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051 日当たりのいい部屋

朝。
ごみ捨てをしようと思い、ドアを開けたらまぶしい光と秋風がそこにいました。
さわさわと近くの木が葉をならす音も聞こえます。
やわらかな音となごやかな光。見なれたはずのビルや家もどこかあざやかに見えて、朝ってこんなにきれいだったかしら、と思いました。

こういう日は、思う存分お部屋に光を入れましょう。

私が暮らしているマンションは、築三十年以上のおじいちゃんマンションです。
ちょこちょこリフォームはしていますが、建物外観や間取りの古めかしさは隠せません。
先日も、ついにお風呂のドアが壊れてしまい(なんとお風呂に閉じ込められました)、直してもらったばかりです。こういう不具合は、これからも出てくることでしょう。
でも、私はこのマンションが結構気に入っているのです。

たとえば、エントランス。
一階に駐車場がついているので、ちいさなエントランスですが、なかなか趣きがあります。
こんな感じ。

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向かって右のドアは、開けっ放しになるようひもで固定されているので、ほとんど見えません。左は大体半開き。
ドアは大家さんの親戚の方がペンキを塗りなおしてくださったそうです。
なんだか、外国の古い建物みたいでお気に入りです。

たとえば、ドアノッカー。
今時ドアノッカーがついているマンションは少ないんじゃないかしら。
このマンションを建てたとき、大家さんはインターホンをつけず、お客さんはドアノッカーで来訪をお知らせしていたそうです。

今は、インターホンがついているのですが、なんとこちらのインターホンも古くて、気まぐれで音がなったり、ならなかったりします。なったとしても、「ほよーん」というなんとも心許ない音です。ドアノッカーの方が大きな音が出るので、家族や友達、いつも来てくださる郵便局の方やヤマトさん、お花屋さんには、ドアノッカーでお知らせしてくださいね、とお伝えしています。

ドアノッカーってなんだかレトロでいいな、と思います。

そして、私のいちばんのお気に入りが、日当たりの良い部屋とおおきな窓です。
このマンションはとにかく日当たりがよく、またマンションの前に背の高い建物がないため、居間や寝室にさんさんとお日さまが入ります。
私はこのお日さまに当たりながらのお昼寝や、窓のそばで本を読むのが大好きです。
(そのため、このnoteの読書感想シリーズは「窓辺で本を」というタイトルにしています)

やわらかい日差しも、風も、大きな窓からふわりとやって来ます。
「やぁ」
と言って。古い友人のように。
部屋を心地よい明るさにして、また去っていきます。

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気がついたら夕方。
夕方も素敵です。

窓が大きいため、部屋の中は外の色にとても影響されます。外が夕焼けになるとオレンジ色になることもありますし、日が沈んだあとはブルーになることもあります。夜になると、部屋の明かりをつけて今度は暗い窓と過ごします。

窓。
人以外の出入り口。

窓を閉めると、私だけの空間になりますし、窓を開けると楽しいお客さんが訪れます。
鳥の声が聞こえた、と思ってこっそり窓から外を見ても、どこにも鳥の姿がないのは不思議なことです。でも、そのかわいらしい声を聞かせてくれて、ありがとう、と思います。

またいつでも遊びに来てね。
お日さまや風や鳥たちに言います。
この日当たりの良い古い家は、ドアノッカーを使えないお客さんでもいつでも大歓迎です。


今回も最後まで読んでくださって、ありがとうございました。

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