【有吉弘行の冠番組を語るシリーズ#3】マツコ&有吉 かりそめ天国
有吉弘行の冠番組を語るシリーズの第3弾。
このシリーズでは、史上初めてNHK・民放キー局すべてでゴールデン・プライムタイムに冠番組を持った有吉さんの偉業を祝し、それぞれの見どころや番組ごとに異なる有吉さんのスタンスを個人的な視点で語っています。
先日の第2弾は『櫻井・有吉THE夜会』を取り上げたところ、櫻井くんのファンの方もたくさん読んでくださって大反響でした。おそらく今後2度と超えられないスキ数を獲得…改めて感謝。
今回はテレビ朝日系で毎週金曜20時に放送されている『マツコ&有吉 かりそめ天国』について。
かりそめ天国とは
ファンからの支持はNo.1か
有吉さんの冠番組の中でも1,2を争う人気を誇ると思う。
『有吉の壁』や『夜会』が幅広い層に見られているのに対し、こちらは有吉さんの純粋なファンからの支持が強い印象。
その証拠にオンエア中のTwitterでは有吉さん好きの人たちのツイートをかなり多く見かける。同じ有吉さん好きだけあって僕もいろんなユーザーの名前を熟知しているが、おそらくかりそめの時が一番集まってると思う。他の番組のときにはあまり見かけないラジオリスナーすらも見かける。
その理由は番組の形態にあるだろう。
視聴者からのお便りを紹介し、それに対して有吉さんとマツコさんがあーでもないこーでもないと自由にしゃべるのが基本スタイル。
つまりラジオに限りなく近い。
有吉さんは基本的にテレビで自分の話を率先してしない。そんな有吉さんが自らの価値観や日常の出来事を語る数少ない番組なのだ。有吉さんのパーソナルな面を楽しむには数多の冠番組の中でもこれがナンバーワンといえる。熱心なファンを惹きつけるのも納得だ。
今のTV界を代表するBIG2の揃い踏み
現在のTV界のBIG2ともいうべき有吉さんとマツコさんがタッグを組んでのトーク番組。ラジオでも成立する部分はたしかにありながら、2人のスケールを考えるとゴールデンのテレビがふさわしい。
『怒り新党』時代にもバラエティを席巻していた2人だけど、最初の頃はまだ「勢いがある」からこそというイメージもあった。
実際に怒り新党は23時台からスタートだった。当時から有吉とマツコが組むという反響やワクワク感はあったにせよ、そこから2人がさらに大物になっていき、番組名や時間帯を変えつつも10年以上続く人気番組になっているのはすごい。
この番組の歴史を『怒り新党』(2011〜2017)の時代から紐解くにはあまりにも歴史が長く、内容も濃過ぎて語り尽くせない。なのであくまでここでは『かりそめ天国』に依りたいと思う。
いまや有吉さんの伴侶である夏目ちゃんの存在、そして夏目ちゃんとMC2人の掛け合いや調和が抜群だったからこそ火がついていったのは言うまでもない。
(夏目ちゃんやっぱり素敵)
前述の通り、MCの2人はすっかり超大物になった。この2人の持論や掛け合いを毎週楽しめるのは何よりの贅沢である。
夜会の記事で、櫻井くんだからこそ引き出せる有吉さんがあると書いたように、やはりマツコさんでこそ引き出せる有吉弘行がいる。
番組で明らかになる有吉さんの狂気な部分と真っ当な部分。両方ともマツコさんだからこそ可能な少し立ち入った質問や大胆な反応によって浮かび上がる。
「やっぱりこの人おかしいわね」と有吉さんの異常さを認めたり、「なんでそんなちゃんとしてるのよ」と逆に常識人的な一面に驚いたりと、マツコさんが切り出してくれる有吉さんの多面性は見どころのひとつ。
植物を大切に育てていたり、梅干しを作ったり、有吉さんの意外な一面を知るにはこの上ない。
強者同士ならではの高度な掛け合い
有吉さんとマツコさんは似通った考え方があるのか、基本的にはテーマに対してお互い同調や共感をする。見る人によっては「馴れ合ってないでもっと噛みつき合ってくれよ」と物足りなさを覚える人もいるかもしれない。
わからなくはないが、番組のスタンスを考えたら今ぐらいのバランスでちょうどいい良いと思う。純粋に互いの力量を認め合って尊重しているのだろうし、同調がデフォルトだからこそ2人の意見が割れたときのハレーションが際立って面白い。
同じ方向性のトークで足並みが揃っていたのに、急にどちらか一方があえて途中で裏切る形も好きだ。有吉さんがマツコさんだけを悪者にするノリや、マツコさんが「アタシはそこまで言ってませんからね」と見離すパターンもある。このあたりの緩急の付け方にはプロフェッショナルを感じる。
2人は攻撃的なタレント性を持ちながら圧倒的に"受けの対応"もうまい。マツコさんなら『マツコ会議』や『マツコの知らない世界』を見れば一目瞭然。異業種から素人まで、どんな角度からのボールでも確実に捕捉してその場を着地させる。カバーできるジャンルは芸能界でも指折り。
有吉さんの場合はたまに合気道型、カウンター型などと言われるように、相手のキャラや言動を逆手にとって返す刀で核心を突くのが得意。まず相手を泳がせ、一瞬でも隙を見せたら揚げ足を間髪入れずに取っていくスタイル。
それを可能にするのが2人に共通する洞察力や教養。また「どこまでなら斬り込めるか?」のボーダーラインを見極めての距離の取り方。
それらのスキルに関しては芸能界でも屈指だろう。どこまでプロレスし、どこまで斬り込むべきかを同じレベルで把握しているように見える。だから10年やってもつまらなくならない。外から見てもいつまでも違和感のない新鮮な掛け合いとして映る。
さらに2人して知識の守備範囲がえげつないので、それなりの教養や感度が備わってないと成立しない会話もよくサラッと繰り広げている。
松本人志が予見していた脅威
かつてダウンタウンの松ちゃんが2人について脅威だと語ったことがある。
2016年のワイドナショー。南海キャンディーズの山ちゃんがラジオ番組で発表した「潰したい若手芸人ランキング」の話題だった。
笑いの神様・松本人志が脅威と評した2人が見事に当時より影響力を高め、今でも阿吽の呼吸のもとゴールデンに君臨している。2016年当時でも2人はすでに売れっ子だったとはいえ、松ちゃんの予見もさすがに鋭い。
久保田アナの存在感
そんな両巨頭相手に進行を務めるのが久保田直子アナウンサーだ。
どちらかといえばサバサバとした快活な人柄。それでいて出しゃばったり自己主張が強かったりというタイプでもないので、見ていて一切の不快感がない。
2人を相手に適度な相槌や質問を入れてトークを円滑にする。時には豪快な笑顔、そして隙だらけの持論を展開して2人にバッサリこき下ろされてイジられる。彼女の貢献度は高い。スタジオの光度を確実に引き上げている存在で、番組には欠かせない。
ワンピースで例えるならカイドウとビッグマムの2人を相手にやり合うようなものである。誰にでも務まるわけがない。並のアナウンサーなら1ヶ月で胃に穴が空いて終わりそう。緊張感は半端じゃないはず。その点、久保田アナのメンタルは見ていてたくましい。
盛りだくさんの魅力
番組に欠かせないといえば、以下の3要素も触れておきたい。
・挿絵イラスト
もはや番組の顔といっても過言じゃない。
これこそかりそめ天国の象徴。トークに関連するイラストが番組内で適宜挿入されるのだが、非常にチャーミングでポップ。どれも特徴がよく捉えられているし、センス抜群。たった1枚でそのトーク内容を瞬時に伝えるってすごい。さりげなく有吉さんの後輩が描かれていたりと小ネタとしても楽しめる。
現在は4名のイラストレーターさんがチームとなって制作しているらしい。1回のオンエアでもかなりの数のイラストが挿入されるから大変だろうなと思っていたけど、複数人で同じタッチを提供できるようにしてるとは。Twitterでも多くの人が毎回イラストについてポジティブに言及しているほど好評。ずっと続いてほしい。
・ナレーション
俳優の前野朋哉さんが担当するナレーション。
すっかり聞き馴染んでしまったが、前野さんの声も無くてはならない。とても聴き取りやすい上、番組のテイストにも合っている。場が荒れたトークになっても、前野さんの声がフッと入るだけで柔らかくなる。役者としても好きなので嬉しい。
・取材ロケ担当の精鋭部隊
かりそめ天国といえば選りすぐりの芸人さんによるロケVTRが極上だ。一癖も二癖もある芸人さんが話題のスポットに体当たり取材。VTRそのものも、それを見る有吉さんマツコさんのツッコミやリアクションも最高だ。
辛口で厳しい2人を楽しませるのは容易ではないのに、精鋭揃いの常連メンバーは確実に爪痕を残していくので地肩が違う。評価こそシビアな分、取材ロケを任せられるには1番の花形番組だと思う。
好みでいえばロバート秋山さん、U字工事、大久保さんあたりの安定感と笑いの数は拍手喝采レベル。個人的にはチャンカワイさんをもっと観たい。
マツコさんはお笑いコンビの相方
有吉さんは2021年4月の結婚発表後、一夜限りの怒り新党復活スペシャルで、マツコさんのことをマジのトーンで、また同時に照れくさそうにしながらこう語った。
かつては猿岩石でコンビだった有吉さんも、今はピンだ。佐藤栞里ちゃんや櫻井翔くんなど、番組ごと信頼を置ける相方・相棒はいる。
マツコさんもその中のひとりだと思うが、特にお笑い的な(バラエティ的な)観点でアクセル緩めず全幅の信頼を寄せてぶつかれるのはマツコさんなのだろう。
ほとんど群れることなく一人でのし上がってきた有吉さんは孤高の芸人といったイメージもある。その有吉さんにお笑いコンビの相方と言わしめるマツコさんの人間力は計り知れない。
同スペシャル番組内では夏目ちゃんから「(有吉さんは)他の仕事の話はしないけど、マツコさんの話だけはします」と言っていた。
夏目ちゃんと結ばれるに至った経緯にマツコさんの存在・貢献は間違いなくあるだろうから、その点においても有吉さんにとってマツコさんは特別だと思う。
いつか有吉さんとマツコさんがテレビの第一線を退くときが来たとしても、2人でラジオをやってほしい。かりそめみたいに好き勝手に喋って、送られるハガキには手厳しく当たってほしい。
こんなふうに見ていて楽しい要素が満載のかりそめ天国。振り返れば人気になって当然というか、バラエティとしての旨味がたっぷり入ってるなぁと感じる。
ここまで挙げた要素のどれが欠けても誰が欠けても物足りない。そんなバラエティを提供できるスタッフさんたちには敬服する。
第3弾はかりそめ天国でした。
最後まで読んでくださってありがとうございました。
↓関連記事です
サポートが溜まったらあたらしいテレビ買います