183 まだ冬がそこにいるうちに
立春を過ぎたからといって、すぐに温暖な気候になるはずもなく、痛むような冷たい空気にさらされながら、そこかしこに漂う春の粒を見つける日々である。
春の粒とは、視覚的なものというよりも感覚的なもののことだ。数日前より日が長くなっているとか、蝋梅が馥郁たる香りを放っているとか、水道水が若干やわらかいとか。
冬色の日に春がにじんだ瞬間を見つけると、心にあかりが灯る。
2021年は仕事に追われてしまい、その忙しさに文字通り目が回った。
私は添削や書き物といった活字まみれの仕事をし