古尾らいと

東京都在住。日中のカフェインで夜眠れなくなる業を背負った40代。それでも喫茶店を愛して…

古尾らいと

東京都在住。日中のカフェインで夜眠れなくなる業を背負った40代。それでも喫茶店を愛してる。書類管理の仕事をしつつ随筆を書く。大河ドラマは『海上自衛隊で金曜日に食べるカレー』のようなものとして位置付け大体毎年見てる。ぬいぐるみと喋る。

最近の記事

  • 固定された記事

我が痔との闘争

あれは12才の時です。 風呂に入っている時、肛門付近に心当たりのない突起があることに気がつきました。 それが我が痔との闘争のはじまりだったのです。 それまで大きな怪我も病気もなく、ピンチといえばハイハイしていた頃に掘りごたつに落ちてしばし行方不明になった位のことですくすくと育ってきました。 思春期の入り口であり、中学受験と反抗期のコラボを絶賛繰り広げていた私は親に痔のことなど相談できるはずもなく一人胸に抱えて生きることを選びました。 親に打ち明けたのは実にこの

    • 『阿佐ヶ谷姉妹ののほほんふたり暮らし』/阿佐ヶ谷姉妹(幻冬舎)【ブックレビュー】

      いつも手作りおかずをくれるお煎餅屋さんに、姉・渡辺江里子が地方のお土産を持って行くとこうである。 嫁いだ娘が里帰りすると来た時の手土産の倍も食べ物を持たせる、なんて話は聞くけど『ドアノブをおばさんに回してもらって』とは!圧巻のお裾分けの量が目に浮かぶ。 特にこちらの餃子は、美食を味わいつくした名だたる芸能人をして「今まで食べた餃子で一番うまい!」と言わしめる逸品。読者の私はこの餃子やシチューやコロッケを貰うわけにはいかないが、その料理上手すぎるお煎餅屋さんの手作り煎餅や赤

      • 風邪と仏壇。

        仏壇の中というのは何故あんなにも独特の籠った匂いがするのか。 そして、そんな中に何故年寄りは物を仕舞うのか。 ドラッグストアの棚にはアセトアミノフェン系の解熱剤が充分な数揃っているようだった。ニュースによると新型コロナウイルスの第7波が急拡大しているために、解熱・鎮痛剤のカロナールが不足しつつあるらしい。私はロキソニンが飲めない体質なので、これだけ店頭在庫があるなら一つ買っておこうと小さい箱を手に取ってレジに並んだ。 子どもの頃風邪をひくといつも祖母が居間にある金茶

        • 帰り道という小さな旅。

          私は住まいの立地についてはかなり恵まれている。 コンパクトなのに心憎い品ぞろえをする愛しいスーパーから10分ほどで家についてしまう。 その短い旅の間にもいろいろと見どころがあるものだ。 まず出会う『美容室すみれ』。テント看板がすみれ色だ。 この色がここにあってくれるだけで小さく幸せにしてくれる。 『すみれの花咲く頃』を口ずさみたくなる、なぜかわくわくと胸をかき立ててくる色だ。 窓から見える“お釜ドライヤー”は遠い日の祖母に連れられて行った昭和のパーマ屋さんを思わせる。 年配

        • 固定された記事

        我が痔との闘争

          ひこうき雲/荒井由実

          ユーミンの『ひこうき雲』という曲を知ったのは2013年の映画「風立ちぬ」公開時だった。 歌詞が映画の内容にかなりフィットしていたのに、どうにも高校の時に亡くなった友人のことが浮かんで仕方がなかった。 弓道部で一緒だった男子が高2の夏休み明けに急死してしまった。 その時の自分と周囲の人々に走った衝撃と、もはや怒りに近い強い悲しみ、それぞれが抱えた心模様はどう言葉に尽くしても表現しきれない気がする。 彼のお父様が部活の顧問と部員宛に手紙を下さって「お坊さんに戒名をつけていただ

          ひこうき雲/荒井由実

          ある正月の兄

          正月の2日の夜に祖母の実家に家族でお邪魔するのは我が家の恒例行事である。 掘りごたつの横に座卓が置かれた8畳の和室には酒飲みが集合し、隣の6畳のダイニングキッチンのテーブルには女性達を中心とした酒を飲まないメンバーが集まって手作りチーズケーキ等を楽しむのが定番の配置だ。 私は和室である程度日本酒や柿の葉寿司味わってからダイニングキッチンに移動して甘いものや紅茶も頂戴するというハイブリッドな戦略をとっている。 築50年近い古い家の暗く冷たい廊下からこの明るい二間の空間に入る

          ある正月の兄

          何度でも。

          もともとnoteに苦手意識があったところにアカウントを作り直すのはさすがに心が折れるかと思った。 私の入力ミス(ほか)のためなのだが、運営さんのメールで「この(旧)アカウントはご放念ください」というフレーズを読んだ時は『ご放念』がトラウマワードになると予感した。 恥ずかしい話ビジネス用語に疎く『放念』という言葉を初めてみたので、文脈から意味はなんとなく理解したものの仏教用語に見えた。 “気がかりな事を忘れて心にとめないこと。放神。休神。” (はじめて知る言葉がいっぱい

          何度でも。