059 お料理なかまたち
涼しくなると、どうしてこうお料理が楽しくなるのでしょう。
夏場は暑くて、冷麺ばかり作っていた私ですが、気温が下がると食欲回復、お料理熱もあがります。
私は基本的に簡単なお料理しかしないので、持っている料理道具も少ない方だと思います。それも一人暮らしを始めたころから使っているものばかりなので、気心知れた旧友のようです。そういった同じ道具をずっと使っていると、だんだん道具ごとにキャラクターがあるような気がしてきます。
たとえば両手鍋。
私が持っている両手鍋は、土鍋らしいのですが土鍋に見えないデザインです。
この子はどっしりとしていて力もち。どんな頑なな野菜も時間をかけてほろほろにしてくれます。こげにくい、頼れるリーダー的存在です。
また、フライパン。
この子は働き者で、しっかり者です。あわてんぼうなので、ときどき焦がしてしまうのがたまにキズです。
あるいは、おたま。
のんびり屋さんな(たぶん)女の子。この子は自立できないので、専用のおたま置きもあります。
高価なもの、有名なメーカーのものを持っているわけではないのですが、どの子も素直で扱いやすい、大切なお料理仲間です。
現役で使えるうちは、大切に楽しくおいしいものを一緒に作れたらいいな、と思います。
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小学生のころ、お風呂から上がって階段を降りる最中、たまにいちごジャムのにおいがしていました。母はよく夜にいちごを煮ていました。
こっそり台所をのぞくとやっぱり。
母が鍋に火をかけているうしろ姿が見えます。
私が「ジャム作っているの」と声をかけると、母はこちらを向いてにこっといたずらっぽく笑うのでした。
そういった夜は特別で、母は「内緒よ」と言って、できたてのジャムをクラッカーにのせて私に食べさせてくれました。
その時のこってりとした甘味。いちごの形がごろごろと残った食感。
ほかの兄弟にばれないように、なるべく音を立てずに食べる夜中のジャムのせクラッカーは、しあわせなごちそうでした。
母はいちごのジャムを作るときに必ず水色の琺瑯の鍋を使っていました。
いちごの赤と鍋のつるりとした水色がとてもかわいくて、煮ているところを見るのも夜の楽しみでした。
今、母はカーキ色のお鍋を使っているようです。
「このお鍋でも、たくさんのジャムを煮るわよ」
と母ははりきっています。
でも、やっぱりいちごは水色のお鍋が似合うね、と私が言うと、母にこう言われました。
「それならママレードはどう?なんだか合いそうじゃない」
たしかに。
しばらくはママレードが定番になりそうです。
今回も最後まで読んでくださって、ありがとうございました。
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きょうのイラスト
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