「定義から見た観光まちづくり研究の現状と課題」を読んでみた
観光まちづくりとよく言いますがが、説明してみろと言われると、「え…、あれ、迷うなぁ〜、観光なの?まちづくりなの?どっちが目的で成果なの?」と、松浦亜弥の歌詞並みにあやふやしている。(わからない人は「ね〜え?」で検索。)
これはいかん、と、泥縄式で検索してヒットしたのが本論文。阪南大学森重教授の論文。作成年が2015年と少し古いですが、私が抱いた疑問を解説してくれる。
話は少し逸れますが、自分で問いを立て調べるとあれこれと興味が湧いて問いが拡散し、何が先行研究かわからなくなり指導教官に泣きつく、というのは社会人院生あるあるかと。他人からお題をいただくとブレない。だから先行研究探索がしやすいと実感しています。
本論文を私の理解で超要約すると・・・、
観光まちづくりは観光振興とまちづくりのどちらをめざしているのか、何を評価すればよいのかについて検討されてなかった。
そのため、「観光・交流」の内容やあり方が、十分に議論されていない。
なので、先行研究から定義や考え方を分析し、観光まちづくりが求められる背景などを整理し、あり方や評価の必要性を考察する。
観光まちづくりとは?
先行研究の整理から「地域社会が主体となって、地域のあらゆる資源を活用し、交流を促進することで、まちの魅力や活力を高める活動」と本論文では定義づけています。
これは、バブル期にリゾート開発等で地域外の資本が開発したものの撤退して寂れちゃった経験から、まちの発展を他者に任せて荒れると地域が負担しないかんので、まちづくりは地元が中心となるべしということかと。ただ、「観光まちづくり」が単なる「まちづくり」と異なる点は、地域資源を使って交流を促進する(=観光)手法を使う点ということでしょう。
観光まちづくりの背景と目的は?
観光まちづくりの背景は、人口減少や高齢化、基幹産業の衰退といった地域社会の疲弊があるとのことです。人口が増えれば産業も増えまちはつくられている。人が減ると「まちさびれ」が始まるから、わざわざ「まちづくりしよう!」なんて気合い入れなきゃいかんのでしょうね。
観光まちづくりの目的は、観光まちづくりにより交流を促進し地域社会の内発力(地域における縁、つながり、協働ソーシャル・キャピタル)を高めてまちの魅力や活力を高めることなんでしょう。少し論文を読んだ私の意訳が入ってますが。交流によってまちづくりの参加者を増やして魅力や価値を高めよう、ということでしょうね。今でいう関係人口と近い考え方のようです。
観光まちづくりをどう評価する?
観光まちづくりの評価は、観光振興とまちづくりの2つの視点があり、従来、観光振興の評価項目はあるものの、まちづくりの評価項目がないと指摘してます。
なぜかといえば、まちづくりは「地域の人が行う」発想が基本なので「外部との交流」の発想がないから、とのこと。そして、外部との交流は数字にすることが難しいので、活動の結果求める成果を評価(アウトカム指標)するのではなく、活動が続いていると言うことは評価されているということなので活動量・回数などを評価(アウトプット指標)することを一つの案として提案しています。
まとめ
本論文のおかげで、観光まちづくりという言葉で大混乱していた頭の中が、かなり整理されました。ありがたし。
余談ですが、評価部分を読んでいて気づいたのですが、アウトプット指標を評価する場合、評価側は成果である「頑張り」から目標の「進展度」を読み取って評価する必要がある。内容がわからないので実施側の主張が強くなり、色々と調べる必要があり面倒。一方、アウトカム指標なら「やれてるかやれてないか」「俺か俺以外か」、なので評価は楽。だからなんでもかんでもアウトカム時代になったのではないかと。
高度経済成長期のように「人口が増える⇒資源が増加する⇒活動量を増やせば資源増分を確保できる」なら成果主義も良いですよ。人口減少期では「人口が減る⇒資源が減少する⇒すごい発想で新天地を開拓して資源増を確保するorゼロサムゲームで資源増分を収奪する」しかない。
評価側の方が立場が強いことが多く、評価しやすさからアウトカム指標だらけになると、簡単には達成できないので、もっとやれもっとやれと仕事が増えて、結果、担当者(若者)が潰れる。これが、失われた◯十年の要因ではないかと思う。
最後は愚痴になって話が思い切り逸れてしまいました。本論文にご興味のある方は以下で。
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