見出し画像

後悔の生<死

 自分の子が、どこか知らない場所で自分より先に死んでしまう……。
 そんなことがあったら、何にも埋められない穴の空いた心で生きていくことになるのではないだろうか。


父の嘘は誰のため?

 私の父は3人兄弟の長男で、弟と妹がいる。私にとってのおじさんとおばさんだ。
 そんなおばさんに、いくらか前にガンが見つかった。深刻な状況だと聞いていたが、昨日、再び悪化したらしく、別の病院に移ることになった。


 父は、祖母に詳細は伝えず、「悪化した」とだけ言ったらしい。
 加えて、「コロナの影響で面会はできない」と会わせないように嘘をついた。(祖母は地方、おばさんは東京に住んでいるのでコロナのリスクはたしかにあるが)

 そんなことをするのは、祖母がショックを受けて体調を崩してしまうことを避けるためだ。
 今までにも心理的ストレスで寝込むことは多々あり、今回も全てを話すとそうなることは予想できる。      


 ーーーしかし私は、父の"祖母に話さない"という選択がエゴに思えて仕方がない。 


 父は電話で「このこと(おばさんの病気のこと)を話さんこともできたんよ。なのに話したんやけん、元気でおらんといけんよ。」と言っていた。


 父は祖母のことを誰よりも大事にしている。いつもは何事にも動じないフリの人が、祖母が病気をした時泣いていたのがその証拠だ。


後悔しないために、結果として死を選ぶ

 祖母は、このまま自分の娘に会うことなく、取り返しようもない後悔を抱えて生きていくのだろうか。
 
 私はそんな祖母を見ることの方が怖い。


 娘に会ってショックを受けても、会わずに後悔を残すのも、またそれ以外でも、その選択肢は祖母のものであり、父が制限していいものではないと思う。

 たとえ、体調を崩し死に近づく選択だとしても、それは後悔しないために選んだ結果である。そういう生き方の一つだ。

 私は祖母に無責任なのかな。
 でも、私は祖母が大好きで、将来は祖母のようになりたいと思っているし、祖母がいなくなれば冷静じゃいられないとわかる。


 けど生きることより大事なことは、後悔しないことだと思う。走馬灯のなかで「あー楽しかった!」と言えることが90歳まで生きることよりだいじ。
 それが私の生き方の基本理念である。

 なかなか共感も賛同もされたことがない考え方である。私は父に対して、祖母に対して、何をすべきか、するべきでないか。



 答えはでなくとも、時間は流れて______________恐れていたことが起きる。