つけづらくなるように感じます。


一度、男女というフィルターを外し、その人そのものを見てみる。コミュニケーションをとってみる。それが、これからの多様性の社会において、とても大切なことだと思います。

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