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三幕構成の時間配分を考える

ハリウッド式三幕構成を学んでいた頃、
幕の時間配分がおかしい、
と疑問をもっていました。

その後、
三幕構成を応用できるレベルにまで、
自分の中での理解が深まったため、
今は時間配分をアレンジして使っています。

本来の幕比率は、
1:2:1ですが、
それに対して、
自分がたどり着いた幕比率は、
0.5:3.33:0.17。

比率は違うとはいえ、
あくまで三幕構成を土台にして、
それを自己流にカスタマイズしたものが、
今使っている構成理論、
という認識だったのですが、

最近、
自分の掴んでいる、
ストーリーへの感覚としては、
三幕構成ではなく、
序破急だったのだな、
とわかりましたので、

序破急とは構成パターンの1つで、「序」「破」「急」から成る三部構成のことです。「序」は序章、始まりを意味し、「破」では話を展開させて、「急」で一気に盛り上げ、クライマックスに持っていって締めくくります。

https://news.mynavi.jp/article/20210120-1623250/

この記事では、
そのあたりのお話になります。




1幕が長い

https://kakuyomu.jp/works/1177354055193794270/episodes/16816452219432122499 

先ほども書きましたが、
上記図のように、
三幕構成の幕比率は1:2:1です。

2時間映画だと、
一幕30分、
二幕60分、
三幕30分となります。

三幕といっても、
二幕はミッドポイントを区切りに、
前半と後半の2ブロックに分かれますので、
実質は計4ブロックで、
比率は等しく1:1:1:1。

二時間映画だと、
30分×4ブロック=120分
という感じです。


三幕構成を勉強する上で、
比較的当初から思っていたのが、
一幕目の長さです。

30分は長くない?
ということです。

一幕というのは、
起承転結でいう起に相当し、

オープニングが始まって、
主人公の日常が描かれて、
そこから何か特別な出会いなり事件などが発生し、
主人公が非日常に突入するまでのパートです。

いくつか例を出しますと、
「ビッグ」なら占いゲームをプレイした少年が大人の姿になってしまうまで、
「ダイハード」ならテロリストにビルを占拠されるまで、
「天空の城ラピュタ」なら空から女の子が降ってくる(あるいは空賊に追われて冒険に繰り出す)まで、
などです。

もちろん後述するように、
三幕構成の形を取らない作品もありますので、
一幕(起)が長いことが、
必ずしも悪いとは限らないのですが、

起承転結や三幕構成の形をとっている、
オーソドックスなストーリーでは、
非日常突入までに30分かかるというのは、
自分の中ではあり得ません。

三幕構成の理論通りに描かれた作品に、
「ザ・スイッチ」があります。

https://filmarks.com/movies/92729 

女子高生と殺人鬼の体が入れ替わってしまう、
いわゆる入れ替わりモノであり、

二人が入れ替わるまでが、
一幕に相当しますが、
そこまでに30分を要しています。

前述した「ビッグ」でいえば、
(実際は15分かそこらである)
主人公の少年が大人になるまでを、
30分かけて長々描くのと、
同じことであり、
見たときは辛口tweetしてしまいました。


あるいは、 
一幕に30分かけているものとして、
「マルコビッチの穴」のように、
段階的に非日常へと突入していくパターンもあります。

https://filmarks.com/movies/5077 

本作は、
人形師の主人公が不思議な会社に就職し、
そのオフィスで不思議な穴を見つける、
というストーリーで、

まず、 
オフィスの天井が低い、
支離滅裂な会話をする社員のいる会社へ、
主人公が就職する過程に15分くらいかけ、
その後、 
また15分くらいかけて、
オフィスで不思議な穴を見つけるまでを描く、
といった具合に、
非日常への突入が、
段階的に描かれています。

(ちなみに、
先ほどの「ザ・スイッチ」の場合は、
日常シーンに30分かけた後、
非日常に突入、
といった感じだったと記憶しています)

「マルコビッチの穴」の場合、
日常と非日常の観点から見れば、
変な会社に就職、
という非日常に早々に入っているため、
日常シーンを延々と描いた、
「ザ・スイッチ」と比べると、
まだマシかもしれませんが、

しかし結局、
本作のストーリーの真の非日常は、
「穴の発見」であり、
それに端を発して、
その後のストーリーが展開されていくので、
好みの問題なのかもしれませんが、 
「穴の発見」まで30分かかるのは、
やはり長いと感じます。


一方で、
前述した通り、
一幕(=序盤)が長くても、
それが傷にならない、
例外もあります。

たとえば、
「バタフライエフェクト」や、
「カメラをとめるな」などが、
それに該当します。

両作品とも、
仕込みの都合上、
一幕に多くの時間が費やされていますが、
全体から見渡すと、
一幕の長さに必然性があり、
かつ、
一幕以降の面白さによって、
その短所が帳消しになっています。

あるいは、
スパイ映画などでよく見かける、
オープニングをド派手なアクションシーンで見せ、
その後、
本編に突入するといった、
起の前にもう一つ起がある、
といえるような作りのストーリーの場合も、
多少一幕が長くなりますが、
やはり傷にはならないでしょう。

そういった例外的なケースを除き、
オーソドックスなストーリーの場合は、
一幕の限度は15分であると、
多くの映画を見てきた、
自分の結論であり、

それが、
冒頭に書いた、
0.5:3.33:0.17の幕比率(15分:100分:5分)に、
たどり着いた理由の一つです。



PP②はいらない

三幕構成に対するもう一つの疑問は、
プロットポイント②の存在です。

先ほどの図をもう一度貼ります。

https://kakuyomu.jp/works/1177354055193794270/episodes/16816452219432122499 


三幕構成では、
PP①(プロットポイント1)、
MP(ミッドポイント)、
PP②(プロットポイント2)、
の三つを要としています。

PP①は、
一幕と二幕の境目にある、
先ほど説明した非日常への突入のことです。

ミッドポイントは、
二幕の真ん中にあり、
ストーリーの折り返し地点とも、
呼ばれるもので、

「タイタニック」なら、
氷山衝突シーン、
「グリーンブック」なら、
差別蔓延る南部突入シーン、
がそれに該当します。

つまり、 
タイタニックでいえば恋模様が描かれる、
お楽しみパートと呼べる二幕前半から、
一転して危機的パートとなる二幕後半への、
入り口となるのが、
このミッドポイントです。

そしてPP②は、
二幕後半と三幕の境目にあり、
危機的パートである二幕後半において、
解決への糸口を見い出すシーン、
らしいのですが、

らしいというのは、
映画を見たり、
分析していても、
PP①やミッドポイントと異なり、
PP②を重要なポイントだとも、
あるいは、
区切りとして意味のあるものだとも、
感じたことがないからです。

https://filmarks.com/movies/6409 

「天空の城ラピュタ」には、
空から女の子が降ってくる(PP①)、
ラピュタを発見する(MP)、
と、
鮮やかな転換点がありますが、

PP②は分析しても、
どのシーンがそれに相当するのか、
よくわかりませんでした。

もちろん、
映画の中には、
PP②のみならず、
PP①やミッドポイントが、
はっきりしない作品も、
少なからずありますが、

たとえば、
先に出した、
少年が大人の姿になるとか(「ビッグ」のPP①)、
あるいは、
氷山衝突だとか(「タイタニック」のMP)とか、
そうした誰の目にもわかる、
くっきりとしたシーンが、
PP①とミッドポイントにおいては、
時として存在しているのに対して、

PP②、
つまり、
二幕後半と三幕の境目においては、
これまで多くの映画を見てきた中で、
そうしたシーンを、
ラピュタに限らず、
未だ見かけたことがないのです。


したがって、
PP①とミッドポイントと並んで、
転換点となるシーンは、
PP②ではなく、
クライマックスだと自分は思います。

クライマックスとは、
三幕で訪れる、
事件解決シーンを指します。

タイタニックなら、
ジャックがローズを助けて、
海に沈んでいくシーン。

ラピュタであれば、
バルスを唱えるシーンが、
該当します。

ミッドポイントであるラピュタ発見から、
三幕に訪れるバルスに至るまでの間、
繰り返すように、
あえて区切るを設ける必要性は、
感じられず、

空から女の子が降ってくるシーン(PP①)から、
ラピュタ発見(ミッドポイント)に至るまでが一続きであるように、
ミッドポイントからクライマックスに至るまでも、
同様に一続きだというのが、 
自分の感覚です。

つまり、
ストーリーの三つの要は、
PP①(非日常突入、事件発生)、
ミッドポイント(折り返し地点)、
クライマックス(事件解決)、
であり、

この3点を境目として、
一幕はオープニングからPP①まで、
二幕前半はPP①からミッドポイントまで、
二幕後半はミッドポイントからクライマックスまで、
三幕はクライマックスからエンドロールまで、
と区切ります。

各幕の時間配分としては、
一幕が30分は長い、
ということは説明してきましたので、
一幕は15分。

二幕前半と後半が各50分。

三幕については、
クライマックス(事件解決)後の、
エンドロールまでの余韻パートなので、
5分程度となり、

15分:50分:50分:5分です。

計4ブロックですが、
三幕はおまけなので、
事実上は、
3ブロックプラス1という感じになります。



話は冒頭に戻りまして、
今説明した、
自分の掴んでいる感覚というのは、
3ブロック構成である、
序破急だな、
と今更気づいたわけです。

(もう一度載せます)

序破急とは構成パターンの1つで、「序」「破」「急」から成る三部構成のことです。「序」は序章、始まりを意味し、「破」では話を展開させて、「急」で一気に盛り上げ、クライマックスに持っていって締めくくります。

https://news.mynavi.jp/article/20210120-1623250/

序破急に当てはめると、
序15分、
破50分、
急50分
(+5分)
といった感じになり、

今まで自己流三幕構成だと思い込んでいたものが、
序破急だった、
というお話でした。


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