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竹内まりや『REQUEST』 (1987)

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前作『VARIETY』より3年ぶりのリリースとなる、竹内まりや7枚目のアルバム。全曲まりやさんの作詞・作曲、山下達郎の編曲による全10曲。ここまでの数年間で他の歌手へ提供した楽曲や、自身のシングルや映画の主題歌などを含んでいて、結果的に名曲がズラリと並ぶアルバムとなりました。前作から3年というスタンスも、余裕ある音作りにつながっていて、楽曲の素晴らしさはもちろん、サウンド面でも大変充実した内容のアルバムに仕上がっていると思います。

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1. 恋の嵐
アルバムのトップを飾るのは前年にリリースされたシングル曲「恋の嵐」。アカペラ・コーラスから始まり、♪ふと触れた ゆびさきに〜 と歌い出すまりやさん。60年代の良きアメリカン・ポップの香りをふんだんに漂わせたR&B〜ポップ・バラード。達郎さんとまりやさん、その両方の魅力が見事なまでにブレンドされた名曲。間奏のサックス・ソロもいいですね。

2. OH NO, OH YES!
中森明菜『CRIMSON』('86)への提供曲。明菜ちゃんの陰のあるボーカルと比べると、こちらは少し明るい感じに響きます。この後に登場する「駅」もそうですが、そういった聴き比べができるのが楽しいですね。この曲のサビが大好きなのですが、英語サビのラスト ♪〜hold me tight のさりげない終り方が特にツボです。

3. けんかをやめて
河合奈保子への提供曲で、82年のシングル・ヒット。ピアノの弾き語りで歌う奈保子さんの姿が印象的でした。歌詞をよくよく聴いていくと、当時アイドルとして人気があった彼女に何てこと歌わせるんだ!といった感じのとんでもない内容なのですが、曲はホント秀逸なメロディーで素晴らしんですよね。このアルバムは全編達郎氏のアレンジですが、このストリング・アレンジは服部克久氏によるもので、これがまた素晴らしいんですよね。

4. 消息
このアルバムは他の女性歌手への提供曲のセルフ・カバーや自身のシングル曲などで構成されていますが、この「消息」は唯一アルバムのための書下ろし曲。80年代らしいキャッチ―なミディアム・ポップ。アレンジもとても耳馴染みのいい、心地よいものです。この曲のメロディーや歌いまわしを聴いていると、曲のあちこちに達郎っぽさを感じるのですが、このあたりさすがご夫婦ですね。

5. 元気を出して
薬師丸ひろ子『古今集』('84)提供曲。何を隠そう、当時から薬師丸ひろ子さんのファンであった私ですので、この『古今集』自体もかなり愛聴盤で、その1曲目に収録されていたこの「元気を出して」は当時からとりわけ印象深いナンバーでした。優しいメロディーに乗せて、♪人生はあなたが思うほど悪くない  と歌われるシンプルな歌詞 がいいですね。そんな思い入れのある一曲で、作者のまりやさんが歌うバージョンもさすがに良いなぁ・・・なんて思いながら聴いていると、曲の後半、奇跡のような瞬間が・・・!ひろ子さん自身がコーラスで参加。このコーラスがまためちゃめちゃ素晴らしくて、初めて聴いた時は鳥肌が立ちました。

6. 駅
LPではここからがB面ということになります。「OH NO, OH YES!」に続いて、中森明菜のアルバム『CRIMSON』('86)への提供曲。ですが、この曲に関しては、その後このセルフ・カバーによって、まりやさん自身の代表曲の一つになるほどの楽曲となりましたね。間違いなく名バラード。そして、この名曲に花添えるストリングス・アレンジは「けんかをやめて」に続いて服部克久氏によるもの。

7. テコのテーマ
アニメ映画『時空の旅人』の主題歌および挿入歌をまりやさんが担当。テコというのは、このアニメの主人公のニックネームで、この曲はエンディングで流れた曲なのだそう。すべて英語で歌われる歌詞が印象的な、ミディアム・ポップ・ナンバー。実はそのアニメをちゃんと見たことがなくて、普通にアルバムに収録された良質ポップスという聴き方になってしまうのですが、アニメの映像とともに流れてくるのを聴いたら、また違った聞こえ方をしてくるんだろうなぁと思います。

8. 色・ホワイトブレンド
中山美穂への提供曲で、86年のシングル・ヒット。一度聞けばすぐに覚えられるような最高にキャッチ―なサビで始まるナンバーです。キュートなアイドル・ポップですが、まりやさんの安定感のあるボーカルで聴くのもまたいいですね。間奏のサックス・ソロがこれまたいい感じですが、やはり80sポップスとサックスのソロって相性が抜群なんですよね。

9. 夢の続き
これは『ハワイアン・ドリーム』という映画の主題歌。このアルバムで一番軽快でアップテンポなナンバーとなっています。曲の後半で、達郎氏のコーラス・ワークの独壇場みたいな感じになるのも面白いですね。

10. 時空(とき)の旅人
アルバムの最後を飾るのは、アニメ映画『時空の旅人』主題歌。「テコのテーマ」に続いて、こちらも全て英語詞となっています。この名バラードに花を添えるのは北島健二によるギター・ソロ。名曲揃いのこのアルバムのラストにふさわしい楽曲だと思います。

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1987年というと、LP時代からCD時代へと音楽界が大きく動いていた時期。そんな時代にリリースされたこのアルバムは、レコードでも所有したい気持ちにいつも駆られます。CDもその後何度かリイシュー(リマスター)されているのですが、我が家ではこの87年の初回盤CDが今も現役でがんばっています。なんか時代の空気も一緒にそこにパッケージされている感じがして好きなんですよね。

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