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世界一周航空券の旅:交通系ICについて

世界一周航空券という割安に飛行機に乗ることができるチケットを使い、昨年(2023年)の5〜7月の約2ヶ月間(54日間)、少し長めの旅に出かけました。
その様子は少しずつYouTubeでvlog形式の動画を更新をしているのですが、アップまでに時間がかかりそうな情報や、文章の方がお伝えしやすいかもしれない内容について、noteでも書いてみようかなと思いました。

ちなみに動画は、下記リンクで再生リストにしているので、動画の方が見やすい場合はこちらもご覧いただけたら嬉しいです。
観光情報や景色などは動画の方が楽しいかもしれません。

画像をタップすると再生リストに飛びます

交通費を支払う方法の違い

今回の記事では私たちが訪問した各都市での交通系ICについてまとめてみようと思います。世界一周航空券に限らず、該当地域にお出かけの際のご参考になれば嬉しいです。
訪問地域は、パリ(フランス)、ロンドン(イギリス)、バルセロナ(スペイン)、ニューヨーク、ワシントンD.C.、ラスベガス、サンフランシスコ(いずれもアメリカ)です。
ラスベガスからはグランドサークルツアーにも出かけましたが、こちらについてはガイドさんにおまかせしっぱなしだったので、今回のテーマでお伝えできる情報はなさそうです。

海外で交通系ICを選ぶ際、
①その都市独自のサービスを利用する必要があるのか
②手持ちの決済手段で利用できるのか
の大きく2つに分けられます。

①については、東京だとSuicaが使えますが、Suicaを海外の他の都市で利用することはできません。そうしたSuicaに該当するようなものを準備する必要があるケースを指しています。
②については、主に国際ブランドのコンタクトレス決済が該当します。VisaやMastercard、AMEX、JCBなどの国際ブランドは、かざして決済ができる非接触決済の手段を提供しています。そうした非接触決済が公共交通機関でも利用できれば、わざわざ何かを準備しなくても済みます。再訪しなければ使い道がないチャージした残高が残ることを避けられる点でもメリットがあります。

操作性の観点では物理的なカードを準備する必要があるのか、スマートフォンなどでも対応が可能なのかも判断の要素になりそうです。
カードを準備しなくても済むならば、窓口に出向く必要がなくなりますし、現地で観光する際の荷物も1つ減らせることになります(持ち物が1つ増えることで意外と気をつかうシーンが増えることもありますよね)。その代わり、スマートフォンを絶対に紛失してはいけないという緊張感は高まるのかもしれません。
また、物理的なカードを準備する必要はあっても、スマートフォンを使ってチャージすることができれば、外でお財布や現金を出してチャージをするといったリスクを感じるシチュエーションを減らすことができます。ホテルの部屋など安全な場所でチャージができるため、よりセキュリティ対策を高めたい海外での行動において強い味方になります。

そうした観点で各都市で私たちが利用したものを表にまとめてみました。各都市でポイントになったところを文章でも補足していきます。
なお、表や補足文章は実際に私たちが利用した時の方法を中心に整理していきます。時期が変わると値段が変わることもあるかもしれませんし、サービスの拡充があったり、私たちが見落とした選択肢もあるかもしれません。

私たちが利用した方法を中心に表にしてみました。

パリ(フランス)

パリで公共交通機関を利用する場合、旅行者にとってはNavigo Easy(ナヴィゴ・イージー)が便利だと感じました。つい最近まで利用されていた回数券(カルネ、Ticket t+)などを中心にチャージできる物理カードです。

Navigo Easyの物理カード

最初に物理カードをゲットしなければいけませんが、この時、有人カウンターを探す必要があります。1つの駅に1カ所くらいは有人カウンターがあるようなので、ターゲットの駅を決めたら複数の改札口・出入口を確認して有人カウンターに向かいましょう。Ticketと書かれた機械の券売機で最初の物理カードを手に入れることはできないようです。

最初に物理カードを購入する際、スタッフの方に「Ticket t+を10枚入れてください」などとお願いすることでチャージも済ませることができます。中身を使い切ったら、SNCF Connectというアプリを使って部屋でチャージをすることもできます。このSNCF Connectというアプリはジヴェルニーなどパリ郊外の都市に電車で向かう際のQRコードを提示するタイプの電子チケットを購入することにも利用できました。

SFCN Connectで
Navigo Easyにチャージするときの画面

どうやらAndroid端末を使っている人は、Navigo Easyの物理カードも必要なく、スマホの中にアプリをダウンロードすることで利用できるケースもあるようですが、私たちはiPhoneユーザだったため、実験できていません。(サブ機でAndroid端末を持ってきていたらよかったのにと少し思いました)

Navigoにはいくつか種類があるようで1週間などの乗り放題のチケットを中心に購入できるNavigo Découverte(ナヴィゴ・デクーヴェルト)も有名だそうです。私たちも滞在期間は3週間と比較的長かったと思いますが、より長く滞在する人や、定期券が有利になるような生活様式が想定されている人(毎日どこかに通うなど)はNavigo Découverteが便利になるのかもしれません。こちらを買う場合は顔写真を貼って使うことになるようなので、日本から証明写真を持っていくなどの事前準備をすると心強そうです。

ロンドン(イギリス)

ロンドンでは国際ブランドのコンタクトレス決済でバスにも地下鉄にも乗れることが楽しみで、旅の目的の1つでもありました。
今では国際ブランドのコンタクトレス決済で電車に乗ることも事例が増えてきて、当たり前の選択肢に見えるようになってきましたが、コロナ禍に入る前の2019年頃はロンドンがその先駆けのような存在だった印象がありました。その頃から現地で試してみたかったことの1つです。
ロンドンに到着してネットワークにつながるとすぐに「iPhoneのWalletに入っているAMEXカードをエクスプレスカードに設定しました」といった趣旨の通知が来ました。半ば強制的に自動的に公共交通機関が利用できる体制が整うのだなと驚きました。ちなみに夫はその通知がなかったか、見逃したかしたため、手動でエクスプレスカードに設定して利用しました。

ロンドンでは元々、Oyster Card(オイスターカード)と呼ばれる、Suicaのような独自サービスが使われていましたが、同様の機能が国際ブランドのコンタクトレス決済でも提供されているようです。

ロンドン改札の読取機
スマホや非接触決済対応のクレカをかざして改札を通過する

1日や1週間単位で負担すべき交通費の上限が定められていて、同じカードを使っていると自動的にその上限が適用されました。
料金は時間帯やエリアによって異なりますが、
・バス1回1.75£のエリアについて1日の上限が5.25£
・地下鉄1回2.7£のエリアについて1日の上限8.1£
などと設定されていて、3回乗車すると上限額に達し、以降は交通費が加算されない、などの組み合わせを確認しています。
なお、同じクレジットカードであっても、物理カードを使ったり、スマホに取り込んで使ったりすると、それぞれで上限をカウントすることになるようなので、同じカードを同じ媒体で利用すべきという注意点があります。

バルセロナ(スペイン)

美術館と交通費がセットになった「バルセロナカード」というカードも検討しましたが、今回の私たちの日程では美術館の種類はたくさん回らないだろうと判断して、10回電車に乗車できるTカジュアルを購入しました。

紙に磁気テープが貼られたタイプの物理カードで厳密には交通系「IC」にはあたりません。非接触を示すロゴを見かけましたが、国際ブランドではなく、独自サービスとしての交通系電子マネーのサービスが始まるというような趣旨の記事を見かけたため、そちらのサービスを示す表記だったのだと思います。実際には体験することはできませんでした。
バルセロナでは、スマホで乗車したりチャージする方法を見つけることはできませんでした。ここまでの工程で初めて現金を使って自動券売機でカードを買うという操作をしたことになります。

自動券売機の画面
写真右上にあるTカジュアルを購入した

ニューヨーク(アメリカ)

ニューヨークもロンドン同様、国際ブランドのコンタクトレス決済で公共交通機関が利用できるようになっていると聞いていたので楽しみにしていました。
ニューヨーク州都市交通局・Metropolitan Transportation Authority(NY MTA)ではOMNY(One Metro New York)と呼ばれる非接触決済システムを改札に採用していて、国際ブランドも対象になっているから利用できるという建て付けです。

マンハッタン改札の読取機
JCBのコンタクトレスにも対応している

ところで、空港から市街地(マンハッタン)に行くまでは、従来使われていたMetroCard(メトロカード)を利用しました。もしかしたら国際ブランドのコンタクトレス決済で支払う術もあったのかもしれませんが、私たちは見つけきることができませんでした。

空港からマンハッタンまではMetroCardで乗車

メトロカードはバルセロナで使ったTカジュアルに近い紙のカードに磁気テープが貼られたカードでした。市街地に到着以降の地下鉄やバスは、ロンドン同様、スマホをかざして国際ブランドのコンタクトレス決済(Apple Pay)で乗車することができました。

現地に暮らす人の話によると、わりと最近までメトロカードが使われていたようです。ニューヨークをもってしてもそうなのであれば、やはり、ロンドンの国際ブランドのコンタクトレス決済による公共交通機関対応は早かったということなのだろうという感想を抱きました。同時に日本のSuicaって早い時期から優秀な仕組みだったのだなとも改めて感じました。

同じくマンハッタン改札の読取機
こちらだとMetroCardしか使えなさそう(未実験)

ワシントンD.C.(アメリカ)

ワシントンD.C.は独自サービスであるSmarTripを利用しました。
独自サービスとはいえ、使い勝手は非常にスムーズ。ネットワークに繋がるとすぐにWalletに自動的に通知が届き、強く意識をせぬままSmarTripが追加されました。最低チャージ額は4$。
空港から市街地へもSmarTripを使ってiPhoneをかざして電車で移動できました。

SmarTripをiPhoneのWalletに追加・チャージした時の画面

スミソニアン博物館群を巡る際には一律1$で乗車できるCirculator(サーキュレーター)というバスがあり、そちらもiPhoneをかざすとSmarTripから残高が減るという形で迷いなく利用できました。

Circulator・サーキュレーターバス

ラスベガス(アメリカ)

ラスベガスは空港からメインとなる市街地(ストリップ)が近いため、タクシーでの移動が現実的かと思います。
市街地内の散策は歩くこともできますが、循環バスも利用できました。バスの乗車はRideRTCというアプリをダウンロードし、アプリ内でチケットを購入しました。QRコードやカラーバーが表示されるタイプのチケットのため、こちらも厳密には交通系「IC」とは呼べなさそうです。

rideRTCアプリの立ち上げ画面
乗車時は購入したチケットのQRコードなどを表示

2時間有効なチケットが6$、24時間有効なチケットが8$などがありました。
国内旅行をした際に、各都市の1日乗車券をスマホで購入することができますが、その時の仕様に近い印象です(電子版葉山女子旅きっぷ南紀白浜のとくとくフリー乗車券函館の市電・函館バス共通1日・2日乗車券などと似ていると感じました。それぞれ利用した際の様子を含む動画のリンクを貼っています)。

サンフランシスコ(アメリカ)

サンフランシスコはワシントンD.C.と似たような形で独自サービスのCLIPPERをiPhoneのWalletに追加して利用できました。
ワシントンD.CのSmarTripは最低チャージ額が4$でしたが、CLIPPERは最低チャージ額が1$のため、使い切れずに余らせてしまう金額が少なく済みそうです。(実際、今の私のWalletにはSmarTripは3.25$、CLIPPERは0.35$が残っています)

iPhone Wallet内CRIPPERの使用履歴画面

市街地で地下鉄や路面電車に乗れたのはもちろん、サンフランシスコから少し離れ、Apple Park Visitor Centerがあるクパチーノまで足を伸ばした際も、同様にCLIPPERで乗車できました。ただ、現地に暮らす人によると、こうした中長距離の移動を電車で行う人は少ないそうです。安全性を重視するのであれば、UberやLyftなどの配車アプリを利用して自動車で移動する方がオーソドックスな選択肢かもしれません。
なお、名物のケーブルカーについては別途チケットを購入して乗車しました。

Walletが利用できるなら便利だが地域は限定的

渡航前は、ロンドンやニューヨークの国際ブランドコンタクトレス決済が便利だろうと期待して出発しました。実際、独自の支払い方法を準備しなくて済んだことはとても楽でしたし、残高が残ってしまわなかったこともスッキリ気持ちが良かったです。
Suicaの方が反応が早いというのは、よく言われている通りで実際にそう感じましたが、私たちが利用した混雑状況では、特に不便を感じませんでした。

必ずしもコンタクトレス決済でなくても、ワシントンD.C.やサンフランシスコのようなiPhoneの Walletに対応する交通系ICは充分便利だと感じました。ただ、今回の渡航都市がたまたまヒット率が高かったようで、 Walletで対応している地域・都市は、日本、香港、中国、アメリカだと先の2都市に加えロサンゼルスくらいのようです。

iPhoneのWalletを開き交通系ICカードを追加しようとするとラインアップが確認できた
以下、中国の各エリアが続く

今回の私たちの工程ではヨーロッパとアメリカの限られたエリアだったので、まだまだ海外旅行をする際は、それぞれの都市の独自のサービスを確認しながら出発するシーンも多いと思います。
国際ブランドやWalletなどの世界共通で使われている規格だと、一時的に過ごす渡航者としてはラクだなと感じました。

一方で在住者の観点だと、処理速度の速さや随分以前からICチップが当たり前に載ったSuica(今は半導体不足で一部新規発行が休止)などの交通系ICが使えていた日本の交通決済インフラは、充実していたんだなと再確認する機会にもなりました。

※記事はこちらで終了です。
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