徳政令を知り、システムを思う

概要

講談社現代新書の「徳政令」という本を読んでの感想です。

表紙は最後に載せています。

システムエンジニアという職業柄、システムのことも考えさせられました。

徳政令を初めて習った時

小学生の時に徳政令について習ったことはおおよそ以下の通りです。

「鎌倉幕府が発令した永仁の徳政令は、借金がかさんだ御家人を救済するために、御家人の債務を破棄させるという内容のものだった。しかし、債権者は借金を合法的に踏み倒されるという事態に直面し、御家人にあまり金を貸さなくなったので、御家人は再び借金をすることが難しくなり、ますます窮乏した。このように、徳政令というのは余計に自らの首を絞める悪法である。」

というような感じで教わりました。

まるで落語の話をするかのように、「こんなアホな昔の人がいました」と言わんばかりの雰囲気で教わりましたし、習う側の自分も「そりゃあかんわ。アホやなあ。」と単純に理解していました。

今回、「徳政令」という本を読んで

この本は、鎌倉時代ではなく室町時代を中心に、徳政令という法令がそんなに簡単に「アホな法」とは言えない複雑な背景を分かりやすく教えてくれます。

徳政令が当時の幕府や民衆の中でどのように理解され、支持され、利用され、嫌われたのか。特に、正長の徳政一揆や嘉吉の徳政一揆を中心に、その前後の政治的情勢や過酷な自然環境、経済活動、社会通念から紐解いてくれます。

ここでは本の内容について詳細を説明しませんが、自分の徳政令に対する理解が随分と浅かったと感じます。

理解が浅いゆえに、不合理な法であると単純な批判をして終わりになっていました。

確かに徳政令が結果として社会にもたらした負の側面は多いけれど、それは徳政令だけが単独でもたらした結果ではないし、部分最適と全体最適がマッチしなかったという側面も見て取れます。

こういう風に捉えると、もはや徳政令を単純に批判することは難しくなります。

現代の日本とは違うとある具体的な環境において、債務破棄を内容とする法令は、時間の経過とともにこういう経過をたどり、こういう影響があった、という風に、まずは複雑な事実を受け止める姿勢にさせられます。

事実を受け止めた上で、それでは他の事例にあてはめて考えるとどうだろうかと考えさせられます。例えば、現在はコロナウィルスによって経済活動が停滞しており、債務の支払停止を求める主張もされていますが、徳政令をあてはめて考えるとどうでしょうか。

システムを思う

システムにも同じことが言えると思います。

とあるシステムを後から見た人が、不合理的な設計や実装になっていると感じることは多いと思います。

しかし、その歴史を一つ一つ紐解いていくと、それなりに自然で合理的な結果の積み重ねとして現在の状態があることも多いものです。

もし、メンバーの入れ替わりやドキュメントの喪失によって、歴史が分からなかったとしても、「現在こうなっているということは、こういう歴史があったのかもしれない」と想像することは可能です。

現在の不合理な状態を批判してはいけないというわけではありませんが、歴史を知る、または、想像することによって、単純な批判ができなくなるはずです。
過去の批判ができなければ、自然と現在に目を向けて、また新しい歴史の積み重ねとして、どこから改善していこうかと前向きに考え出す姿勢にもなるでしょう。

表紙

徳政令


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