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058 カメラで秋を切り取りに

お散歩がたのしい季節になりました。
日の光があきらかにやわらいで、空気がからりとして。
こういう日はお出かけしましょう。

お出かけといっても、ショッピングではありません。
お買いものもすてきですが、こんなに気持ちがいいのにお店の中に入ってしまうのは、少しもったいない気がします。
お化粧を簡単に済ませて、楽な格好でスニーカーに足を入れたら、カメラを持って出かけましょう。

空を写したり、近所にあるポストを写したり、公園に咲いている秋の花を写したり。
景色をどんな風に切り取ろうか考えるのはとても楽しいことです。

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ずいぶん前のことですが、村上春樹さんの本を読みました。『村上さんのところ』という本で、読者の方が寄せた質問や相談ごとに村上さんが答えていくという、なんとも楽に読める本です。

たくさんの多様な質問があり、村上さんも真面目に答えたり、ユーモアを交えて答えたりされているのですが、印象的だった村上さんの答えがあります。
それは、教師をされているへの言葉で、どんな相談に対してだったかは忘れてしまいましたが(ごめんなさい)、こんな回答でした。(記憶で書いていますし、要約しているので、文言は正確ではありません)

「いろんな読者がいろんな僕の本の断片を切り取って、大事に覚えていてくれている。それは、僕が書いたことさえ忘れているようなことです。子どもたちは先生のことをよく見ているし、その言動を自分たちなりに切り取っていくでしょう。どこから切り取られてもいい先生になってください」

私は教員ではありませんが、仕事では年齢問わず多くの人と接します。人と関わっていく以上、また、こういった不特定多数の人が読める場所に文章を書いていく以上、どこかを切り取られる可能性はあります。それはこわいことのようであり、自身を磨くチャンスでもあります。

空や花はどこを切り取っても美しく、心に訴えるものがあります。
空のようにおおらかで、花のように懸命で、ポストのように自分の役割を全うする自分を目指していこう。

カメラを構えながら、そんなことを思っていました。
写真の腕前は、どちらかというと残念な方ですが、写真を撮ること自体が楽しいのでやめられません。

秋空の下で、細い茎のコスモスが気持ちよさそうに風に吹かれている、そんな午後でした。



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