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〔ユーロ圏〕ECB政策金利事前考察&ユーロ相場について


今夜、ECBは今後のユーロ相場を左右する重要な決断を下します。


❏ 背景と予想

追加利下げが示唆されるか?

ついに利下げが始まります。ECB(欧州中央銀行)の要人発言を聞いていると、今夜の利下げは確定的です。確かに直近のユーロ圏CPIは強いデータでしたが、今回の利下げを止めるほどの影響はないでしょう。

利下げは既定路線とマーケットは考えているため、それほどユーロ相場に影響しません。重要なのはその次となり、本稿でもそのへんを中心に解説します。


❏ ECB政策金利とは?

ドイツ・フランクフルトにあるECB本部

ECB(European Central Bank)は、ユーロを使用する欧州連合加盟国(ユーロ圏)の中央銀行です。ECBの主な役割は、ユーロ圏内の物価安定を確保することです。これは、消費者物価指数(CPI)の年平均上昇率を2%以下に保つことを目標としています。

▶政策金利とは?

政策金利は、中央銀行が金融政策の一環として設定する金利のことです。ECBの場合、主に以下の3つの政策金利を操作します。

主要貸出金利(Main Refinancing Operations Rate, MRO)
銀行がECBから資金を借り入れる際の基準金利です。通常、短期資金調達のために週次で実施されるオペレーションの金利です。
限界貸出金利(Marginal Lending Facility Rate)
銀行が一晩の短期資金を借り入れる際に適用される金利です。この金利は通常、主要貸出金利より高く設定されます。
預金ファシリティ金利(Deposit Facility Rate)
銀行が一晩の短期資金をECBに預ける際に適用される金利です。この金利は通常、主要貸出金利より低く設定されます。

▶政策金利の役割

政策金利の役割
ECBの政策金利は、ユーロ圏の経済活動やインフレ率に影響を与えるための重要なツールです。具体的には、以下のような役割を果たします。

インフレのコントロール:政策金利を上げることで消費や投資が抑制され、インフレを抑える効果があります。逆に、金利を下げることで消費や投資を促進し、インフレ率を上げることができます。
経済成長の支援:低金利政策は、企業や個人の借り入れコストを下げ、経済活動を刺激する効果があります。一方で、高金利政策は過熱した経済を冷ますために使用されます。
金融安定性の維持:適切な金利水準を維持することで、金融市場の安定性を保つことができます。

▶金融政策の決定

金融政策の決定
ECBの金融政策は、理事会(Governing Council)によって決定されます。理事会は、ECBのエグゼクティブボードのメンバーおよびユーロ圏各国の中央銀行総裁で構成されます。理事会は定期的に会合を開き、経済情勢やインフレの見通しに基づいて政策金利を決定します。


❏ ファンダメンタル分析

2022年7月から利上げが始まった

パンデミック後の景気急回復により、アメリカ(FRB)に4カ月遅れてユーロ圏も利上げを開始しました。4.50%まで利上げされたことが、ユーロ/円が170円にまで上昇した理由でもあり、パンデミック後にドルに対しては弱含みだった(FRBほどの利上げをしていない)理由です。

ECBが利上げを決定した前月である2022年7月のデータと、直近を比べてみましょう。

・失業率
2022年7月 6.6%
2024年4月 6.4%

・消費者物価調和指数(前年比)
2022年7月 +8.9%   ※2022年10月には+10.7%まで上昇
2024年4月 +2.4%

・生産者物価指数(前年比)
2022年7月 +38.0%  ※2024年8月には+43.4%まで上昇
2024年4月 -5.7%   ※2024年2月には-8.5%まで下落


2022年当時は、インフレ率が猛烈に上昇しこれを抑え込むため、ECBは大慌てで利上げに動きました。パンデミックから、経済が急回復して半導体不足など物資が行き届いておらず、供給不足からインフレが発生していました。
加えて、ウクライナ戦争が勃発し天然ガスの供給不安から高騰もしていました。

工場の材料・部品・エネルギーが不足したため生産者物価指数(PPI)が急騰するのは当然だった訳です。
現在ではそれが落ち着き、CPIも+2.4%まで減速。このまま高金利を続けると2%割れもあり得る状況になっていました。ECBが利下げ判断をするのは、妥当と言えます。


❏発表後、ユーロ相場は?(ユーロ/円)


ユーロ/円(月足)

▶中長期視点で相場考察

ユーロ/円は、パンデミック後に一貫して上昇しました。特にウクライナ戦争が開戦してからはトレンドの角度がより鋭くなっています。

現在、日銀は1回の利上げをおこない、緩慢であるものの2回目の利上げを考慮に入れています。パワーは弱いですが「金利差的には円高要因」と言えるでしょう。一方でECBは利下げをしますから、中長期的に相場を考察すると、現状の円安トレンドは止まることになります。

流れが変わる事件が入り込まなければ、このような通貨トレンドが形成されるはずです。これをトランジション(相場観の転換)とファンダメンタル分析では呼びます。


▶今夜の相場見通し

皆が「利下げをすれば、通貨安」と考えますが、今夜の利下げでユーロが安くなるのは僅かでしょう。既に織り込まれているためです。
ゆえにむしろ、逆に買われるケースもあり、その確率は低くありません。ユーロ売り、ユーロ買いどちらもあり得るでしょう。

分岐させる条件は「追加利下げを示唆するか否か?」です。
もし、ラガルドECB総裁が「追加利下げを示唆しない(あるいは否定する)」結果だったとしましょう。今夜のユーロは爆上げとなります。ユーロ売りをしていた投資家もパニックに陥り、大荒れになると想定されます。

逆に「追加利下げを示唆するケース」では、その時期やニュアンスの強さにもよりますが、ユーロが売られるでしょう。この売りは、将来の利下げを織り込んで下がります。

では、どちらの結果になるでしょう?
一般的には後者(示唆あり)になる確率が高いとFundaliaでは分析しています。しかしながら、直近のCPIが強含みだったことで不透明感は強まりました。ゆえに、断定はせず利下げやインフレ見通しをよく観察したうえでトレード判断するのが適切だと思います。


重要なのは「ユーロ相場が値動きする理由」です。


記事は以上です
ご参考になさってください
Fundalia financial philosophy(FFP)


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