最後まで読まれる「ホワイトペーパー」に!ディレクションの極意をWebディレクターに聞いてみた
マーケティングリードを獲得するために、多くの企業が公開している「ホワイトペーパー」。市場動向のレポートや独自ノウハウを発信するホワイトペーパーは、見込み顧客との信頼関係を構築するために重要な役割を果たします。
当社ファングリーでは主にディレクター、デザイナー、ライターが役割分担してホワイトペーパーを企画制作しています。普段ディレクション業務に関わることのない私にとっては、その制作過程やこだわりをぜひとも知りたい……(心の声)!
そこで今回、ホワイトペーパーのディレクション経験が豊富な当社Webディレクターにインタビューを決行!サイトディレクションとの違いや、マーケティングKPI達成のための設計ノウハウなどじっくりとお話を伺ってきました。
\インタビューしたのはこの人!/
ファングリーのホワイトペーパー事情を取材!
コンテンツマーケティング事業を展開しているファングリーでは、自社媒体掲載用のホワイトペーパーを内製しているほか、クライアントからご発注を受けて企画から制作、配信までワンストップでソリューションを提供しています。
自社媒体用のホワイトペーパーは、課題解決型やノウハウ提供型、事例集、アンケート調査レポート、サービス説明資料など内容はさまざま。マーケティング強化の観点から、会社全体でホワイトペーパーの制作に特に力を入れており、各部署でテーマを考えてプロジェクトに取り組んでいます。
これまでには、関節医療メディア「ひざ関節の痛み解消ナビ」の立ち上げに伴って行われた関節疾患者の病院・クリニック選びの行動プロセスに関する調査レポートや、美容系ディレクターによる薬事表現チェックリストなど、当社の主要プロジェクトと連動したホワイトペーパーも公開されています。
「自社媒体向けだけでなく、クライアントのホワイトペーパーのディレクションも多数対応している」と話す西海さん。一つのクライアントから定期的にホワイトペーパーの制作依頼を受けることもあり、他のWebディレクターと分担して毎月1~2本程度制作しているそうです。
西海さん:
「これまでにディレクションしたホワイトペーパーを数えたところ40本を超えていました。ファングリーにはホワイトペーパーのディレクションに対応できるメンバーが複数いるので、クライアント様のご要望や自分のリソースによっては、ほかのメンバーにフォローしてもらうこともあります。」
Webディレクターが解説!ホワイトペーパーのディレクション工程
普段ライターとして、ディレクターからもらう依頼書や構成案をもとに執筆している私からすると、ディレクション業務の全体像は知っておきたいところ。西海さん曰く、ホワイトペーパー制作には4工程あるとのことでした。
西海さん:
「ホワイトペーパー制作には、『企画』『台割・構成案の作成』『原稿作成』『デザイン作成』の4つの工程があります。
テーマやターゲットを策定する『企画』から着手することが多いですが、クライアント様のなかには事前にテーマを決めていただいていて、それに沿う形で制作依頼を受けることもあります。その場合、自分たちWebディレクターは『台割・構成案の作成』からジョインします。」
西海さん:
「『台割・構成案の作成』では、まずコンテンツ全体の流れを大まかに設定し、ページ・見出し単位で訴求内容を決めていきます。導入や要約にはじまり、課題提起、解決策、サービス紹介……と自然な流れで、かつユーザーの興味関心が薄まらないように、終着点の資料ダウンロード(行動喚起)まで誘導します。
構成案に問題がなく、クライアント様からのGOサインをもらえたら、次は『原稿作成』と『デザイン作成』です。ライティングとデザイン作成は基本的に同時進行で行いますが、文章量によってレイアウトデザインが変わるため、文章量は事前に決めたうえでデザインを進めてもらうようにしています。
こうして出来上がった完成形をクライアント様に見てもらい、ご納得いただくまで修正を重ねて、やっと1本のホワイトペーパーが完成します。」
ここで私が気になったのは、ライターやデザイナーの選出方法。西海さんによると、ファングリーでは内製を基本として制作しており、リソースや案件対応経験を加味して最適任者に依頼をしているそうです。
西海さん:
「ライティングに関しては、外部のパートナーにお願いすることもあります。専門性の高いテーマの場合は、有資格者や実務経験者に執筆してもらった方がより内容に深みが増し、リード獲得につながりやすくなります。」
1本のホワイトペーパーをご依頼いただいてから納品するまでには、最速でも4~5週間かかるそう。制作スケジュールは下図のようなガントチャートで管理しており、綿密に練られたスケジュール下で、俯瞰的な視点を持って制作全体をディレクションしなければいけません。
ファングリーWebディレクターに聞く!ホワイトペーパーのディレクションの極意
重要なのは、土台固め。“読まれるホワイトペーパー”に仕上げるポイントとは
普段はWebサイトやLPのディレクションを多く担当されている西海さん。まずは、ホワイトペーパーとWebサイト・LPのディレクションで異なる点についてお伺いしました。
西海さん:
「大きく違う点は、縦長にページを使えるWebサイトやLPに比べて、パワーポイントなどスライド形式のホワイトペーパーでは1ページに収まる内容に制限があることです。そのため、構成案作成の時点で、適切な1ページあたりのボリュームを設定し、ライターさんやデザイナーさん同士で文章やデザイン調整の負担がないようにしています。
1ページで伝えられる情報量が決まっている中で、クライアント様が必ず発信したい内容とユーザーに受け取ってもらいたいことを両立できるように、綿密に設計しています。」
フォーマットの違いによる制約はあるものの、西海さん曰く、基本の進行管理はどの案件でも大きな違いはないのだそう。それでも、ホワイトペーパーのディレクションで難しいと感じるポイントはあるそうで……。
西海さん:
「ターゲットの設定は基本にして一番難しいところですね。質の良いリードを獲得するためには、ターゲットの設定が曖昧で、幅広い層への訴求では成果に繋がりにくいです。
ターゲット設定の質はリードの質に比例すると思っていて、『○○にお悩みの△△担当者』程度の設定は最低でも行い、さらに部署、役職、部署の課題まで克明に設定するようにしています。」
では、“読まれるホワイトペーパー”を作るために、ターゲット設定の際にはどのようなことを意識されているのでしょうか。
西海さん:
「“キメラ*”のようなターゲット像にはならないように意識しています。
例えば、10人のターゲットがいたとします。その10人の平均値をターゲットに設定してしまうと、こちらにとって都合の良い顧客像になりかねませんし、そんな都合の良い顧客はなかなか存在しません。それよりも10人いる中で一番に手に取ってほしい人は誰かを見極めることの方が大切で、アウトプットの精度も必然的に高くなると考えています。」
*キメラ…「異質同体」のような、同一の個体内に、異なる遺伝情報を持つ細胞が混じっている状態のこと。
キメラという分かりやすい例を挙げて、ターゲット設定の重要性を説いてくださった西海さん。それ以外にも、“読まれるホワイトペーパー”には、『自社の〇〇は大丈夫?』などあえて不安を煽るようなキャッチーな見出しも効果的だと言います。
知識の引き出しが豊富なのは、普段から競合のホワイトペーパーを観察して、新たな情報を仕入れているからこそ。競合のホワイトペーパーで気になったテクニックをメモし、真似したりしているのだそうです。
一方で、“読まれるホワイトペーパー”のためにやらないように注意していることも聞いてみました。
西海さん:
「最後まで読むのが苦痛にならないよう、“文字文字しく”させないことですかね。ホワイトペーパーは読み物ではありますが、一番大切なのは最後のサービス紹介に興味を持ってもらうことです。途中で離脱されないよう、最後のページにたどり着くまでのスピード感を考慮して、文字数を設定しています。
また、どうしても文字が多くなってしまう場合は、イラストを挿入してデザインを工夫したり、ひと目で要点を掴める明瞭な見出しをつけたりなど、常にユーザー目線を大切にしています。」
落とし込みは徹底的に。制作陣と完成イメージをシェアする、コミュニケーションのコツ
私も自身、制作スケジュールの策定、スケジュールを厳守した記事制作やCMSへの入稿、クライアントとの折衝を行う傍ら、最近では業務委託のパートナーの方と協働する機会も増えてきました。協働メンバーが増えるほどに伝え方やスケジュール管理の難しさを痛感しています……。
メンバー間での誤認を生まず、西海さんがイメージする完成形を作り上げるために一体何を意識されているのでしょうか。
西海さん:
「自分の場合はホワイトペーパー1本の制作で2回ほどしか制作陣と打ち合わせを行いませんが、その代わり、最初の構成案作成の段階で十分な下調べをして、ある程度文章を入れておくようにしています。
全体の流れと見出しで訴求したい内容を簡単にまとめて指示するだけではなく、例えば『このページのこの場所には比較表を差し込みたい』など、ページ単位で訴求内容を設定しています。そうすることで、ライターさんがそのページに何を書いたらいいか分からないという事態もなくなりますし、イメージの共有もスムーズになります。」
制作陣への詳細の落とし込みを一番に意識しているという西海さん。確かに西海さんが制作陣の席まで行って、口頭で相談されているところをよく目にします。
西海さん:
「テキストでは説明が難しい、ニュアンスを汲んでもらいたい場合は、必ず口頭での補足の機会を設けるようにしています。制作陣が社内にいる場合はその方の席まで行きますし、外部のパートナーやリモート勤務中のクリエイターであればオンラインミーティングを設定します。
自分の頭の中に、どんなに巧妙なストーリーを描いていても、そこが制作陣に伝わっていなかったらただの空想になりかねません。自分が意図したものを制作いただくためには、まずこのページで伝えたいことは何か、このページはどんな役割を持っているかをライターさんやデザイナーさんに細部まで落とし込むことが大切です。それこそディレクションの真骨頂だと考えています。」
西海さん、貴重なお話をありがとうございました!
西海さんの丁寧なディレクションには、クライアントはもちろん、ライターやデザイナーなどの制作陣からも厚い信頼が寄せられていますが、その理由は、至る所に散りばめられた制作側への配慮なのではないでしょうか。
クライアントに満足いただけるコンテンツを制作することは最優先ですが、それを達成するためには、“指示を受ける側”への細やかなサポートが必要。前職で、指示を受ける側を経験された西海さんだからこその配慮なのだろうと、同じく指示を受ける側の私は考えたのでした。
ファングリー公式noteでは、これからもファングリー社内のイベントやカルチャー、働き方に関する記事を発信していきますので、ぜひチェックしてみてくださいね!
また現在、一緒に働くメンバーを随時募集しています。現在事業拡大に伴いWebディレクターを積極増員中!経験者の方のご応募をお待ちしております。