聖人と美術・四大福音書記者
さて、年末年始のバタバタでしばらく期間が開いてしまいました。自主学習のために細々と続けているシリーズ「聖人と美術」、今回は四大福音書記者の方々です。ノルウェーのことに興味を持ってくださってる方、ゴメンナサイ。ノルウェーには関係ない記事です・・。
キリスト教で「聖書」と言えば、「旧約聖書」と「新約聖書」の2種類があります。旧約聖書はざっくり言ってユダヤ人の神話・伝説的歴史などを扱った書(天地創造とかアダムとイブのお話なんかはここから)、新約聖書はイエス・キリストの事績・生涯、その教え、また弟子である使徒の神学的な見解などを記した27の書をまとめた呼び名です(理解に不足があったらごめんなさい。そもそもざっくりしすぎですね。)
新約聖書の中でイエスの生涯を描いた4つの書は「福音書」と呼ばれており、それぞれ「聖(使徒)マタイ」「聖マルコ」「聖ルカ」「聖(使徒)ヨハネ」が筆者とされています。このうち、マタイとヨハネは伝統的にイエスの直弟子・十二使徒のマタイ、ヨハネと同一視されています。この四人の聖人は「福音書記者」(Evangelist、エヴァンゲリスト)の称号を持ち、個別に、または4人一緒にキリスト教美術の作品にたびたび登場します。
この四人が福音記者としての立場で美術作品に登場するときには、執筆によってキリスト教に貢献した聖人の一般的なアトリビュート(持物)である本や巻物、ペンなどを手にしているほか、それぞれの福音記者としてのアトリビュートを伴っています。そのアトリビュートとは
聖マタイ・・・人/天使
聖マルコ・・・ライオン
聖ルカ ・・・牛
聖ヨハネ・・・ワシ
です。旧約聖書と新約聖書にそれぞれ人、ライオン、牛、ワシの顔をした「翼をもった4つの「天使的存在」」についての描写があり、それが後に四大福音記者と結び付けられたとのことです。4人の聖人がいて天使、ライオン、牛、ワシが寄り添っていれば、四大福音書記者を現した作品とみてほぼ間違いないでしょう。
ところで四大福音書記者の一人、聖ルカは聖母子の肖像画を描いたという伝説があり、この肖像画が「イコン」とよばれる宗教画の始まりと言われています。イコンについてはまた別の回で書きますね。
この肖像画伝説により、聖ルカは画家、彫刻家などの「芸術家」の守護聖人とされています。中世の職業組合で「聖ルカ組合」と言えば画家や彫刻家などの組合と相場が決まっていたそうですよ。
ではオリジナルの作品群をお楽しみください(Wikimediaに飛びます)。
「四大福音書記者」ピーテル・パウル・ルーベンス
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Peter_Paul_Rubens_-_The_four_Evangelists_(1614).jpg?uselang=ja
「聖母子を描く聖ルカ」マールテン・ファン・ヘームスケルク
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:De_heilige_Lucas_schildert_de_Madonna_-_Maarten_van_Heemskerck-1532.JPG
聖マルコ・「アンヌ・ド・ブルターニュの時祷書」より
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Grandes_Heures_Anne_de_Bretagne_Saint_Marc.jpg?uselang=ja
聖マルコ・「ニュルンベルク年代記」より
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Nuremberg_chronicles_f_104r_1.png?uselang=ja
聖マルコ・アメリカ議会図書館所蔵の時祷書
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Evangelist-with-lion.jpg?uselang=ja