見出し画像

2022年我的電影生活

あけましておめでとうございます。
昨年は『リトル・ガール』から『空の大怪獣ラドン』まで、新旧あわせてスクリーンで111本鑑賞しました。その中から例年通り新作を洋邦各10本、そして今年は特別に旧作5本選びました。
(TOPの写真は大館の御成座)

洋画編



カモンカモン

マイク・ミルズの映画は家族を描くものが多いし、子供のいる映画好きに支持が高いイメージがあって、いいとは思ってもあまり響かなかった子供なし単身なのだが、これがよかったのは、主人公ジョニーの子供に対する扱いが失礼じゃない感じであり(とはいえ彼は甥っ子ジェシーに振り回されるのだが)大人は子供からも学ぶことができ、互いに尊重して生きられるということを見せてくれたと思ったから。周囲に子供が少ない現在だからこそ貴重だし、彼らはもっと大切にしていかねば。子供を持たない身でもそれはできるはず。

レイジング・ファイア

感想は中華blogに書いたので、そちらを参照あれ。

時代革命

香港にとって2010年代は激動の時代だった。2014年の雨傘運動を受けて作られた『十年』(2015年)の各短編の舞台は2025年だったけど、まさかその時を待たずに香港があんなになってしまうとは…と衝撃を受けたここ4年間。反送中デモから始まったこの革命を記録した映画は、昨年オンラインで観た『理大囲城』のフォローアップもでき、これまでSNS等で見守ってきた香港の民主化運動をしっかりつかむことができる重要作となった。
返還から25年、今年は中国大陸でもゼロコロナ政策に対するデモも起こり、大陸もある意味での危うさを抱えていることを改めて確信した。そうでなくても世界がなんだか変な方向に向かっていきそうなこの頃、世界情勢をしっかり見ていきたいものである。

ボストン市庁舎

「公共」とは何か。市役所の仕事とは何か。
ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』に続いてのワイズマンのドキュメンタリー。市民としてどう関わって参加していくのか、ということも考えたくなる。長いしただただ淡々と映し出されるけど、劇映画同様楽しんで観れた。

チタン

ホラーだとか言われているようだけど、ホラーだとは思わない。
クローネン某氏や某リンチ氏に似ていると言われているようだけど、そうも思わない(両氏とも苦手だし)。どんなジャンルにも当てはまらない作品だけど、こういう映画があっていい。

RRR

いやー相変わらずのすごさだった!イギリス統治時代のインドに実在した2人の革命家をモデルに描く直球エンタメ。『バーフバリ』二部作からさらに進化しているし、英語圏を含めた(!)全世界中でヒットも頷ける。
あれほど面白かったのに、地元の上映が早く終わっちゃって残念。こっちでも無発声マサラ上映イベントやってほしかった…

花椒の味

こちらも感想は中華blogにて。

ガンパウダー・ミルクシェイク

昨年は女性メインのアクションものが多かったけど、図書館とミシェル・ヨー姐が取り上げられているなら問答無用でこれが一番よかった。
ああ、盾になって撃ち殺されてもいいので、この図書館で働かせてほしい…

FLEE

ドキュメンタリーの手法としてアニメを使うのは珍しいことではないが、全編アニメとなるとあまりないのではないか。だからこそメッセージ性も高いし、様々なトピックも描ける。そこは大切。

コーダ あいのうた

まさかオスカーの作品賞になるとは思わなかった…
そして今年唯一ポスターの写真を撮り忘れた映画。
感想がこんなですいません。
久々にマーリー・マトリンが見られたのは嬉しかったのだけど、代表作の『愛は静けさの中で』で主演俳優にハラスメントをうけてたという記事を読んだときはショックだった…

邦画編

ある男

昨年は『十年』日本版に関わった2人の監督作品が世界の映画祭に出品されて注目された年でもあった。石川慶監督作品はこれまで観てきた長編はだいたい入れているので比較的合う作風なのかもしれない。同じ平野啓一郎原作で夏に放映されたドラマ『空白を満たしなさい』にも通ずる「分人」というテーマや差別の描き方等、見ごたえがあるし考えさせられる大人のための映画。ぶっきー・サクラちゃん・窪田くんも好演。

さかなのこ

昨年も映画界で大活躍のノーネンちゃん。精力的に活動して頼もしく、初の監督作や久々のメジャー会社での主演作など様々だったけど、あのさかなクンをモデルに、好きなことに自分をかける人間の姿を描いたこの映画が一番魅力的で面白かった。「男とか女とかはどうでもいい」という冒頭の宣言もよし。沖田修一監督、前々作の『おらおらでひとりいぐも』で、主人公の内面を彼女と同じ服を着た3人(+α)の俳優に分身として演じさせて実体化させていたが、それの発展形がこれなんだなと思った。

犬王

年明けに先行して放映されたアニメ『平家物語』がとてもよく、同じ時代を描いた『鎌倉殿の13人』もあって、昨年はちょっとした平家物語ブームがあった。アニメでは父と子供たちに及ぶ因果応報が、大河では平家を倒した源氏と執権となる北条氏にもやはり因果応報が及ぶ様が描かれたけど、これは因果応報とはまた別のテーマがあって、鎌倉幕府が滅び天皇家が南北に分かれた時代の転換期に、いわゆる「平家の呪い」に絡めとられながらも死んでいったものを語ることで昇華させ、後世に残していく様をロケンロール的に描いていたのが面白かった。湯浅監督作品はTVアニメ版映像研くらいしか観てなかったけど、独特のタッチを持ってて面白いね。

MONDAYS

今泉力哉監督や城定秀夫監督など、ここしばらく邦画界では実力をつけて評価の上がってきた監督も増えてきたけど、昨年は彼らの作品はあまり観てなかった(『ビリーバーズ』くらいか)一方、掘り出し物だったのがこれ。メインがほぼ無名キャスト(マキタやしゅはまさんはいるけど)タイムループと会社仕事あるあるがうまく融合し、繰り返しギャグを用いながらループからの逃避を試みるシンプルさを楽しく短い時間で見せてくれたのがよかった。ワンアイディアでいく楽しい映画、これからも出てきてほしい。

メタモルフォーゼの縁側

『さかなのこ』もだけど、昨年は好きなことを好きでいることというテーマが邦画に多かった気がする。一人で好きなことを貫いてもいいけど、その好きなことでつながれたらもっと楽しいし、好きなことを表現できればもっと楽しいし、年齢や経験も関係ないよねと言ってもらえてとてもありがたい映画であった。香港映画が好きでblogを始めた頃の自分を思い出したし、サークルで盛り上がったことにも重なった。しんどい世の中だけど、好きなことを好きでいさせてほしいです、ホント。

やがて海へと届く

シスターフッドというほど濃密ではないし、別れてしまった親友の思い出と足跡をたどることで自分自身の足元を見直すという筋書きは特に目新しくはないのだが、出会って同じ時を共有する友人のかけがえのなさを美しく描いてくれていた。残されたゆきの嬢も行ってしまった美波嬢もそれぞれ素晴らしい。

LOVE LIFE

愛があれば幸せなのか?人生は幸せでなければならないのか?
愛と人生に幸せを求めた挙句、それがわからなくなっている人々の愚かさを幸せの絶頂から災難によって坂を転げ落ちていく様として意地悪に描く問題作、と今になって思った。愛って本当に難しいものである…(悩むな)

シン・ウルトラマン

昨年唯一このnoteで記事を書いているので詳細はそちらで。

いろいろ言われたりなんだりしたけど、『鎌倉殿』の三浦義村が偶然であろうがメフィラスっぽいキャラクターだったり、この映画の3年後に長澤が主演したドラマ『エルピス』の主人公恵那が浅見と真逆なキャラで興味深く思えたりと、いろいろと個人的に広げて考えられるのは面白い。
さて、カントクくんが石ノ森&東映特撮に挑戦する『シン・仮面ライダー』はどうなることやら。

PLAN75

『十年』日本版の第1話として作られた短編版は非常に衝撃的だった。当時は自分の両親もまだ70代前半だったが、それでも国による安楽死の推進というテーマには自分の家族に置き換えて考えてしまって恐ろしかった。長編版では描き方も変わっているが、それでもこの国で生き続けることへの希望のなさは変わらずで胸が痛い。それでも、もっと映画で描かれなければいけないテーマだし、議論も必要。それを示してくれている。

こちらあみ子

『カモンカモン』のジェシーを見て、「ちいさな人間」である子供について考えたが、彼とは性格も生き方も違うあみ子もまた「ちいさな人間」であると思った。素直さが時として人を傷つけてしまう危うさは、自分にも心当たりがある。様々な「ちいさな人間」を受け止めることはやはり難しいのだろうか。

旧作編

※ここでいう旧作は、劇場やイベントで上映された旧作を指し、未見・再見不問とする。

ブエノスアイレス花様年華(WKW4K)

昨年一番嬉しかったのは、王家衛作品が約20年くらいぶりで地元劇場のスクリーンで楽しめたこと。言うまでもなく彼は寡作なので、新作には当分お目にかかれそうもないのだが(しかも新作は中国大陸で放映される初のTVドラマシリーズ…)その分世界映画の定番としてもっと広く観られてほしい作家の一人となっている。WKW作品で最も愛しているこの2作は、地元のフォーラムと大館の御成座でそれぞれ観る機会を得たけど、若者たちと一緒に観られたのは本当に良かった。
御成座での上映にはいろんな世代の人々が集っていた。ブエノスを観ていたピアソラファンらしき老紳士が、「なんかよくわからなかったけど、青春だね!」というようなことをおっしゃっていたのを聞いて、なんだかいい気分になった。
いつまでも残ってほしい作品である。

ダウン・バイ・ロー(ジム・ジャームッシュ・レトロスペクティブ2021)

昨年当地で上映されたジャームッシュの特集上映では、再見の2本を含めて7作品鑑賞できた(それでも『ゴースト・ドッグ』が観られなかった)
その中で一番楽しめたのが『ダウン・バイ・ロー』。モノクロで撮られた南部の風景と3人の男たちのゆるい逃避行が何とも味わい深い。

アメリカの友人(ヴィム・ヴェンダース レトロスペクティブ ROAD MOVIES 夢の涯てまでも)

個人的にはジャームッシュよりヴェンダースの方が好きで、このレトロスペクティブもできれば全部観たかったのだけど、上映期間が繁忙期の4月で全く通えず、観ることができたのはこの作品だけ。
本当は『ベルリン・天使の詩』と『夢の涯てまでも』が観たかった…後者は完全版だったので観たら4時間くらいかかったらしいが。もちろん『パリ、テキサス』も観たかったよ。

ひまわり 50周年HDレストア版

昨年は悲しい戦争が起こってしまったことでも記憶されるようになってしまった。そんな時だったからこそ観ることができた作品。先の戦争が終わって25年経っても、人の心は傷ついていたことがよくわかる。この影響でうちの国もきな臭い状況にあるのだが、絶対戦争なんかしたくない、させたくない、しちゃだめだ。

その他、映画の周辺編

昨年、劇場で旧作の特集上映が多かったのは、コのつくなんと禍の影響の他に円安もあって洋画の買い付けが大変だったからなどいろいろ考えられるけど、それであっても、東京の友人たちが話題にしていたり、今までは着ていたような作品が来なくなっている。というわけで、観たかったのに盛岡に来てくれなかった作品は次の通り。
七人樂隊
セイント・フランシス
スワンソング
グッバイ・クルエル・ワールド
アメリカから来た少女
せっかくアマゾンプライムに入っているので、配信されて無料になったら観るのが一番いいのだろうけどね…(グッバイは確か配信されていたはずだが)普段アマプラではアニメばかり観ているのだが(苦笑)この間有料レンタルで『返校』を観た。今年はもうちょっと積極的に利用していきたい。

そして昨年は、映画館通りにあった頃からずっと利用してきたフォーラムグループの会員制度の終了がかなり衝撃だった。
フォーラムはロードショーとミニシアターを並行して上映してくれた映画館で、仙台や最近閉館した八戸ではこのスタイルを通していたのだが、当地のフォーラムは開館した17年前に既にシネコン化されてしまったので、邦画のアニメ超大作が始まると、あっという間にほとんどのスクリーンが埋まってしまい、観たい映画がなくなってしまうことがしばしばあった。
会員制度は超大作でもアート系でも1000円で鑑賞できたので、分け隔てなくたくさん観ることができ、非常にありがたかったのだが、今の状況だと地元だけでなくどこの館でも会員価格だけではやっていけなくなってしまったのだろう。
会員制度の代わりとなるのが、6回鑑賞すれば無料招待券となるスタンプカード会員(1,500円)なので、実質上500円値上げ。他の館も割引制度を使ってそれくらいの価格だけど、それでも今までのように月10作品観るのは大変だろう。とりあえず各館のスタンプカードを溜めて、はしご鑑賞の時に負担にならないような感じで観ていこうと思う。

そしてこの春には、テナントビルと共にアートフォーラムが閉館してしまう。その後、映画館通りの終点にあるカワトクに映画館が入ることになりが、それでもこの街の映画上映状況はがらっと変わってしまう。

今年の映画生活はどうなるかはわからない。好きな映画が劇場でかからないかもしれない。それでも、好きな映画が大きな画面で観られるようにこの街で頑張っていきたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?