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南青山の蔦珈琲店(山田守自邸)

南青山にある「蔦珈琲店」に行ってきました。

今回、なんと!写真を一枚も撮っていない!

……実は、写真を撮るのが苦手です。なんのこっちゃという感じですけど、一人でも友達とでも、店内や人や食べ物を写真に撮るのが恥ずかしくてうまくできない、街を歩いていてもパシャパシャ撮れない、という悩みがあったりします。(打破しなければいけない!)

写真は他所からお借りしました。


蔦珈琲店へ

青山学院大学と骨董通りの間、「アイビー通り」という細い通り沿いにある蔦珈琲店。

建築家・山田守の自邸を改装して喫茶店にしています。もう30年もこの場所で営業しているらしい。

山田守という建築家はあまり有名ではないかもしれませんが、京都タワーや日本武道館を設計した人です。

京都タワーは地元の方にとってどういう存在なんでしょう、愛されいるのかな?批判も多いけれど、私は記憶にある時点ですでに「京都駅」と「京都タワー」がセットだったから、逆にあの前衛的な感じに特に違和感はなかったなぁ。好きというわけでもないですが(すみません)。

山田守は、東京帝国大学(今の東京大学)を卒業後、逓信省で電信局や電話局、いわゆる“逓信建築”を設計していました。その後独立。京都タワーや日本武道館は晩年の作品になります(逓信建築についてはまだまだ知識不足なので、お勉強します)。

彼の経歴を見ると、住宅はほとんど設計していないようですね。

今回は久しぶりに大学(建築科)時代の友人とお茶するということで、せっかくならと建築家の自邸を選んでみました。

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アイビー通りを歩くと、モリゾーかキッコロかというモジャモジャの蔦に覆われた建物が出現。ひと目見て「ここだな」とわかりました。前情報はなかったけれど、なんせ「蔦珈琲店」という名前だから。

身長よりも高い生垣と、その上に顔を出す2階部分。看板は出ているものの店内がまったく見えず、「一見さんお断り」系か?と尻込みそうになるけれど……

今回は「建築家の自邸を見る」という明確な大義名分があるので、多少気難しい店だったとしてもしゃあない!と、足を踏み入れました。

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すると、「お好きな席にどうぞ〜」と意外にもフランクなバイト(?)の店員さん。

ネットで写真を見てはいたけれど、予想よりも遥かにいい雰囲気でした。もっと堅苦しくて年配の方が多いお店だと思っていたら、意外にも20代や30代の男女、一人の方、パソコンを使っている方など様々。

居心地のいい店だ。一瞬でそう思いました。

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(出典:OMOHARAREAL

目の前に広がる全面緑色の庭は、写真から想像するよりもずっと近い。ガラスに覆われた箱が突出したようなスペースなのに、ガラス張りのカフェで感じがちな「落ち着かなさ」が一切ないのは、庭との距離感がちょうどよいのだと思います。

ガラスの方立の存在感は極力消されていて、開くのはおそらく両端のみ。開き方はスライドではなく縦開き。

私は以前いた事務所の習慣で、住宅の大きな開口部にスライド(引違いや片引き)のサッシを選ぶことが多く、それは第一に動きに無理がないこと、第二に風の通りやすいこと、という理由なのですが、自分の隣にある縦開き窓をまじまじと眺めていて「うん、これもいいなぁ」と思いました。片引きと違ってFIX部分に窓がかぶさらないのはやはり景色が美しく見える。頭でわかってはいたけれど、住宅に長時間滞在して体感できるというのは貴重です。

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庭以外がどうだったか?というと、やっぱりこの店では窓と庭しか印象に残りません。悪い意味ではなく良い意味で。

カウンター席もあって、向こう側に食器類が置いてあったりもするけれど、強い主張をする素材やデコラティブな装飾はありません。純喫茶風のようでいてコテコテ純喫茶でもなく「普通の喫茶店です」というカッコつけなさが好印象。

天井や床、壁、カウンターの什器類もトーンを落としていて、おとなしい。天井にモールが走っている様子は、見る人によっては古めかしいと感じるかも。

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(出典:OMOHARAREAL

庭の緑だけで十分に美味しい空気感にあふれているから他に余計なことをしないのだろうな。そんな場所が結局は一番長くいられる場所なんだと思いました。

それと、椅子が座りやすかった。一人あたりの面積は決して広くないのですが、椅子が座りやすいと狭さなんてどうでもよくなるものですよね。

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この店がいいな、居心地がいいな、と思った瞬間というのは、年配のマスターがバイトの若い子2人とすごく仲良く話していたんです。雑談です。私も飲食店でのバイトをいくつか経験してきて、店主とバイトが仲が良さそうかどうかは聞けばすぐにわかるし、大事なことだと思っています。

Twitterアカウントも予想外に面白げ。気難しさはありませんでした。

一度、人が少なくなった時間帯があり、その時はBGMの音量が小さいので会話がダダ漏れな気がしてちょっと気になりました。個人的にはもう少しBGMが大きい方がいいかな。

総合してとっても好印象。

今回はアイスカフェオレしか頼まなかったけれど、そのたった700円で3時間ぐらい粘ってしまった……。コーヒーだけでなくご飯もケーキも美味しそうで、緑に囲まれていて、客層が比較的落ち着いていて、この立地で激混みしない……いいお店です。

南青山の一角にある、珈琲と、庭、そして無駄話を楽しむ喫茶店、蔦珈琲店

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2017年に、山田守の没後50年を記念して喫茶店部分以外も一般公開されていたというのを知りませんでした……。もしまた一般公開があれば、他の空間がどうなっているのか、特に庭との関係を見てみたいな。以下のサイトで豊富な写真が見られます。庭を見下ろすリビング、和室、曲線美など要素がたくさん。

印象としては、住宅を普段つくっていない方だったので、いわゆる住宅!っていう部分(和室とか)といつもの設計の延長が、両方盛り込まれている感じがしますね。意図的なのか、そうなっちゃったのかわからないけど。


ワタリウムのOn Sundaysへ

友人と別れてから、ワタリウム美術館まで歩いていきました。ここの「On Sundays」というショップが好きで昔からよく来ています。

特に、手帳。看板商品、なのかな?就職してから手帳が必要なくなって(逆に)、数年の間があいてしまい、今年久しぶりに買いました。

表紙に使っている布が世界各国から集めたものだったりアーティストの作品だったりして、毎年違う色柄を選ぶのが楽しい。

今年はこれ。

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紫色のタフタ(ヨーロッパ製)にゴールドで「2020」。通算10冊ぐらい買った中ではもっともシンプル。コテコテのインドテキスタイルと迷ったのですが、2020というきれいな数字は貴重だし、紫が令和っぽいかなぁと。笑

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中身はずっと一緒。

全種類ではないけれどオンライショップでも買えます。が、行けるなら店頭で触ってみるのがおすすめ。たまに予想以上に分厚い生地や凹凸の激しい生地もあるし、柄が一つ一つ微妙に違う中から選ぶのも楽しいから。

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ついでに封筒も。個人的に、便箋は白で封筒で遊ぶ、とか、逆に便箋で遊んで封筒は白、っていうのがけっこう好きです。ここの封筒は種類豊富でそんなに高くない(450円/10枚)のでおすすめです。


友人との話


一緒にお茶した友人は、大きなアトリエ系設計事務所に勤めていて、たびたび会って話をする仲。昔は真面目な話なんてそんなにしなかったけど、年齢と共に大人みたいな話になっちゃうものですね。

出会ったのは芸大受験のために通った予備校で。当時私は前の大学の4年生、彼女は高校2年生だったから、だいぶ年齢は離れているのになぜか馬が合いました。

その予備校で、初めての建築写生(今は入試からなくなりました)の授業が代々木体育館でした。風の強い日で、慣れない私の設置したパネルがイーゼルから外れてぶっ飛んでしまい、ある女の子の頭に直撃したのです。パネルの角が当たるって、経験したことないけどけっこう痛かったのでは……本当に申し訳ない。それがきっかけでその女の子と、近くにいた彼女と、仲良くなりました。そんな馴れ初めです。

そして、実際の受験で出題されたのが代々木体育館だったのもいい思い出。バスに乗せられてシークレットツアー。上野から代々木まで、あそこか?いやこっちか?って、みんなドキドキしながら窓の外を眺めていました。代々木体育館に辿り着いたときは「もらった!」と思いましたね(嘘です)。代々木の予備校だったから、何度も描いていたのは本当です。

私はその年に入学し、彼女は少し遅れて入ってきました。

お互いのやっていること、今となっては全然タイプが違う。かつてはほとんど同じものを見ていたはずなのに……人生って一瞬の判断で方向が変わるよなぁなんて思っています。大きいアトリエに行った自分も、いたのかな?うーん、もう想像すらできない。



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