懲役ダイアリー 2016年12月12日月曜日 受刑者養成所?考査
「気をつけ!右へならえ!!なおれ!番号!!」
「イチ!ニ!サンっ!ヨン!」
「もとい!もといっ!!ヨンじゃない!シだろ!!やり直せ!」
毎日毎日、刑務官の怒号が飛び交う。
今私がいる場所は、考査というところ。ここは入所した受刑者が刑務所の基本動作をしっかりと仕込まれる場所。警察で言えば警察学校、吉本で言えばNSCみたいな養成所のようなところ。厳しい訓練を受け、晴れて受刑者デビューする。
刑務所での所作の基本は、大きな声で、素早く、確実に行わなければならない。これを怠ると、他の受刑者にも迷惑がかかる。連帯責任になる。同じ動作を何度も何度もやらされる。迷惑がかかるだけならいいのだが、迷惑をかける人間は即いじめの標的にされてしまう。この10日間で標的にされた人を何人も見た。
食事もみんなと食べるペースを合わせなくてはならない。にしても、皆食べるのが恐ろしく早い。豚に餌をあげたときのように一瞬で食器からご飯がなくなる。食べるのが遅い人、特に高齢の受刑者は、それに追いつこうと必死に早く食べようとしているのだが、結果むせてしまい、
「汚ねえんだよ!カス!」
と詰められてしまう。お前もカスだろ。俺もだけど。
毎朝、部屋から見える朝焼けがとても綺麗。唯一の癒しだ。
今日の午前中は初めての慰問行事。クリスマス会だった。広島から教誨師の方やクリスチャンの方々が慰問してくださり、元気の出るメッセージと素敵なクリスマスソングを披露して頂いた。たった1時間の会だったが、とても癒された。
しかし残念だったのは、その後の運動時間でとある受刑者が
「んだよ、クリスマス会だからお菓子とかジュースとかもらえんじゃねーのかよ!行って損したわ。」
「児童館の行事ではないんだよ。」
とは言えなかった。
妻からお金の差し入れと写真、手紙が届いた。本当に感謝。
読んでいると嬉しいメッセージが目に飛び込んできた。
子供が私の将来の夢を妻に話したらしい。
「大きな家に住み、大きな車に妻と子供と愛犬と新しい命を乗せて、幸せに暮らすのがパパの夢なんだ。」
保釈中、幼稚園の送り迎えの時、自転車の後部座席に子供を乗せてこんな話をした。よく覚えてるなぁ。子供からの愛を感じた瞬間だった。絶対に裏切りたくない。今度こそ生まれ変わって夢を叶える。子供にとって良い父になるんだ。幸せにするんだ。心からそう決めた瞬間だった。
考査期間は三週間ある。まだまだ先は長いけど、とにかく目の前のことをやっていこう。懲役生活もまだまだ始まったばかり。怖さしかないけど、なんとかするしかない。家族のために。
全ては順調に進んでいる。人生の成功に向けて。