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迎山和司教授〜創作の本質を探る〜

迎山和司教授とは

公立はこだて未来大学の教員の一人である迎山教授。
前回ご紹介した「クリエイティブAI」というプロジェクト学習で取り組んでいた「デジタル・ヒューマニティーズ(人文情報学)」という分野に真正面から取り組んでいるのが、こちらの迎山教授です。

迎山教授が「人工知能にマンガを描かせる」というとても興味深い研究をされているという事で、詳しくお話を聞かせてもらいましたのでご紹介します。

–– どうして人工知能にマンガを描かせる研究をされているのですか?

私は美術大学出身で、人の創作の本質とはなんだろう、という問いを常に持っているんですね。
その問いへのアプローチとして、「人工知能に創作を学ばせ続けて、結果的にどうやっても人工知能ではできないことにこそ、人の創作の本質があるのではないか」という仮説を立てて、その実証のための研究をしています。

マンガを描かせる以前から、人工知能に絵を描かせる研究を行っているのですが、いつも注目しているのは、絵が意味を持つというのはどういうことかということです。
絵を描くだけならチンパンジーでもなぐりがきはできます。
しかし、のっぺらぼうの顔に目や口をという絵を埋めることはできません。
ところが、人は3歳あたりからなぐりがきを卒業して絵を埋めることができるようになってきます。

この両者の能力の違いは「言語」です。
ということは、絵に意味を持たせるという行為は記号操作であると気がついたんですね。
記号操作なら人工知能の範疇です。絵が意味を持つ記号的特性を捉えてやれば、少ない法則でも鳥人間のような空想物を描けたんです。
絵を埋めることが人にしかできないように、空想物を描くことができるのも人にしかできません。

絵について人だけできる創作を人工知能によって実証できたと思いました。
この後、私が作った人工知能は構図なども考慮した意味のある1枚の絵を描くことができるようになったので、次のステップとして、一枚の絵ではなく連続した絵を扱おうと考えた時、マンガがよいのでは、と行き着いたんですね。
なぜなら、マンガは連続した絵が記号的でいかにも人だけの能力による創作というだけでなく、現代社会で広く受け入れられているからです。

調べてみると、マンガを描く人工知能という研究はどうもあまり行われていないので、そこから今の研究がスタートしました。

とっても哲学的なところからスタートしているんですね、興味深いです!

–– でも、人工知能に1枚の絵からマンガを描かせるようにするには、かなり大幅な飛躍が必要だったのではないですか?

そうですね。
まずはマンガをたくさん機械学習させないといけないので、最初にマンガを読める人工知能を開発しました。
具体的に言うと、画像分析によってマンガのコマ割や吹出しなどを自動判別できるアプリケーションを開発しました。
学習データとして、東大の研究チームが公開している109冊のマンガのデータに加え、自分で手塚治虫のブラックジャック全巻の情報をインプットしました。

そうやってマンガを読む人工知能ができたので、そこからマンガを描く人工知能を開発しました。
現時点では、セリフ決めとコマ数だけ人が入力すれば、見開き2ページでそれっぽい構成になるようにコマ割と人物配置・表情選択をして、ある程度妥当なマンガを自動生成できるところまできています。
機械学習でインプットされた多数のマンガ情報から、人工知能が自動的にセリフに合わせた表情と姿勢を選定し、それをコマ数に合わせて配置してくれます。

次は、セリフだけを入力すると、その台本に合わせてマンガを描くということにチャレンジしようとしているところです。

–– 手塚治虫のようなマンガが描ける人工知能だけでなく、他の作風、例えば少女マンガのようなマンガが描ける人工知能もできるということですよね?

できるとは思いますが、私の研究の本質はあくまで「人の創作の本質」を探ることです。
なので、それがどんな作風であるかはあまり問題ではなく、創作における様々な要素を人工知能で代替していった先に、どうしても人でしかできない何かを明確にすることが研究の目的です。

これまでの研究の中で、人がやるべきこと・人にしかできない「何か」が間違いなく残ることはわかっています。
”描けている人”は当たり前のようにその「何か」を感じ取って創作をしていると思いますし、私自身もそういうものがある、ということは感覚的にわかっています。
その「何か」を明確に言葉として表わしたい、というのが私の研究の基本姿勢です。

創作性を、神秘主義的なものにしておくのではなく、その本質に人工知能を通して近づくことによって、人工知能との共創による「新しい表現」ができるようになるのではないか、と思って研究を続けています。
将棋の世界が人工知能によって広がったように、芸術や文学の世界でも人工知能が表現の幅を広げるのではないかなと思っています。

情報技術を駆使したアプローチで、人の創作の本質に迫る研究・・・。
情報系大学でありながらも、人文学を新たなアプローチで掘り下げることができるという未来大の強みを垣間見ることができた訪問になりました。

ほんとに深いぞ、未来大!

おわりに

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参考

  1. 迎山和司教授 紹介


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