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オタク司書が『崩壊:スターレイル』の模擬宇宙の祝福元ネタを考察してみた①愉悦の祝福編

こんばんは、古河なつみです。
今回は己の持つ司書の力を悪用して有用に使って『崩壊:スターレイル』に登場する小説等々のパロディの元ネタを考察していこうと思います。

『崩壊:スターレイル』はスマートフォンやPC、PS5でプレイできるSFローグライクRPGです。このゲームの中のコンテンツに「模擬宇宙」というものがあり、ステージを進むほど異様にボスが強くなる代わりに「祝福」というバフをたくさん集めて(運が良ければ)無双ができる仕組みになっています。

そしてそれぞれの「祝福」の名前が「時計仕掛けのリンゴ」等どこかで聞いた事があるような……?という名前をしているのでその元ネタを考察をしていきたいと思います。

とはいえこの「祝福」の元ネタ探しは私一人では難しかったので、友人のAomiyoさんにお手伝いをしていただきました。

「初めまして、Aomiyoと申します。なつみさんとは付き合いが長いのですが、一生懸命本の良さを布教しようと頑張っている事を知っていたので、このような企画に誘っていただけて光栄です。模擬宇宙難易度Ⅴの蟲に負ける度、ナヌーク様もこの蟲への憎悪で星神になっちまったのか……わかりみ……という気持ちになっています。どうぞよろしくお願いいたします」

Aomiyoさんからのメッセージ

不穏な一文が混じっていますが、本当に頼りになる友人です。
サポートにサンポ・コースキさんを筆頭に置くという変わり者プレイをしている子なのですが、Aomiyoさんのサンポは雑に強くて普通に怖いです。

それでは以下に元ネタが推測できた「愉悦の祝福」をご紹介します。



ほぼ100%特定できた「愉悦の祝福」元ネタ小説リスト

落とし穴と振り子:Pit and Pendulum
→『落とし穴と振り子』エドガー・アラン・ポー
※短編なのでポーの短編集に含まれていました。

四番屠畜場・皆眠りて:Slaughterhouse No. 4: Rest in Peace
→『スローターハウス5』『人みな眠りて』カート・ヴォネガット

自動ハーモニカ・茫々たる白夜: Auto-Harmonica: Whitest Night
→『プレイヤーピアノ』『母なる夜』カート・ヴォネガット
虚無の祝福に「白夜(White night)ドストエフスキー」があったので「なぜ白い夜が二つも!?」と混乱しましたが一緒に繋がっているのが「自動ハーモニカ(プレイヤーピアノ)」なら、同じヴォネガットの短編では?と知っているものを二人で話し合った結果『母なる夜』の事でしょう、という結論になりました。

チャンピオンのディナー・猫のゆりかご:Champion's Dinner: Cat's Cradle
→『チャンピオンたちの朝食』『猫のゆりかご』カート・ヴォネガット

流れよ汝が涙:Just Keep on Crying!
→『流れよわが涙、と警官は言った』フィリップ・K・ディック

リルタ重力の虹:Aiden Gravitational Rainbow
→『重力の虹』トマス・ピンチョン
「リルタ」はスターレイルの世界に出てくる天才クラブに所属する人物。その名前が物質の単位の一つとして使われるくらい科学に貢献したキャラクターという設定です。

ほとんど有害:Mostly Harmful
→『ほとんど無害』ダグラス・アダムス
「銀河ヒッチハイクシリーズ」の最終巻なのでチェックする時はご注意くださいね!

灯台へ戻ろう:Back to the Lighthouse
→『灯台へ』ヴァージニア・ウルフ

時計仕掛けのリンゴ:Clockwork Apple
→『時計仕掛けのオレンジ』アントニイ・バージェス

仄暗い炎:Pale Fire
→『青白い炎』ナボコフ

白金時代:Platinum Age
→『黄金時代』ミハル・アイヴァス
 『黄金時代』ケネス・グレアム
 『黄金時代』ホセ・マルティ
 『黄金時代』アン・ホイ監督の映画

Aomiyo「突然の4択問題ですね」
古河「白銀時代そのままじゃなさそうだから「黄金時代」だと思ったんですけど……まさか軽く検索しただけでも4作品出てきてしまうとは……」
Aomiyo「今までの特定済みリストから察するに、この祝福パロディはSF、ホラー、不条理、奇想、戦争ジャンルから出てきている事が多いので、一番疑わしいのは……」
古河「ミハル・アイヴァス『黄金時代』でしょうか……?」
Aomiyo「他の作品は健全ですからね。ミハル・アイヴァスだけ「本が増殖する」とか言ってるので内容が尖ってるように思います」
古河「当企画の結論はミハル・アイヴァスの『黄金時代』で!」

「白金時代」元ネタ考察時の会話



ほぼ100%特定できた「愉悦の祝福」元ネタ映画リスト

サスペンス:Suspiria
→「サスペリア」ダリオ・アルジェント監督
ゴシックホラーなので閲覧ご注意くださいませ。

十二のサルと怒れる男:12 Monkeys and Angry Men
→「12人の怒れる男」シドニー・ルメット監督

燃ゆる男の肖像:Portrait of A Man On Fire
→「燃ゆる女の肖像」セリーヌ・シアマ監督

医者の異常な愛情:Doctor of Love
→「博士の異常な愛情」スタンリー・キューブリック監督

キャッチ=21:Twenty-First Military Rule
→「キャッチ=22」マイク・ニコルズ監督

汚されたアホウドリ:The Painted Albatross
→「異端の鳥」ヴァーツラフ・マルホウル監督


ここまでが比較的さらっと分かった「愉悦の祝福」元ネタです。
何らかの間違いがあるかもしれませんが、ほぼこれです、と言い切れるくらいの特定はここまでになります。


ここから難航!?邦訳が見つけられなかった元ネタ小説リスト


すべて真夜中:Unending Night
→「An Unending Night.: A short horror story」 Harish Mane 
ハリシュ・マネさん、という作家さんのホラー小説短編集が祝福と似たタイトルをしていました。

砂時計の幼稚園:The Hourglass Kindergarten
→「The Hourglass Garden」James Weathers
ジェームズ・ウェザーズさん、という作家さんの小説が「砂時計の庭園」という意味のタイトルだったのでパロディ元ではないかと考えました。


そんなことある?と司書と友人が首を傾げた元ネタリスト

もう一本:Instant Win
→当選結果がその場でわかるくじ形式キャンペーンを表す単語

古河「なかなか見つかりませんね……」
Aomiyo「Amazonだとチェス必勝法の謎本しか出てこないですね」
古河「レビューの星の数を考えると、スタッフさんが読んでいるとは考え難いのでこれは除外でいいですよね」
Aomiyo「はい。そもそも「Instant Win」が何で「もう一本」って訳されてるんでしょう?直訳したら「簡単な勝ち」って事なのにどこから「一本」なんてワードが入ってくるのか……」
古河「ガリガリ君の「当たりが出たらもう一本!」みたいな感じ?」
Aomiyo「わかりました。なつみさん大正解です。海外の辞書から引っ張りましたが「Instant Win」はまさしく「その場で当選がわかるくじ形式のキャンペーン」を指す単語のようです」
古河「書名でも映画タイトルでもないなんて……ありえますかね?」
Aomiyo「実は他にもとあるゲームの機能に関連してそうな謎の祝福があるので可能性はゼロじゃないと思います」

「もう一本」の元ネタ考察時の会話

苗木が育つ踊り:Dance of Growth
→「マインクラフト」というゲームのMod(拡張機能)の一つで、踊るとゲーム内の作物を成長させることができる。

古河「これ全然わからないんですよ。英語もすごい簡単な単語の組み合わせのせいでノイズが酷くて……「成長ダンス」みたいな意味なのにどこから「苗木」が出てきたんでしょう?」
Aomiyo「これは私もノーヒントだったら分かりませんでしたが、幸いにもマインクラフト好きのVtuberさんの配信を見ていたので分かりました」
古河「マインクラフト……ものすごい建築ができるレゴみたいな感じのゲームですよね?」
Aomiyo「ブロックの組み合わせという意味では確かにレゴ……???脱線しましたが、このマインクラフトのゲームには「Mod」と呼ばれる拡張パックみたいなものが存在しています」
古河「いろんな機能が付け加えられるってことですね」
Aomiyo「その中にズバリ「Dance of Growth」という踊る事で作物を育てられる機能を備えたModがあるので日本語訳とも一致しています」

「苗木が育つ踊り」考察時の会話

氷の棺とモルモット:Guinea Pig in Ice Coffin
→カロリーやエネルギーについて発見したアントワーヌ・ラヴォアジエの行ったモルモットをきんきんに冷やす実験のことを「モルモットの氷の棺」と呼ぶらしい……?

~一時間くらいの大捜索の末~
古河「わかんない! なんにも手がかりがつかめない!」
Aomiyo「これは……迷宮入りかもしれない……」
古河「砂時計の幼稚園、みたいに余計な単語が入り込んでるのかな、と思って一部分ずつ削っても「Ice Coffin」が「Ice Coffee」のもじりかなと思って検索してもひたすら聖闘士星矢の「フリージングコフィン」のピクシブ百科事典が乱入してきます!」
Aomiyo「氷の棺とモルモット……ここまで特徴的なのに全く挙がってこないとなると書名でも映画名でもない可能性が濃厚ですね」
古河「中国語に再翻訳させても何も引っ掛からないから、知ってる人には分かるようになっているんでしょうけど……」
Aomiyo「あとは接続詞が違うとか……あれ?「Ice」を「Fire」にして検索しましたっけ?」
古河「あっ、やってないと思います!」
Aomiyo「一発で出ましたね。〈モルモットの氷の棺〉ですって……」
古河「なんで「Fire」で出てくるんですか~~!?」
Aomiyo「質量保存の法則の発見者、アントワーヌ・ラヴォアジエさんが「生物の呼吸と火が燃えるしくみって同じじゃね?」と思ってモルモットをきんきんに冷やして呼吸の仕組みを解明した時の実験をこう呼ぶことがあるみたいですね……これによってカロリーとかエネルギーという存在が知られるようになったみたいです」
古河「モルモット気の毒ですね……」
※海外の科学ライターさんの解説記事によればこのモルモットは死なずに済んだらしいです

「氷の棺とモルモット」考察時の会話

アンコウの味:The Taste of Anglerfish
→【仮結論】ホラーゲーム「Anglerfish」のこと?

古河「……」
Aomiyo「食レポ記事のノイズが多すぎる件」
古河「海外の方はやっぱりアンコウの味ってどんな感じかなって気になりますよね……私も食べた事ないから知りたいです」
Aomiyo「ロブスターみたいなんだって(英語記事の食レポ抜粋)」
古河「ロブスターもおそらく一生口にできないです……」
Aomiyo「一応ホラーゲームで「Anglerfish」っていうのがあって、レストランに主人公が閉じ込められてしまうようなのでまぁ「Taste」の部分も関係しているような気もしますが……」
古河「最終的に化け物を料理して食べちゃうとか、逆に食べられちゃうというオチであればこのゲームが元ネタという気もしますが……さすがに結末はプレイしてみないとわからないですね」
Aomiyo「さっきまで『安愚楽鍋』のもじり?とか議論してた時よりはかなりいい線行ってると思います」
古河「では、このnoteでの仮結論はホラーゲームが由来とします」

「アンコウの味」考察時の会話

終末の狂宴: Doomsday Carnival
→【仮結論】『ドゥームズデイ』ニール・マーシャル監督?

古河「結論は映画の『ドゥームズデイ』ですね」
Aomiyo「ただ、なんでわざわざ「Carnival」が付けられているのか判然としませんでした」
古河「「終末」を「週末」にしたり、「狂宴」を「饗宴」「共演」「競演」「供宴」に読み替えたり、「Doomsday」を「Armageddon」に読み替えたり色々やりましたが、しっくりくるのが普通にこの映画と言う結果なので、仮結論となります」
Aomiyo「キリスト教の有名なエピソードである「最後の晩餐」も疑いはしましたけど……」
古河「グローバル展開している大型ゲームが宗教を取り扱うかな?という点で候補からは除きました」
Aomiyo「補足ですが『ドゥームズデイ』は中国語で『末日崩塌』といった表現になるようで、それを日本語に再翻訳すると「ドゥームズデイ・コラプス」という謎のカタカナ語で返ってきました」
古河「コラプスは「collapse」という英単語で崩壊する、衰弱する、といった意味があるのでもしかすると反対の意味になる元気いっぱいの「carnival」に置き換えたのかもしれないですね」
Aomiyo「全然確証が持てませんが、一応の結論です」

「終末の狂宴」考察時の会話


素行満点:Exemplary Conduct
→【ギブアップ!】『Wayward』チャック・ウェンディグ

古河「うーん、「素行不良」の字面を逆さまにして「素行満点」になってると思うんだけどな~」
Aomiyo「一応英語表現で「Wayward conduct」を素行不良と訳す場合がある所までは来ましたが、まぁ候補が少ないこと!」
古河「お話の内容から考えるとチャック・ウェンディグの『Wayward』が近いでしょうか? 幽霊が出てくる不思議なお話のようですし」
Aomiyo「登場人物にブラックスワンさんがいるらしいので普通に気になりますよね。すごい評価が高いみたいだし。邦訳はまだのようですが、他の作品でチャン・ウェンディグさんの作品は日本に紹介されているものがあるのでそのうち読めるようになるかもですね」

「素行満点」考察時の会話


愉悦の祝福についての元ネタ考察は以上になります!
海外ゲームや映画、SCP関連の情報が私達では手薄なので、もしも「これは違うんじゃないかな?」「もしかしてこれでは?」という情報がございましたらコメント欄で教えていただけると嬉しいです!

Aomiyoさんと崩壊スターレイルの元ネタを考察していく企画は今後不定期に新しい記事を上げられると思いますので、また見かけてくださったときは、どうぞよろしくお願いいたします。

古河なつみ&Aomiyo

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