見出し画像

「じんわりいとおしい」をはじめて知る

愛おしい、という感情がこの世界にはある。
例えば小さな頃から持っているぬいぐるみを抱きしめた時。あるいは弟を可愛がる時。
愛おしい、という感情をわたしは知っていると思っていたけれど、「じんわりいとおしい」をこの間はじめて知った。

わたしの拠り所のひとつで、どきどきもくれるけれど、やっぱり一緒にいて安心する人がいる。その人とこの間はじめてハグをした。
ハグをした時肩ごしに、薄暗がりの中でまばゆく光る、オレンジ色の電灯が見えた。(うれしくも)身動きが取れないから、それしか視界になかった。
それが涙が出そうになるぐらいきれいで、光もその人もとてもいとおしかった。
その時、今まで感じたことのない部類の愛おしさを感じた。
文字に起こすなら、「じんわりいとおしい」。
心のなかに、水の中に落とした絵の具みたいに、ふわんゆらんと広がる感情。
瞳にじわっと涙が滲んで、こぼれはしないけれど、細目でいてまぶたのなかに閉じ込めたいような。
この世に生を受けて10年とその半分以上経ったけれど、まだ知らない感情があるんだなあと思って、ふしぎな気持ちになった。
それもまた、じんわりいとおしいと感じるんだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?