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『蛙亭イワクラ×セブンルール 偽善でも露悪でもなく』テレビかじりつきVol.21
セブンルールを見たのは久しぶりだった。
オードリーの若林さんがスタジオから去ってからなんとなく見なくなっていた。
今をときめく女性に密着しながら、その人ならではの7つのルールを見出していくドキュメンタリーは、情熱が必要なやつとかプロフェッショナルらしい格言が求められるやつとかアナザーなスカイを紹介するやつとかとも異なる色がある。
YOUや本谷有希子など、言葉に嘘がない人たちがスタジオでVTR受けをするのも特徴。本人すらも無自覚なこだわりが日常のルーティーンからあぶり出され、スタジオメンバーが客観的なコメントをすることでその魅力が補完される。
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蛙亭のイワクラさんはコントの世界観や平場での立ち振る舞いから察するかぎり、変わり者というイメージはあった。実際、霜降り明星のせいやからもそう評されている。ただ「女性芸人」という括りをわざわざ意識させられることなく単純に笑かしてくれる信頼性は抜群。平場では安直なワンフレーズや容姿ネタ、恋愛ネタ等に走ることもない。ネタもトークも地肩が強い。
今回、バラエティで見る彼女のイメージはそのままに、その延長にある多面的な魅力に光を当ててくれていたので見応えがあった。とりわけ同居している芸人はじめ、芸人仲間が数多く登場するのはお笑いファンからしても目に優しく楽しめた。偏にそれは彼女の人柄や能力が仲間から認められ愛されているからだろう。
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男芸人3人と同居するイワクラは家の中では掃除を担当し、まるで寮母さんのようだった。そもそも掃除が好きだというのと、徳を積むことを心掛けているからだと語っていた。掃除好きなのはおそらく本当で、以前に『有吉クイズ』に出演した際にも霜降り明星・せいやの自宅に勝手に入るというドッキリの中で、散らかっていた部屋を手際よく片付けていた。2人は古い付き合いの先輩後輩関係で、過去にも同じようなことがプライベートでもあったことも指摘されていた。
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徳を積むことに関してもあまり驚きはなかった。部屋に神棚をちゃんと設置していたり、占いや姓名判断なども好むような面は他の番組でも覗かせていたからだ。とはいえ部屋だけでなく劇場でも綺麗に掃除をし、普段からゴミ拾いまでも心がけているという徹底ぶりには目を見張った。
1 . 1日1食
2 . 新ネタは出番直前に相方に伝える
3 . 毎日 徳を積む
4 . なまりはとらない
5 . 仕事の空き時間は献血に行く
6 . おすすめの物はプレゼントする
7 . コントで日本一になる
時間ができれば献血にも行き、芸人仲間やお世話になっている人たちへプレゼントをするのも好きだと語る姿は殊勝だった。きっと母性が強い人なんだろう。賞レースを勝ち抜くことや芸能界で生き残るには運による要素も多分にある。だからこそできることはちゃんとやるという彼女の意志はどこまでも力強く、同時に無理がなかった。
芸人としてちゃんと面白くて、人のためになることをナチュラルにやってのけて、郷里や家族を愛する。そりゃ当然好かれるし、助けられるし、応援もされるよね。
スタジオにいたYOUは「かわいいなぁ」と、尾崎世界観も「みんな好きになりますね」と呟いていた。ネタの一部をチラッと見ただけで、あるいはイワクラさんの何気ない言葉の端々で、スタジオの皆が素で笑っているシーンも多かった。
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献血に積極的に行くシーンなどを見た本谷有希子も「綺麗事に見えない。ニュートラルにパンって見せて、これを見せたからどう思われるかとかじゃなくて」と、イワクラの良心的な振る舞いは計算や自意識の範疇にないことに目を細めていた。
今では小説家としての顔が色濃い本谷有希子もそもそもは若くから活躍する劇作家であり演出家。ひとりで劇団を主宰し、それこそ強烈な個性を持った主人公の女性が過剰な自意識や露悪的な言動で周囲を巻き込む世界観を描くことを得意とした(年々作風も変わってきたが)。
僕も生の舞台を観劇したりほぼすべての小説を揃えたりするほどファンなのだが、そんな本谷さんが「綺麗事に見えない」と言い切っていたのはすごく信用に足ることなのだ。だって誰よりもシャープで容赦のない視線を持って人のつまらない自意識や繕いを見抜いてしまうプロだから。
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本谷さんも20代から自分で作・演出してまだまだ男社会だった演劇界で戦ってきた人だから、同じようにネタを作って男だらけの世界で同じ土俵に立って勝負をし、独自の世界観を貫くイワクラさんの姿勢には、色々と感じるものがあったのでないかと勝手に思った。
YOUさんも「(イワクラのスタンスは)新しい」と評していたように、イワクラさんは偽善的でも露悪的でもない。どこまでもピュアでニュートラルな印象だ。だからなのか、コントの世界に入ってもキャラクターの台詞が浮くことなく妙な信憑性を持って伝わってくる。時に狂気、時に無垢。捉えようのないその危うさは、適度な緊張感と憎めない滑稽さを放ってこちらに届き、気付けば笑いにすり替えられている。
台本を作り込まずエチュードに近い状態で晒け出れるネタは「書いて出るセリフじゃない」と男性ブランコの2人が感心していたが、確かに人間味がこぼれ落ちるように生っぽくて臨場感に満ちている。設定と触りだけを直前に貰って何倍にも膨らまして対応してしまう相方・中野くんのバイタリティも半端ではない。
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蛙亭はコンビのバランスもとてもいい。雛壇でも2人とも偏らず笑いを取れてしまうし、まだまだ底知れないヤバさを隠し持っていそうで目が離せない。
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コントがひとつの大きな嘘を描くものだとするのなら、ここまで嘘のない(ように見える)イワクラさんみたいな人が作り出す嘘こそ絶対的に信頼できる。
いつか蛙亭がキングオブコントを優勝する日を見てみたい。そう遠くない気はするけれど。
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ちなみに地味に笑ったのは番組序盤に中野くんが「もうこんな簡単に追えなくなっちゃいますからね〜」と軽妙なトーンで言って微妙な空気になった時にワイプの青木崇高が「お、おう…」みたいなリアクションをしていたところ。
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サポートが溜まったらあたらしいテレビ買います