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ロシアのウクライナ侵攻が突き付けた課題

かつてこれほどまでに身近に戦争を意識させられたことがあっただろうか?一晩にして平和な日常が葬られ明日生きているかどうかを天に祈るしかないウクライナの人々に対し、私たち日本人はただ少ない被害で事が終息するすることを願うことしかできない。NATOや国連だけでなく、日本もあまりに無力でロシアを制御することができなかったことは、今後の国際関係において「次はどこの国がこうなるのか?」といった緊張感を増していることに疑いはない。

次の標的はおそらく「台湾」である可能性は極めて高いと言わざるを得ない。「ひとつの中国」を標榜しそのプレッシャーを強めている現実は、今回のウクライナとロシアの関係によく似ている。

渦中の台湾は自国で守り抜く覚悟を決めている。

翻って我が国日本は、この国際緊張の中で極めて難しいかじ取りを迫られている。今回のキーとなっているロシア、そしてその動きに協調する中国という2つの権威主義国家が隣国であり、常に米国と日本に威嚇を繰り返す北朝鮮も含めると、最も緊張感の高い国家であることは明らかである。すでに北方領土などいくつかのポイントでは実効支配に至っているところもあり、武力をはじめ様々な方法で領土を侵される危険性を孕んでいる。

ここからが本題。日本は果たしてどのような関係構築、対策をとっていくべきなのだろうか?決して専門家でもなんでもないが、一つの考え方を示しておきたい。

1.私たちは自衛のための武力を持ち法整備しておくべきなのか?

現在の法律、自衛隊という組織の定義を考えると、有事の際には残念ながら強力な実行力があるとは言えない。米国や韓国はいざというときに自国の兵は出さない可能性が十分にある。今回ウクライナはNATOには加盟していなかったので一概に言えないが、自国第一主義がはびこる世界においては到底期待できない。

2.ハイブリッド戦争における戦略と戦力は十分なのか?

日本はデジタル分野においては決して高次元ではない。特にプログラミングスキルやデジタルイノベーションにおいては周回遅れのレベルであり、国家危機においては外部の力を頼らざるを得ない。そしてSNSやメディアに対してのリテラシーは偏りがあり、分断しようと思えば簡単に影響される水準であろう。そして国会議員をはじめ政府内にそういった知識と経験があるスタッフが乏しいことも現実だ。具体的に有事の際にどういった戦略で対応できるかが不透明である。

3.武力衝突回避における外交努力や関係構築は現状の方針でよいのか?

1.2の観点でいうと隣国には到底かなわない状況下で、米国との関係を重視しすぎていることが最も懸念点として考えなくてはならない。もはや米国は「世界の警察」ではなく自国中心の考え方を鮮明にしている。今回のロシアへの対応は12月に行われたプーチン氏とバイデン氏の会談時に様々な憶測と駆け引きがあったとはいえ、結果的に派兵しないことを明確にしウクライナへの侵攻の引き金になってしまった。中国との緊張緩和も遅々として進まずむしろ分断を鮮明にしている。いざという時の有事の一番最初の被害者は日本であることを忘れてはならない。

これらの理由から、日本が明確にしなければならないのは「武力」を持ち自衛力を高めるのか、隣国との関係構築に注力し米国依存に一定の距離をおくかといった方針を定めることだ。

ウクライナは自国存亡の戦いを善戦しているが、多くの市民や兵の犠牲は揺るぎない事実。仮に最良の結果を得たとしてもその代償は大きい。武力保持は最終手段だったとはいえ、その選択肢しか与えられなかったのはNATO、国連、欧米諸国といった経済も武力も保持している各国の支援が得られなかったからであろう。もし日本が同じような状況に陥ったとしたら、私たちはどんな選択肢を持つことができるだろうか?

今後の国際協調、関係構築において、中国の存在は非常に大きい。遠くの米国より近くの中国に対して一定の距離を保ちつつ協調関係を築いていくことは日本にとっては疑いのない選択肢ではないだろうか。その上で米国だけでなくオーストラリア、東南アジア諸国といった味方を増やし、アジアの中での方針を鮮明にしておかねばならない。米国に過剰におもねるのは自らの立場を益々悪くしていくことにつながるであろう。

つまり、武力を高め兵を増強したところで失うものが大きいだけであり、隣国との緊張を高める材料にしかならない。むしろ隣国との関係構築に腐心し、決して武力による現状変更は認めない姿勢を明確にしつつ、対話する機会を怠らず、共に協調しながら平和維持に努めることが重要だと考えている。

世界の空はつながっている。ウクライナのみなさんが教えてくれた教訓を私たちは正しく受け止め平和な未来を築く不断の努力を惜しんではならない。そして現状の力による変更を決して許してはならない。日本にできることは声や想いを発信し、行動することだ。それがウクライナの方々への勇気となりロシア国民の方々のサポートにもなると信じて。



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