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うちでお茶を聴こう また一緒にお茶を飲もう

まずは夜にお茶をじっくり飲むきっかけとなった、「うちでお茶を聴く会」のことから、話を始めましょうか。

状況の変化により、次々とイベントがキャンセルされ始めた4月中旬。
毎月の楽しみだった、NPO善隣館で開催されるしゃおしゃんさん主催の中国茶会も4月からお休みになりました。これは毎月1回行われる、しゃおしゃんさんの焙煎した気仙茶や紅茶、プーアール茶をお茶請けのお菓子と共に味わい、いろいろとおしゃべりする和やかなお茶会です。平日の忙しさの中でも、ホッと一息つける貴重な機会でしたが、昨今の事情により中止となったのは寂しく、同時に手持ちのお茶も減りつつあり、4月の半ばくらいの頃はお茶のない心細い生活をして不安になりました。
そんな時、しゃおしゃんさんから「うちでお茶を聴く会を開催します」というメッセージを受け取りました。しゃおしゃんさんは昨年から、盛岡市内外で「お茶を聴く会」という試飲会を開催していて、毎回一つのお茶を取り上げて、お茶請けなしでそのお茶を何煎も飲み、茶葉の変化を五感で味わうという会も実施されています。
「うちでお茶を聴く会」は外出がままならない時期にSNSを使い(ここではFacebookのイベントページを使って、ビデオ会議ではなくテキストベースで情報やコメントを交換)、参加者がそれぞれの場所で指定されたお茶を淹れ、煎の変化を確認し、味わうという試みです。茶道具の指定はないので、中国茶を淹れる時によく用いる茶壺や蓋碗がなくても参加できるようになっています。

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4月23日(金)の夜に行われた第1回では、しゃおしゃんのレギュラー茶である青プーアール茶邦崴(ほうわい)を飲みました。邦崴は雲南省の地名でお茶の産地です。詳細はしゃおしゃんさんのblogを参照のこと。
プーアール茶については今後別の記事にも書きますが、黒だけではなく烏龍茶に近い生茶と呼ばれる青プーアールもあり、これまでにも千年古茶などでいただいてきました。淹れ方をよく読み、茶壺で時間を計って淹れましたが、1煎目は少し濃く出てしまいました。それでもキツい味というわけではなく香ばしい香りがよく出ており、煎を重ねていくうちにいい抜け感のとろみを味わいました。このお茶は翌日も捨てずにとっておき、通常のお茶と並行して飲みましたが、なんと30煎まで味が出て驚きました。

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5月8日(金)の第2回では、千年古茶青プーアールの景邁。
千年古茶はしゃおしゃん初期の定番茶で、今はもう販売していない貴重なお茶です。同じ青プーアールでも邦崴とは違う味わいがあり、樹齢100年超のお茶の葉を摘み、焙煎して18年ほど寝かせたものです。工房の開店当初からよく飲んできたお茶でした。
この日は気温が低く、寒かったのですが、仕事を終え食事を済ませてから窓を開けて見る月が美しく、その月を肴にして飲むお茶で身体も温まり、良い気分で夜を過ごすことができました。

このお茶会には、盛岡の普段のお茶会でお会いしている方もいれば、遠方から参加されている人もいます。オンライン上でやり取りはしますが、Zoomなどは使わず、全てテキストか写真投稿での交流になります。でも、静かに飲むお茶会なら顔が見えなくていいと思います。見えないけど、同じ時間で同じお茶を飲んでいるわけだし、たとえ一人でいても、まるで隣りにいるような感覚も覚えたので、寂しさは感じませんでした。

「うちでお茶を聞く」という茶会の名前の由来は、ここしばらく大きな話題を呼んでいた星野源の「うちで踊ろう」にちなんだものだそうです。

この場合の「うち」とは、ここ最近よくネット上で見かける「おうち時間」に代表されるhomeという意味だけでなく、英題にもある内面を意味するinsideともかけられています。「うち」にいることで「うち」と向き合い、そして「うち」で踊って、再会の時を待つということですね。

お茶だけでなく、コーヒーでも白湯でもいいのですが、好きなものを飲んでホッとすることで、日頃の疲れや悩みで凝り固まった心身を解され、癒やされることがよくあります。好きなお茶をじっくり飲み、飲むことで生じる変化に注目することで、同時に私たちは自らの「うち」に向き合うことができます。
これらの夜のお茶の時間でそんなことを考えるようになってから、寝る前に新しいお茶の葉でお茶を飲むようになりました。世界情勢の大きな変化が各地に及び、制限もされる生活が続きますが、そんなときだからこそ、夜にじっくりお茶を飲んで味わうことが貴重であり大切な時間です。
今夜もまた、寝る前に新しいお茶を淹れてゆっくりし、うちに向き合いながら静かに飲むことになるでしょう。

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これは受け取ったばかりのお茶会セット。
ラトリエ ルートブルーエさんのお菓子と一緒に、週末に楽しみます。

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