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令和6年能登半島地震 薬剤師による災害支援の備忘録(1/11~1/15)

令和6年1月1日に発生した能登半島地震を受け、日本薬剤師会要請による支援チームに1/11~1/15の日程で参加しました。その様子や考えたことを備忘録として残しておきたいと思います。

※大規模災害の現場は刻々と状況が変わります。また、被災地域の全体像を捉えたレポートではありません。あくまで1/11~1/15の間に私自身が見聞きし感じた内容のみの記載になる旨ご承知おきください。

京都班の参加日程など概要

【派遣日程】
 令和6年1月11日(木)~ 15日(月)
【活動拠点と主な支援内容】
 穴水町保険センター(公立穴水総合病院隣接)
  ・DMAT、JMAT、保健師チームへの薬剤師帯同
  ・避難所ラウンドと環境アセスメント
  ・災害処方せん関連の対応
  ・一般用医薬品、衛生用品、検査キット等の物品管理

京都府薬剤師会からは2ユニット6名が参加。
うち2名は宿泊拠点になる“国立能登青少年交流の家”の拠点整備を担い、私を含め4名が穴水町での現地医療支援に入りました。

穴水町医療活動本部(拠点)の状況

穴水総合病院に隣接した保健センターが医療活動本部の拠点になっており、DMAT・JMAT・DHEAT・DPATが1部屋同一フロアに、隣接する部屋に全国からの応援保健師チームと薬剤師会が拠点を構えて連携しながら活動を行っていました。

DMATを中心にした医療活動本部

災害支援に関わる際には、各職種の方々がどの様な支援活動を行っているかを理解し連携するのが必須。
最低限これらの団体の活動内容を事前理解しておくのは重要ですね(*^_^*)

薬剤師が帯同しているJMATチームもいくつか見られました。
また、避難所での口腔ケアを指導する歯科医師中心のチームが大変喜ばれていたのも印象に残っています。

8:30と17:00朝夕2回の全体ミーティングで
課題と活動内容の共有を行っていました

以下、薬剤師会チームの活動内容を紹介します。

行動内容、出入りの時間はクロノロでしっかり残すのを徹底!

JMAT、保健師チームへの帯同

各チームから要請があった際には、薬剤師会から1名が帯同して他職種と一緒に避難所や施設で診療活動や環境アセスメントを実施。2~4件/日の帯同依頼でしたが日に日に増えていく印象で、帯同した薬剤師はチームから「一緒に来てもらって良かった!」と評価されていました。JMAT帯同は処方提案やOTC含めた医療資材の対応可否など、日頃医師と連携しながら業務を行っている内容をイメージして頂けたらと思います。保健師チームとの帯同は避難所の環境アセスメントを共に行う事が出来て大変有意義に感じました。薬剤師が事前にラウンドしていた避難所では、薬剤師からのアセスメント実績と評価をチームにフィードバックすることで質もあがり、「薬剤師さんここまでやってるの!?」と驚かれる場面もありました。

訪問先などを確認し、帯同する薬剤師を調整

避難所ラウンドと環境アセスメント

下記内容を共通アセスメント項目として避難所をラウンド。要望や状況次第でラウンド間隔を設定し、3地域を担当エリアに振り分けてフォローしていました。
1. 換気、空気環境(必要に応じて空気検査)
2. トイレ環境、掃除方法・消毒剤の確認(ノロウイルス対策指導)
3. 市販薬の要望
4. 体調不良者の有無と残薬確認
ある避難所では2足制にしたトイレの環境衛生があまり良くないのが課題で避難所責任者が悩んでおり、相談のうえ行政保健師に情報提供⇒感染制御チームへ相談⇒テント付きラップポントイレ2台の追加設置が2日で完了し大変感謝され、消毒剤の選定や市販薬の配置、健康状況のアセスメントなど多くの相談を受けました。

避難所ラウンド時の共通確認事項
DHEAT・保健師さんのチームが避難所をgoogleマップに
マッピング・共有されていて、超有用でした!
各チームがいつ、どの避難所をラウンドしたか記録を残していました。
同じような内容を毎日聞く事の無いように、行く理由と優先順位立てが重要!

災害処方せん関連の対応

穴水町の薬局7件中6件が営業再開している状況もあって、地域薬局の対応を優先しバックアップする穴水モデルが確立していました。モバイルファーマシーでの対応は急性期に限るとされ、定期薬などは災害処方せんを含め地域の薬局で応需。その調整と配達などのバックアップを薬剤師詰所で担当。災害処方せんをモバイルファーマシーで受ける場面は少なかったですが、地域薬局の状況を踏まえた丁寧な調整が求められました。また、高齢者施設を中心に褥瘡が多発している状況のなかで、対応薬剤の量・品目を施設担当DMAT班と打ち合わせし選定し確保していく必要がありました。

災害処方せん対応の流れ

一般用医薬品、衛生用品、検査キット等の物品管理

避難所、高齢者施設での感染症が発生していく中で、県から支給されたコロナ・インフル同時検査キット、ノロウイルス検査キットの医療チームへの払い出しを担当。一般用医薬品、衛生用品の管理体制を確立し品目数管理を行ってきました。期間中のニーズとしては、口内炎を含む口腔ケア用品・慢性疲労に由来する疼痛に対して貼付剤の要望が多く、医療チームからも「これらは市販薬でカバーしてもらえると助かる」という声を受けました。

交通状況と食事・トイレ・お風呂など

羽咋市柴垣町にある宿泊先“国立能登青少年交流の家”から支援先の穴水町までは必ず渋滞が発生する状況でしたので、最低2時間は移動時間を見込んで行動していました。
(渋滞なければ1時間弱の距離)
国土交通省北陸地方整備局の公式Xが丁寧に情報発信されており、道路修復の様子もアップして頂いているので参考になります!

宿泊先はお風呂も入ることができ、羽咋市近辺のコンビニなども営業していたので夜の食事も確保する事ができました。
カロリーメイトや非常食を多めに持参しましたが、結局コンビニで買えるものが恋しくなってしまい消費は少なく…宿泊先次第では現地調達でも良いかと思います。
だいたい6時に宿舎発⇒17時半~18時頃に支援終了⇒コンビニ寄って19時半~20時頃宿舎帰宅⇒他の支援チームと情報交換しながら食事、お風呂⇒23時消灯のスケジュールで、雪などの状況で微調整しながら動いていました。

林間学校で使われるような施設で、複数チームで雑魚寝。
寝袋使わず布団で寝られるのは有難かったです。

宿泊先のトイレは問題無く使用できましたが、支援現場は断水のため簡易トイレ。男性の小は柄杓を使って流すスタイルでした。
避難所でも断水の影響でトイレの環境調整が課題になっている印象が多く、大規模災害における長期間の断水が課題を大きくする現場を目の当たりにしました。
当然ながら支援現場周辺のお店や公衆トイレも使用できませんので、(使用する機会は無かったですが)簡易トイレの携帯は安心材料として必須でした。

支援期間中における穴水町の状況変化と課題トピックス

地域内12の高齢者施設のうち2施設がコロナクラスター発生により全員搬送+閉鎖(さらに2施設が全員搬送+閉鎖の判断待ち)という状況で、施設介入しているDMAT隊を中心に日々緊張感が増していきました。地域を出ることに抵抗感を示す声もある中で、シビアな搬送調整が行われていた印象です。
 ※石川県内は常時全く搬送先確保できず、県外搬送が前提

避難所は45施設⇒40施設に縮小しながら1.5次・2次避難所への移行へ向かっている状況。それに併せて避難所の状況を再スクリーニングし、ハイリスク者の確認+各種感染症の早期発見にJMAT・保健師チームが動き薬剤師も帯同しながらサポートしていました。元々あったであろう地域コミュニティが避難所ごとにもしっかり機能している印象で、来れない方に対する自主的な見守りまで多くの地域で出来ていたのは驚きました。地方ならではの強みを感じるとともに、1.5次避難所への希望があまり上がっていないのが気になるところです。

穴水町の公式Xが住民の方々に寄り添った丁寧な情報発信を休まず続けており、頭が下がります…
災害対策本部の情報も毎回発信されており、避難者数や二次避難希望者の移送状況、建物応急危険度判定・各種ライフラインの復旧状況・支援サービスの情報などは大変参考になりました。
 ※支援から帰ってきた後も、発信を見ては京都から応援しています🥰

まとめ

刻一刻と状況が変化する中で適切な対応が求められましたが、“地域の状況を知って、必要な地域資源を理解し、協力しながら患者中心にケアをしていく”という大切な方針は普段から薬局で働いている姿勢と変わらないことも実感しました。対応すべきことも薬剤師として普段から行っている業務の延長線上にあります。いちど経験しておくと視野が広がり、何かの時に対応する自信にも繋がると思います。
 まだまだ能登地域は継続的な支援が必要な状況です。若い薬剤師の方々を中心に是非多くの方に被災地支援の経験をしていただき、ご自身の働く地域にフィードバックされたら良いなぁ…と思います。

最後に、出発前からバックアップして頂いた京都府薬剤師会の皆さま、支援期間中に業務を担って頂いた弊社スタッフ全員に心から感謝を申し上げたいと思います。後方支援があってこその医療支援ですので、期間中に働いていた方々全員で被災地支援を行っていたという事を忘れず、次に誰かが被災地支援に行く際は私も可能な限りのバックアップを頑張りたいと思います。

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