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【ネタ供養】死神さんのおしごと

以前試しに書いてみた文字プロットです。
普段はこんな風に書きません。
自分にはこのプロットの書き方は向いていなかったので、もう書かないと思います。
なんか台本みたいになったので、漫画に起こすのも面倒だし供養します。
「ツノ贈りの鹿」シリーズの、死神さんの小話です。

■登場人物・用語紹介

・死神さん
死神の鎌をふるう穢多(えた)の子。
仕事を遊びだと思っている。お面をかぶるのが好き。

・世話係マヤさん
死神の世話をする人。穢多である死神さんと統治機関との中継役。
現・死神が子供なので死神のことを心配している。

・統治機関
この大陸の政府のようなもの。

・死神の鎌
大陸のおとぎ話のひとつ。人の魂を首から抜き取る鎌。


―――――――――――


街 ガヤガヤ
新聞の一面に見出し
『△△地区で蒸気機関車が脱線、谷底に乗客ー名が落下』
『救助活動は難航中』
『名誉物理学者○○博士も乗り合わせたか』

トーガ大陸・統治機関の城
その離れの一画
庭園の中に入り、地下へと続く階段を下る

「…死神さん、」
「ふんふん~♪」
「死神さん!」

死神さんが振り向く
だいたい14歳くらい・中性的な見た目・死神の鎌を持っている
死神の鎌にはお面が8個くらい憑いている

「あ、マヤさん。ちょうどよかったです、見て下さいよ。
じゃ~ん!この間の、青鬼さんの<お面>なんですけれどね…」
「お面で遊ばないでって、いつも言っているでしょう」
「ちょっと被ってみたくってですね、あの~、ちょっとだけ、
被ってみてもいいでしょうか…?」
「だめよ。…それより、これを見なさい」

新聞を死神さんに渡すマヤさん

「新聞?」
「昨日、機関車の脱線事故があったの。…ただの事故なら、別にあなたの仕事はないわ。
でも、厄介な人間が機関車に乗り合わせていたの」
「ええと~、…なんて読むんですかあ?」
「○○博士。この大陸誇るお偉い物理学者ね。
なにせ世界で初めて…ううん、わからないでしょうね、あなたには。
とにかく、そんな大陸にとって重要財産である人物が今回の事故に巻き込まれちゃったわけ」
「それは災難ですねえ~えへへ」
「なにがおかしいの?」
「この博士さんのヒゲ、変な形ですねえ~ふふふ」
「…今はどうでもいいでしょ、そんなこと。
それで今救助活動が行われているんだけど、」

「その救助活動に今からあなたも行くの」
「…ボクがですか?わあ~」
「時間がないから急いで準備して。ついてきなさい」
「はーい」


同日 夜
事故現場に向かう夜行特急列車のホーム
コートを深く羽織る死神さんとマヤさん

「うわあ!これが列車ですか?!はじめて見ました!
すごい!大きいです!これが動くんですか?!ビューンって!」
「静かにして。今回は特別よ。時間が無いの。
夜行列車で行くのが一番早いからね」

二人は一番後ろの車両に乗る
一つ前の車両の乗客の話し声

「ねえ、今日の夜行列車、なんだか混んでない?」
「あ、多分、後ろの車両に乗ってるからよ」
「乗ってるって、何が?」
「死神さん。だから車両一つ分、人が入れてないのよ。
それでこんな混んでるワケ」
「うそ!死神さん?!見にいってもいいかな?」
「やめなよ~。それに、ドアに鍵がかかってるよ」

列車に乗って移動中
貸し切りの車両
一番後ろの席に向かい合って座る死神さんとマヤさん

「うわあ、早いです」
「窓あけないで」
「えー、いいじゃないですか」
「それより、今回のあなたの仕事を説明するから。よく聞いて、死神さん」

振り向く死神さん

「はーいっ」
「返事はいいじゃない」
「えへへ」
「そんなに褒めてないわ。
あらためて、今私たちが向かっているのは事故現場。
救助隊が先に着いてるはずだから、あなたはそれに合流する。
残酷なことだけど、人間に優先順位をつけるのがこの大陸の警察と統治機関の命令だから。例の博士の安否が今最優先で救助活動は行われてるはずね。
現場はどうやら瓦礫で埋もれてて、谷底から瓦礫を撤去するのにちょっと時間がかかってるみたい。
それで、その博士が見つかったら、」
「見つかったら?」
「生存確認をして、」

「もし即死状態だったら、あなたの仕事はないわ。そこで終わり。地下室にすぐ帰ります」
「え~、なにもしないで帰っちゃっていいんですか?」
「…よく聞いて。それでもし、博士が比較的軽傷で生きていたら、その場合もあなたの仕事は無し。帰ります」
「…一体ボクはいつ仕事をするんですかあ?」
「問題は、博士が重症の場合。助かる可能性が著しく低い、または治療を施すまで持たない場合。
その場合、死神さん、」
「はい、なんですか?」
「あなたに、博士を殺してもらいます。…わかった?」
「ええっ、えー、殺しちゃうんですか?!博士さん?!
いいんですかあ?だって、偉い人なんですよね?」

列車がトンネルに入る 車内が暗くなる

「…そうね。死神さん、あなたが今までその死神の鎌を振るって仕事をするとき、
死刑執行人としてか、重要人物の暗殺か、指名手配犯の抹殺か、
とにかく人を殺す仕事ばかりだったじゃない」
「そうですよ~だからせっかく殺してできた<お面>も、すぐ燃やしちゃうんですね」
「当たり前よ。…でも、今回は違う。
『殺すために鎌を振るう』んじゃなくて、『<お面>をつくるために鎌をふるう』ってことよ」
「お面をつくるため、ですか?」

死神の鎌に憑いたお面をじゃらじゃらさせる死神さん

「このお面ですか?」
「そう。そこに憑いてるお面の人物は、過去この大陸が『人間財産』にした人たちよ。
過去この大陸で名誉な功績を残したり、抜群に聡明だったり…とにかく、人間として後世に残しておくと統治機関が決めた『人間財産』となった人物たちは、死神に殺されて、死神の鎌に<お面>として保存しておくしきたりがある。
今回の博士も、『人間財産』候補だったってわけ。まだ正式に決まってはいなかったのだけど…こういう状況じゃ仕方ないのね。だから生きてるうちに…もし事故で重体だったら、早急に『殺す』必要があるってこと。お面として保存するために。死んだ人間は殺すことはできないでしょう?」
「なるほど~。じゃあ、(ジャラジャラ)このお面の中に、その博士さんのお面も加わるんですね!
わあ、楽しみだなあ」
「…遊びじゃないのよ?」
「どんな人なんでしょう、博士さん。えへへ」
「もう…」


事故現場に着く
列車を降りる死神さんとマヤさん
現場では救助隊員が作業してる
作業隊員たちが遠巻きに見る中、隊員の偉い人が二人の方へ近づいてくる

「ああ、ご連絡いただいてます。そちらが…」
「死神さんです」
「こんばんは~」

隊員はマヤさんの方を向いて話している

「わかりました。現場の方へ案内します。事故現場は崖の中継地点なので気を付けて下さい」

崖を簡易リフト降りていく

「作業は難航しています。今は夜の作業員に交代して作業してますが…
落ちたとされるのは乗客ー名と運転手ら3名です。とにかく、ひどい有様で…
今のところ生存者が数名救助され近くの街に運ばれておりますが、私の見る限り、あれは治療するまで持たないんじゃないかと…」
「そうですか」
「マヤさん、これはなんて乗り物ですか?」
「…作業用のリフトよ」
「へえ~、結構ゆれるんですねえ」
「遊びじゃないのよ」

谷底(事故現場)に着く
瓦礫の撤去作業と乗客の救助作業が行われている

「博士は見つかったか?」
「3号車に乗っていたなら、多分この下だ」
「急げ!」

近くで見ている死神さんとマヤさん

「うーん、ボクにも何か手伝えることありませんかね?」
「ないわ。おとなしくしてなさい」
「ヒマですね。…あ、そうだ!へへ~、マヤさん、」
「何、!」

死神の鎌に憑いた仮面をひとつとり、顔につけている死神さん

「おう世話係、これはどういう状況だい?ひどい有様じゃないかい」
「ちょっと!仮面を勝手にかぶらないでって言ってるでしょ!」
「わー待て待て!わしの質問に答えてくれんか。これは…いやいい。お前さんに聞くまでもないわ。列車事…」

死神さんの仮面を外すマヤさん

「あ、」
「勝手に仮面をかぶらないで頂戴!本当はこれだけで始末書なのよ。わたしが誤魔化してるからいいけど…」
「この仮面は、<知識人>さんの仮面ですね」
「そうね。ただの屁理屈じいさんだわ」
「鎌で殺されて仮面になったのは、いつなんでしょう?
(仮面を手でいじってる)ん~、ボクも仮面と会話したいです~。話がしたくても、ボクが仮面をかぶるとボクの意識はどっかにいっちゃうんですよね」
「……それは、乗っ取られてるのね。仮面の人物に、意識と身体を」
「不思議ですねえ。マヤさん、この死神の鎌ってずーっとこの大陸にあるんですか?」
「歴史書によると…」

救助現場から声がする

「いたぞ!引き上げろ!」
「!見つかったのかしら。死神さん、見に行くわよ」
「はーいっ」

瓦礫から博士らしき人が引きずり出されるが、酷い見た目をしている

「…これは……」

意識がない 息はほとんどしていない

「マヤさんはいますか!あ!マヤさん、来てください!」
「状態はどうですか?」

首を振る救助隊員

「…死神さんに来ていただけて、よかったです」
「…そうですか。(書類をとりだす)こちらにサインを。さて、死神さん」
「これは、ボクのお仕事ですかぁ?」
「そうよ」
「わかりました~」

死神の鎌をふるい、救助された死にかけの博士の首を刈る死神さん
博士の首元から魂のようなものが刈り取られ、仮面の形に変わり、死神の鎌に憑く
それを見守る救助隊員とマヤさん

「…できましたぁ。ふふ、博士さんの仮面、おんなじヒゲの形してます~ふふふ」
「…ご苦労様です」
「いえ。私どもはこれで統治機関に報告に戻ります。ほら死神さん、行くわよ。
……死神さん?」

博士の仮面を顔にはめている死神さん

「わたしは助かったのか?列車が傾いて…」
「!!」
「くそ!やっぱり崖に落ちたのか!下手糞な運転士どもめ、後で訴えてやる!
それに救助が遅すぎだ!無能な奴らだ、……待て、なんだこの身体は…?!」

死神さんに駆け寄るマヤさん

「またあの子は仮面をかぶって…!もう!」
「気安く触るな女が!それより…わたしの…大事な荷物はどこだ!」

瓦礫の方へ向かう死神さん(博士の仮面をかぶっている)

「おい!どこにある!早く見つけ出せ!!くそ、使えない奴らだ、もういい、自分で見つけてやる―…」

博士の仮面をかぶった死神さんが瓦礫につまずく

「あっ!あぶな…」
「おい馬鹿!死神と口きくな!」

足を踏み外し、瓦礫が崩れ、谷底の奥へ落ちていく死神さん
マヤさんが動く

「!わたしが追いかけます。構いません。リフトを借りても?」
「ええ、ええ!あの、今のは…?!」
「死神の鎌で殺されてできた仮面をかぶると、意識が仮面に乗っ取られるのです。見たことは?」
「い、いや…こんな近くで見たのは…、では、あれは博士の意識?」
「ええ」
「荷物がどうとか言っていたな…荷物について、なにか上から連絡きてたか?」
「いいや?」
「…死人の戯言に、耳を傾ける必要はありませんよ」


谷底 事故現場から5メートルほど下

「……」

死神さん目が覚める

「んん…?あれ、事故現場って…こんなに暗かったですか…?」

起き上がる 近くに鎌と博士の仮面が落ちている
仮面はちょうど死神さんの顔のあった位置に落ちており、明らかに落下の衝撃で割れている

「!!わあ?!大変です!博士の仮面が割れちゃいました!」

仮面を手に取り、くっつけようとするが全然くっつかない

「たしかマヤさん、今回は殺すことじゃなくて、仮面にすることが仕事だっていってました。
…ど、どうしましょう~。えーと、えーと」

立ち上がろうとすると立ち上がれない

「あれ?」

落下の衝撃でケガをしている死神さん

「えへへ、ケガしてたみたいです。痛かったですか?兄様。
ごめんなさい、すぐマヤさんに治してもらいましょうねぇ。
…マヤさんは、どこでしょうか?」

崖の上からマヤさんがリフトで降りてくる

「いた!」
「あ、マヤさん!よかったです。ここはどこでしょうか~?」

死神さんに近づくマヤさん

「足、ケガしてるじゃない。ホラ、つかまりなさい」
「わあ、ありがとうございます」

おんぶされて二人でリフトに乗る

「……ちょっと待って死神さん、あなた、博士のお面は?自分でお面を外せるわけ…、!」
「お面はここにありますよ~、……えへへ」
「よく見せなさい」
「……」
「割れてるじゃない!!も~~~~!」
「……えへ、ごめんなさい」
「……はあ~~~、どう言い訳しようかしら、ああもう」


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