紙の歴史

紙とは、植物などの繊維を水に分散させて薄く平らに成形したもので、筆記や印刷などの情報伝達や記録の媒体として発明されました。紙の発明は、紀元前2世紀頃に中国で行われたと考えられています。最古の紙としては、紀元前176年から141年の間に作られたと推定される放馬灘紙(ほうばたんし)があります。この紙は、麻の繊維を原料としていました。

西暦105年には、後漢時代の役人である蔡倫(さいりん)が、麻のぼろ樹皮などを原料とする製紙法を改良し、実用的な紙を大量に作ることができるようになりました。蔡倫は、水車を使って原料を叩解し、簀(す)と呼ばれる枠に張った網で繊維を梳き、乾燥させて紙を作りました。この製紙法は、後に日本や朝鮮などに伝わり、和紙や韓紙などの基礎となりました。

中国では、唐時代(7世紀)からが主要な製紙原料となりました。竹は成長が早く、繊維が長くて強いため、優れた紙を作ることができました。また、宋時代(10世紀以降)には、木版印刷活字印刷が発展し、紙の需要が高まりました。

一方、西洋では、8世紀頃にアラビアに製紙法が伝わりました。アラビアでは亜麻などの草本性の繊維が原料として使われました。12世紀頃には地中海を経由してヨーロッパに製紙法が伝わり、スペインやフランスなどで製紙工場が作られました。ヨーロッパでは木綿のぼろ羊皮紙などが主要な原料として使われました。

15世紀にはドイツでグーテンベルクが活版印刷を発明し、印刷技術が革命的に進歩しました。これにより、西洋でも紙の需要が急増しました。しかし、原料となる木綿のぼろや羊皮紙は高価であり、供給不足に陥りました。そこで18世紀末にフランスでルイ・ロベール抄紙機(しょうしき)を発明し、19世紀に入ってドイツでケラーが木材から直接パルプを作る方法を発明しました。これらの技術革新により、西洋でも安価で大量の紙を生産することが可能になりました。

20世紀中頃には、現在に至る紙の生産体制が確立しましたが、パルプをはじめとする原料や生産機械の開発・改良はいまも世界中で行われ、用途に合わせて多種多様な紙が生み出されています。また、年間4億トンともいわれる生産量を誇る紙の世界では、省資源化を進めるとともに、化学薬品の使用を抑えたり、古紙をパルプとして積極的に再利用するなど、地球環境に配慮した紙づくりが行われるようになっています。

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