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190 ささやかな喜びは心のサプリ

小さなしあわせは、心のサプリだと思う。
ただし、摂取するためにはお水の代わりに感覚を準備する必要がある。
視覚でも味覚でも触覚でも…もちろん嗅覚でも聴覚でも構わない。
ぜんぶでも良いし、どれかひとつでもいいので、いつもより少し感覚を研ぎ澄ましたら隠れていたサプリを見つけることができる。

生きていくことは、やっぱり大変。
思うようにいかないし、言いたいことを言えずに飲み込むときもあるし、うっかり同じ失敗をしてしまう日もあるし、理不尽なことだらけで息すらできないこともある。
そんな日々の中で心がぼそぼそになって、今にも割れてしまいそうなとき、小さなしあわせという栄養があると心強い。

その場で感じたしあわせでも、過去に感じたしあわせでも、どちらでも効力がある。
そう思うと、些細なことでも喜べる心は、生きていくために必要不可欠なものの一つではないだろうか。

この前、八百屋さんでピンッと姿勢の良いアスパラガスと出合った。
明るい黄緑色がやさしくて、ツンとした髪型も素敵。
3本が1つに束ねられていたので、2束購入した。

家に帰って、早速お湯を沸かす。
私の家にあるお鍋では、アスパラガス1本の長さを収容できないため、5cm長さにカットしていく。
ざくざくざくといい音。

お湯がふつふつしてくるのをただ眺める。
不規則に出てきては熱を放って消えてゆく泡は、なんと美しいのだろう。
まるで見る音楽。「生まれた」と思ったら、もう消えている。でもすぐに次の泡(音)が生まれて、そしてまた消える。その繰り返しが、ひとつの芸術を作っている。

音楽の中にアスパラガスの穂先以外をさっと入れる。
アスパラガスたちはお湯の中をわいわいと舞う。
その動きがリズミカルで楽しくなってくる。
音楽にダンス。音がなくてもこんなに心弾む。

追ってアスパラガスの頭を入れて、湯がいている間にザルと氷水を用意する。
雲が晴れて窓から日が差しこむ、ゆるやかな午後。

アスパラガスがやわらかくなったら、ザルにとって氷水に入れる。
ボウルの中に春色が広がる。買ったときよりも、さらに鮮やかな黄緑でつやつやしたアスパラ。
わぁ!と嬉しくなって、ひとつかじる。

今年最初のアスパラガス。
久しぶりで、懐かしくて、おいしい。
マヨネーズにつけたり、出汁に漬けてもりもり食べた。

それは、まったく特別なことではない。
普段通りの春の午後。
でも、黄緑色のやわらかいアスパラガスと晴れた空。
雲が歌うように流れていって、マヨネーズの黄色はお日さまみたい。

それだけで、しあわせなんだなぁ。
あたたかい気持ちが心から全身をめぐっていく。

毎日は慌しくて、うまくいかないことも、ムカムカすることもある。
マイナスな気持ちになって、私はなんていやな人なんだろうと思うこともある。

それでも、アスパラガスで心躍る自分や、雲が晴れていくことをきちんと感じられる自分もいる。

そんな小さなしあわせを感じられる自分と暮らしはちょっと好きかもしれない。
小さなしあわせはやっぱり心のサプリ。

一人ひとり形がちがっていて、目をこらしたらそこかしこにある、やさしいサプリなのだ。

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そんなこんなで、今回はアスパライラストです。

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なんだかんだで、焼いてお塩をふったアスパラや、塩ゆでのアスパラがいちばん好きかもしれません。

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