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緑豊かな土地からこだわりのたまごを全国へ

ーJR九州ファーム株式会社 飯塚事業所長兼内野宿養鶏場長 原田 貴弘様

  福岡県飯塚市の山のふもとにある養鶏場「JR九州ファーム 内野宿養鶏場」。ここで生産されたたまごは九州のみならず、大阪・東京など全国のお客様に届けられている。また、「うちのたまご」を使ったスイーツやレストランなども展開されており、それらの商品を作るために最も欠かせないたまごが、この養鶏場で毎日生産されているのだ。今回は、筆者の地元である飯塚市で生産されている「うちのたまご」の魅力や、この土地で生産することのすばらしさについて取材をさせていただいた。

「九州を元気に、地域を元気に」をモットーにスタート

 福岡県飯塚市の緑に囲まれた場所でにわとりを育てている養鶏場。この養鶏場は2011年8月に「JR九州リゾート開発(株)」の子会社から始まった。そしてJR九州が「九州を元気に、地域を元気に」というモットーのもと、たまご・ミニトマト・にら・ピーマンなどの農作物も手掛け、より九州を活性化させようと始めた事業が、JR九州ファームである。「うちのたまご」はそのなかの商品の一つであり、この卵を使ってJR九州フードサービスがレストランを展開したり、スイーツを販売したりしている。もちろんたまごも九州のみならず、全国に発送している。現在発送している店舗は、約100店舗。マイングをはじめとしたショッピングセンターや、関東のスーパーにも「うちのたまご」を発送しているのだ。
 九州以外にたまごを販売するようになったきっかけは、「安心・安全なたまご」を届けたいという思いからだそう。今では、ドラマの中で「うちのたまご」の商品がでてくるなど全国に名が知られ始めているように思われるが、広め始めた当初は苦戦することが多く、すぐに知名度が上がるというわけではなかったようだ。それでも、JR九州の方々が営業を続け、現在は岩田屋などのグループ会社以外にも商品を展開できるようになったそうだ。養鶏場では、にわとりに負担をかけないよう丁寧に飼育し、手入れを怠らないようにすることで、「うちのたまご」としてのブランドを保ちながら生産を続けている。取材日当日にも他県からのお客様が直売所で見受けられ、着実に地元だけでなく他の地域にも「うちのたまご」が広がっていることが分かった。

「安心・安全なたまご」をとどけるために

  前述した「安心・安全なたまご」を届けたいという思い。その思いを達成すべく、内野宿養鶏場で働く方々の仕事は朝の8時から始まる。まず、所長の原田さんも含め、社員の方はにわとりを育てている鶏舎へ行き、産んだたまごを集める。現在、内野宿養鶏場に鶏舎は6棟ある。そのうちの1棟は新しく来たにわとりが飼育されているため、実際にたまごを集める鶏舎は5棟だ。1つの鶏舎でにわとりを1,680羽飼育しており、1回の集卵でとれるたまごの数は、1300~1400個。一日に集卵する回数は2回であり、1回あたり約7000個のたまごがとれるそうだ。
 一般的に売られているたまごのサイズはM・Lサイズが多く、「うちのたまご」も店舗に発送するたまごのサイズはM・Lサイズに統一し、殻が丈夫なたまごを届けている。もちろん、M・Lサイズ以外のたまごもおいしく食べられるため、内野宿養鶏場の直売所で朝採れのたまごとしてサイズを選んで購入できるようになっているのだ。また、内野宿以外に筑前町にも「うちのたまご」を生産する養鶏場がある。そこには、稼働している鶏舎が2棟あるため、現在は、合わせて7棟の鶏舎で飼育しているにわとりが産んだ卵を約100店舗へ発送しているそうだ。
 ところで、どんな工夫が「安心・安全」に繋がるだろうか。その秘密は「オールイン・オールアウト」というシステムを導入しているところにある。オールインとは鶏が一斉に入ってくることであり、オールアウトとは鶏が一斉に出ていくことだ。「うちのたまご」の養鶏場では一つの鶏舎のなかにいるにわとりが少しずつ変わっていくのではない。入雛(孵化場で卵から孵化した雛を鶏舎に受け入れること)から120日たった120日齢のにわとりを一つの鶏舎に一斉にオールインし、15か月飼育したのち、一斉にオールアウトするのだ。そして、にわとりがいない鶏舎をきれいに水洗・消毒し、約1か月にわとりがいない状態を保つ。そうすることで、食中毒を発生するおそれのあるサルモネラ菌のいない鶏舎をつくり、菌を持たない健康なにわとりが産む「安心・安全なたまご」を作っているのだ。
 また、サルモネラ菌のいない養鶏場だからこそできることがある。それは、たまごを洗わないことだ。健康な親鳥から産まれるたまごは、「クチクラ」という雨風や乾燥、紫外線などの外部環境から守るための層でおおわれている。クチクラは空気を通すことはできるのだが、カビや細菌を通すことはない。そのため、「うちのたまご」は産まれたときからカビや細菌などがないと分かっている。だから、風味・品質を守るためにも自然の摂理に従ってたまごを洗わずに出荷している。これが、サルモネラ菌の心配がない養鶏場だからこそできることなのだ。
 そして、「安心・安全」だけでなく「おいしい」たまごを作るために必要なことは、にわとりがストレスを感じず満足する飼育をすること。ストレスを与えないために鶏舎の清掃を徹底して行っていることはもちろんだが、「うちのたまご」には飼料にもおいしさの秘訣がある。「うちのたまご」をつくる養鶏場では、とうもろこし・魚粉・大豆などが使われている。これらの性質と栄養を、飼料をつくる中で損なうことのないように配分した独自の飼料を作っているのだ。
 「安心・安全なたまご」、そして何よりも「おいしいたまご」を生産するために、綿密なスケジュールのもと鶏舎の清掃や整備がおこなわれる。そして、にわとりがおいしいと思う飼料を研究していくなかで生まれた独自の飼料を使ったたまごは、質が高いのだ。

飯塚でたまごを生産すること

  筆者が内野宿養鶏場を取材したいと考えたきっかけが、地元である飯塚市で生産しており、地域に根付いているとともに全国に商品を届けているからということからだった。そこで、飯塚市でたまごを生産する良さやこれから飯塚市からたまごを広げるために取り組みたいことを伺った。
 まず、内野宿養鶏場は緑がたくさん見られる自然豊かな場所だ。飯塚市のなかでも市街地から少し離れた山のふもとにあるため、静かでにわとりもストレスを感じずに過ごすことができるだろう。それに加えて暑さが苦手なにわとりにとって、山のふもとで近くに竹林もある養鶏場は、他の場所に比べると夏でも暑さを凌ぐことができる最適な場所なのだ。
 そして、今後も「うちのたまご」の知名度を地元でももっと上げていきたいと原田さんはおっしゃっていた。現在もスーパーでの販売や筑豊で経営するお店の魅力を発信するフリーペーパー「CHIKUSUKI」に掲載されるなどで知名度をあげている。だが、「うちのたまご」を家庭でもっと食べてもらうことが何よりも重要なため、これからもJR九州のグループ会社のみならず新たな店舗にも「うちのたまご」を販売できるようにしたいと考えているそうだ。
 空気がきれいで、緑に囲まれた養鶏場で作られる「うちのたまご」には、独自のおいしさを実現するために、にわとりのことを考えたこだわりが多くある。そのたまごを飯塚市で生産されていることが筆者にとっても誇りであり、今後もより知名度やリピーターを獲得していくのだろうと実感した。

学生に伝えたいこと

 最後に学生に向けて伝えたいことを原田さんに伺うと、「目標をきめることは難しいかもしれないが、何かを見つけてそれに向かって頑張ってほしい」とおっしゃった。原田さん自身も幼いころから野球を続けていたことでJR九州の社会人野球チームに所属することになった。そして、引退後JR九州グループでの様々な仕事に取り組み、現在内野宿養鶏場の管理をされている。そのことを聞いて、何事でも一つのことに打ち込み、練習に励むなど目標に向かって取り組むことが将来の仕事につながるのかもしれないと感じた。

あとがき

 今回の取材でより分かった「うちのたまご」の魅力。取材のなかで、原田さんにどの料理で「うちのたまご」を使うとおいしく食べることができるのかをお聞きした。その答えは、「たまごかけごはん」。なによりもたまご本来のおいしさを存分に楽しめるのは、やっぱり「たまごかけごはん」なのだそう。筆者も取材のあと、「うちのたまご」と直売所で販売しているたまごにあう醤油を使って「たまごかけごはん」を食べた。綺麗な黄色の黄身が甘く、醤油もほんの少しで十分ご飯が進むおいしさだった。みなさんもぜひ内野宿養鶏場の直売所や他店舗で販売している「うちのたまご」を食べてほしい。


【略歴】
JR九州ファーム株式会社 飯塚事業所長兼内野宿養鶏場長 原田 貴弘様
2004年:九州旅客鉄道株式会社 入社(硬式野球部所属)
2010年:硬式野球部引退後、駅勤務へ配属
2022年:JR九州ファーム株式会社飯塚事業所へ配属

【取材日】
2023年4月29日(水)
 
【取材メンバー】
福岡女子大学国際文理学部国際教養学科3年 塚本風花
福岡女子大学国際文理学部環境化学科3年 福田優奈
 
【JR九州ファーム(株)飯塚事業所 うちのたまご】
住所:〒820-0708 福岡県飯塚市弥山1133-1

Written by TSUKAMOTO Fuka


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