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広島忌 * チェンマイ俳句毎日

【チェンマイ俳句毎日】2024年8月6日

コロナの3、4年前。待望の日本旅行を実現させたタイ人の友人と一緒に、広島を訪れた時のことだ。

とても天気の良い日で、バスセンターでわらび餅を買って平和公園のベンチで食べた。友人はその味をすこぶる気に入って、帰りにもまた買っていた。今でも時々、あの時のわらび餅はおいしかったと話題に出ることがある。

そういえば、わらび餅のお金を払う時、小さなハプニングが起きた。
私の財布から、金色の紐を結んだ五円玉が飛び出して、商品棚の下に入り込んでしまったのだ。その五円玉は、叔母が財布をプレゼントしてくれた時に、紐を結わえてお守りとして入れてくれたもので、私にとって大切な五円玉だった。
私の慌てた様子を見ていたお店の人が、レジの中から別の五円玉をひとつくれた。今ではそれが私のお守りとして財布の中に治まっている。

原爆資料館を出た後は、街中を走る路面電車の中で、私たちはそれぞれ静かに窓の風景を眺めた。

車掌さんが切符の点検に来た。二十歳そこそこの痩せた若者なのに、斜め掛けした大きながま口の黒い革の鞄がレトロなデザインのままなのが、昭和の昔と繋がっているようでおもしろい。電車はカーブに差し掛かるとぐわんと大きくうねった。


がま口の車掌の鞄ヒロシマ忌

敬礼の白い手袋広島忌

稲穂垂る五円硬貨に結ぶ糸


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