「ロマンス」は、色んな所に隠れてる 1/10

 今、平岩弓枝さんの「御宿かわせみ」を、図書館から借りた文庫本で読んでいる。
 今朝、読み終えたのは、32巻「十三歳の仲人」である。

 「御宿かわせみ」は、連作短編である。
 主人公の神林東吾の兄が、与力をしていて、子供がいないため、年の離れた弟に跡目を継がせると公言しているため、それなりのお宅の「有能なハンサムニート」状態である。
 彼がいい年になっても結婚しないのは、一種の「やっかい叔父」(跡目を継いだ長兄の居候になっている次兄などを、無職の叔父を言う)的な立場に、自らを置いているのは、好いた女と夫婦になるには、兄の跡継ぎの座を捨てて、養子にならなければいけなかったからである。
 そして、兄嫁の父のお供をして、長崎に数年間行っている間に、好きだった女の父が亡くなり、役人だった家を畳んで、その女性が始めたのが「御宿かわせみ」の名の通り、大川の近くに「かわせみ」という旅籠を開いたのである。
 東吾は、その「かわせみ」の女将である「るい」の恋人なのである。
 八丁堀の定回り同心である源三郎は、東吾の幼馴染で、お暇な東吾に、しょっちゅう、捕り物の相談をしている。

 さて、32巻の話だ。
 旅籠かわせみの女中で、お石という女がいる。年のころは18才だったかな。
 幼い頃に母を亡くした、かわせみの女将、るいを守ってきた、今は旅籠の女中頭のお吉が、手塩にかけて、山猿同然だった娘を、誰もが嫁に欲しがるような、見た目も佇まいも、礼儀も気働きも、すこぶる満点の女の子になったお石ちゃんに、思わぬ玉の輿的な縁談話が起こったのである。

 ここから、最後に収録されている表題作「十三歳の仲人」で、晴れて、お石ちゃんの恋心が成就したのだ!

 この32巻は、文庫本一つが、お石のロマンスで始まり、そのロマンスがどうなってしまうのか、ハラハラドキドキの巻なのである!

 ロマンスは、物語の大事なスパイスの一つだ。
 もちろん、隠し味の場合もあれば、それがメイン食材の場合もある。

 「御宿かわせみ」最高に面白い!!!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?