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十円|脚本

※ストーリーで学ぶ十円の正しい書き順、
をコンセプトにした脚本となります
※PDFは縦書き版となります


あらすじ

赤星(16)は恋人インリン(40)との海水浴中、ボート事故に巻き込まれて命を落とす。

程なくしてインリンも不慮の事故で死ぬ。

さらには赤星らの友人だったうらら(40)と江藤(16)も立て続けに事故死する。

連続怪死事件の噂となり、噂を口にしたオリビア(40)と垣内(16)が事故死したところで、物語の幕が閉じる。


登場人物

赤星(16) 
インリン(40) 
うらら(40) 
江藤(16) 
オリビア(40)
垣内(16) 


脚本

○砂浜
  パラソルの下に水着姿のうらら(40)が寝そべっている。
  江藤(16)、うららの背中にオイルを塗っている。
うらら「…赤星君たちは?」
  江藤、海を見て、
江藤「海でお楽しみ中だ(と笑う)」  

○海
  赤星(16)とインリン(40)、浮き輪の中で乳繰り合っている。
  赤星、いきなり浮き輪から抜け出すと、沖へ向かって泳ぎ出す。
  赤星、少し離れたところまで泳ぐと、
赤星「インリン! ここまでおいで!」
  と無邪気にインリンへ手を振る。
インリン「(笑顔)」
  と、赤星の近くにサメの影。
  サメ、水面にヒレを出し、ゆっくりと赤星へと近づいてゆく。
  インリン、浮き輪をつけたままヨチヨチと赤星のほうへ向かう。
  赤星、また泳ぎ出す。
  赤星、泳ぎをやめ、
赤星「(インリンへ)こっちだよー!」
インリン「もー! ダーリンの意地悪ー!」
  サメ、ぐんぐん赤星に迫る。
  赤星、気づかず、インリンへ笑顔を向けている。
  次の瞬間、赤星、横から猛スピードで突っ込んできたモーターボートに轢かれる。

○机の上
  真上からのアングル。
  墨汁の入った硯と半紙が置かれている。
  画面外から筆を持った手が現れ、筆に墨汁をつけると、モーターボートの軌道のごとく勢いよく横線を一本引く。
  半紙の上半分に「-」と書かれる。

○車内(数日後)
  インリン、思いつめた顔で運転している。
  ルームミラーにぶら下げられたらキーホルダーに赤星と撮ったプリクラが貼られている。
  インリン、プリクラをじっと見つめる。

○インリン宅・リビング(回想)
  インリン、入ってくる。
  続けて赤星が入ってくる。
  赤星、キョロキョロと室内を見渡し、
赤星「(不安げに)大丈夫なの?」
インリン「あの人、今日は残業だから」
  インリン、淫靡な表情で髪をかきわける。
  二人、見つめ合う。

    ×   ×    ×

  二人、ソファーで乳繰り合う。

○(戻って)車内
  踏み切りの警報がカンカン鳴っている。
  インリン、我に返る。
  インリン、ブレーキを踏み、踏切の前で車を停める。
  踏切の遮断機が下り始める。
  インリン、発作的にアクセルを踏み込み、車を発進させる。
  インリン、線路上で車を停める。
  インリン、ルームミラーのキーホルダーを手に取り、
インリン「(強く握りしめ)…ダーリン」

○踏切内
  電車、車に迫ってくる。
  電車のけたたましい警笛が轟く。
  インリンの車、動く気配がない。
  次の瞬間、車、上から降ってきた隕石によって粉々になる。

○机の上
  筆、先ほどの横線と交わるように勢いよく縦線を振り下ろす。
  半紙の上半分に漢字の「十」ができあがる。

○踏切の前(数日後)
  警報機の脇に花束が置かれている。
  うらら(40)、花束の前にしゃがみ込み、手を合わせている。
  とスマホに着信が入る。
  うらら、スマホを取り出す。

○江藤の部屋
  江藤、スマホで話している。
江藤「うらら? どした? さっきから何度も電話してるんだけど」

○踏切の前
  うらら、スマホを耳にあてたまま、ぼんやりと空を見上げている。
  雲一つない青空。
うらら「今、踏切の前にいる」
江藤の声「…」
うらら「隕石ってさ、きっと痛いとかないよね」
江藤の声「…うらら?」
うらら「私にも落ちてこないかな。隕石」
江藤の声「何いってんだよ! お前には俺が」
  次の瞬間、うらら、横から突っ込んできたトラックに轢かれる。

○机の上
  筆、横線(円の四画目)を一本勢いよく引く。
  半紙の下半分に「-」の文字。

○江藤の部屋
  江藤、スマホへ向かい、
江藤「うらら?!」

○道
  江藤、疾走している。
  次の瞬間、江藤、地面から生えてきた巨大なタケノコのような何かに突き上げられ、串刺しになる。

○机の上
  筆、円の一画目の縦線を下から突き上げるように書く。
  半紙の下半分に「├」のような文字。

○展望台(数日後)
  目の前に海が広がっている。
  オリビア(40)と垣内(16)、寄り添って海を眺めている。
垣内「…つまり、呪いが連鎖して、あの海で一緒に遊んでた四人組がみんな死んだってわけ」
オリビア「…(俯く)」
垣内「…オリビア?」
オリビア「実はさ、その四人組の中の江藤君って子、私の英語教室の生徒だったんだよね」
垣内「え?」
オリビア「…繋がってるんだよ。みんなどこかで」
大久保「…」
オリビア「(話題を切り替えて)ジュース買ってくる」
  オリビア、歩き出す。
  その瞬間、オリビア、展望台に突っ込んできたジェット機と衝突する。
  オリビア、必死に機体の頭にしがみつく。
  オリビア、機体にしがみついたまま、海上に出るも、その瞬間、隕石が降ってくる。
  オリビア、隕石と衝突し、海へ落下する。
  オリビア、海の中へ落ちる。
  その瞬間、サメ、下からやってきて、斜め左上にいるオリビアへ食らいつく。
  ジェット機と隕石とサメの一連の軌道、円の二画目のよう。

○机の上
  筆、円の二画目を勢いよく書く。
  半紙の下半分に、真ん中の縦線の抜けた円の文字。

○展望台
  垣内、腰を抜かしている。
  垣内の後ろから撮影カメラが近づく。
  撮影カメラマン、手にトンカチを持っている。
  垣内、気づかない。
  撮影カメラマン、垣内の頭にトンカチを振り下ろす。

○机の上
  筆、円の三画目の短い縦線を書く。
  半紙に「十円」の文字ができあがる。

(おわり)


 

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