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「観光客数と人口規模に関係はあるのか?」という問いの論文を読む。

趣味の歴史も長いことやっていると話をする機会をいただくことがあります。
その際、付け焼き刃で論文を読んでお守り代わりにすることが多いのですが、「これは面白い!」という内容に出会うこともあるため、備忘録的に感想を書いてこうと思い立つ。

今回は、2016年に日本国際観光学会論文集23巻に掲載された「観光客数と人口規模の関係〜宿泊客数を対象に」という論文で、公財日本交通公社の山田雄一氏と柿島あかね氏の著作です。

増田レポートを受けた地方創生の流れで観光は人口縮小社会への有力な振興策として捉えられており、観光庁では2009年に宿泊者22人で定住人口1人分の経済効果が生まれる(?!)と試算しているとか。(どうやって試算したのか興味があるので、またの機会でどこかで調べて感想書こう。)
この点について、本論文では「定住人口と観光客数には関係がないのか?」との疑問から、①人口と観光客数②人口と観光客数増減③人口増減と観光客数増減の3点について検証しよう、という内容です。

で、各市町村のデータ分析を行なった結果、
人口が多いと観光客数は多い
人口が多いと観光客数を増やしやすい
観光客数の多い地域では人口が増減すると観光客も増減するが、観光客数の少ない地域では人口が増減しても観光客の増減には影響がない
となったそうです。

本論文では、昼間人口が減少する中で人泊数を増大できた市町村は、研究対象市町村の5.7%(9市町村)にすぎないため、「人口が少ない、または、減少傾向にある地域において、短期的な取り組みによって観光客数(人泊数)を増やすことの難しさを示している。」と述べている。
なお本論文の研究は、データ分析であり因果関係は明らかでなく、人口減少、人泊数の減少の理由は地域によって状況が異なると考えられず、データ結果のみで「人口減少地域において観光振興が有効なのか否かという判断は出来ない」と言及し、「地域振興の手段として観光を無批判に選択するのではなく、地域の人口や産業構造などをふまえた検討を進めていく一助となることを期待したい。
と締めている。

ちなみに、この論文を読みながら高校生の娘に「人口と観光客って関係性あると思う?」と聞くと「あると思う。」と答える。「なんで?」と聞くと、「人口が多いと交通機関が発達してるし、商業が発展してるから。」とゲームをしながら父の方を見向きもせず即答

確かに観光客を増やそうにも受け入れキャパが小さく、受け入れキャパを増やすには事業者が必要。でも、事業者は需要がなければ生まれない。逆にバズったりして観光客が増大した場合、オーバーツーリズムで地元が悲鳴を上げる。この図式って、人口=産業規模と受け入れキャパが関係しているから、と、考えると、今回の論文ってそれを補強してくれるものだ、と、思う。

興味のある方は、以下のページで論文が読めます。(PDFをダウンロード)

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